家族滞在ビザから就労ビザに変更する方法と要件について
家族滞在ビザの外国人は「1週間で28時間以内」でしか働くことができませんが、会社としては、週28時間以上働いてほしい思うこともあるかと思います。
そんな時は就労ビザに変更しないといけません。
ただし就労ビザは、簡単に取得できるものではなく、「外国人の学歴」や「職務内容」など、家族滞在ビザで働いてもらっていた時とは違う要件があります。
今回は、そんな家族滞在ビザの外国人が就労ビザに変更する方法と要件について解説していきます。
目次
就労ビザとは?
就労ビザと言っても、日本には19種類の就労ビザがあります。
その中で私たちが就労ビザと言って、一般的に指しているものは、「技術・人文知識・国際業務」という名前の就労ビザになります。
技術・人文知識・国際業務とはどんな就労ビザ?
技術・人文知識・国際業務とは、「理学・工学・経済学・社会科学などの分野に関する技術や知識」、または「外国人ならではの思考・感受性を必要とする業務」をするための就労ビザになります。
少しわかりづらいので、わかりやすく記載すると下記になります。
技術・人文知識・国際業務の仕事内容イメージ
- 技術:エンジニア
- 人文知識:営業や経理、マーケティング、コンサルティングなど
- 国際業務:語学教師・海外取引業務、広報宣伝、デザイナーなど
いわゆる「事務系の仕事」(ホワイトカラーの仕事)の仕事が、技術・人文知識・国際業務に該当します。
家族滞在ビザから就労ビザに変更するための要件とは?
就労ビザにビザを変更するためには、いくつか要件があります。
※ここでいう就労ビザとは、技術・人文知識・国際業務のことを指しています。
就労ビザに変更するための要件
- 外国人の学歴
- 実際に行う業務内容
- 給与額
- 会社の業績(経営状態)
外国人の学歴
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)では、外国人の学歴が必要となります。
求められている学歴
- 大学卒業(学士の称号があること)
- 短期大学卒業(短期大学士の称号があること)
- 大学院卒業(修士の称号があること)
- 大学院博士科卒業(博士の称号があること)
- 日本の専門学校卒業(専門士の称号があること)
簡潔に言うと、「大学を出ていて学士の称号を持っていること」が必要です。
さらに「日本の専門学校卒業で専門士の称号」を持っている場合も認められています。
専門学校の場合は、「海外の専門学校ではダメ」で日本の専門学校のみ認められますのでご注意ください。
その他、日本語学校も学歴としては認められていません。
学歴がない場合は、実務経験でも可能な場合がある
学歴がない場合は、実務経験を証明することで就労ビザが取得できる場合があります。
必要な実務経験年数
- 一般的には日本で行う業務と同じ業務、10年以上
- 国際業務(翻訳通訳・海外取引業務など)は3年以上
実務経験は「在職証明書で証明」します。
在職証明書では、過去働いていた会社で、外国人が日本で同じ業務を行っていたことを証明してもらいます。
また実務経験は、「正社員や契約社員といったフルタイムワーカーでないと実務経験としては認められない」ので、パートタイマーでの就労では実務経験年数のカウントには入れることができません。
実際に行う業務内容
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)では、「外国人が行う仕事内容についても制限」があります。
原則、就労ビザでは「大学等で学んだことと関連性がある仕事内容」でないといけません。
ただし、いくら関連性があっても、「現場で行う仕事の場合は技術・人文知識・国際業務の就労ビザでは認められません。」
技術・人文知識・国際業務では、事務系の仕事(ホワイトワーカー)の仕事のみ該当性があるとされています。
大卒と専門卒で審査の厳しさが異なる
大学卒業以上(短大を含む)の場合には、「大学」で学んだことと日本で行う「仕事内容の関連性は比較的ゆるやかに審査」されます。
そのため、多少専攻科目と違う仕事内容であっても許可される場合が多いです。
一方、専門学校卒業の場合は、「専門学校」で学んだ科目と日本で実際に行う「仕事内容の関連性は厳しく審査」されます。
そのため日本の専門学校卒業の場合には、専門学校から成績証明書を取得し、実際にどのような科目を履修したのか確認して、日本で行ってもらう仕事内容との関連性を示す必要があります。
給与額
給与額も審査対象となっています。
就労ビザの場合、「外国人であることを理由に給与を下げてはいけない」というルールがあり、同ポジションの「日本人を雇用する場合と同等以上の給与水準」である必要があります。
注意点としては、過去にネット求人を出したことがある場合です。
過去の求人がネットに残っており、明らかに同ポジションでの求人だが、今回の外国人よりも給与額が高いと、給与面で不許可になってしまう可能性があります。
何か理由があって給与額が違う場合には、その理由も別途理由書を作成して入管に説明するようにしてください。
会社の業績(経営状態)
会社の経営状態も審査対象になります。
最も注意が必要なのが、「債務超過になっている場合」です。
債務超過の場合には、入管に対し今後の事業計画や債務超過になってしまっている理由を説明する必要があります。
入管としては、「債務超過なのに本当に外国人社員に給与を支払えるのか?」と疑いの目をむけられてしまいます。
万が一、給与未払いになってしまうと、外国人が露頭に迷ってしまうことになるので、給与が問題なく支払え、今後どのように利益を確保できていけるかを説明する必要があります。
現場で働いてもらいたい場合の就労ビザとは?
ここまで技術・人文知識・国際業務の就労ビザの説明をしてきました。
技術・人文知識・国際業務では、事務系の仕事(ホワイトワーカー)であることが必要とお伝えしてきましたが、現場労働で働いてほしい場合もあるかと思います。
そこで、「現場労働も可能な就労ビザ」をいくつか紹介していきます。
現場労働が可能な就労ビザ
- 技能(コックさんなど)
- 特定技能(介護・飲食店・ホテル・建設など)
- 特定活動46号(コンビニ)
技能(コックさん)
技能ビザは、コックさんで取得することが多いですが、その他にも下記が該当します。
技能ビザの種類
- コックさん
- 建築技術者(外国建築特有のものに限る)
- 外国工芸品の製造・修理技師
- 貴金属・毛皮の加工技師
- 動物調教師
- 掘削技術者
- パイロット
- スポーツ指導者等
- ワインのソムリエ
今回は、最も技能ビザで需要が多いコックさんについてご説明していきます。
技能ビザの場合は、「外国人の学歴は不要ですが、必ず実務経験が必要」になります。
「コックさんは外国料理の専門店で10年以上の実務経験が必要」になります。
※タイ料理のみ5年の実務経験で可
実務経験は、海外でコックさんとして働いていた会社から在職証明書を取得して証明します。
特定技能(介護・飲食店・ホテル・建設など)
特定技能ビザは2019年4月に新設されたビザ(在留資格)で、「人材不足が深刻な14業種に限り」現場労働を認める就労ビザになります。
対象となる14業種(特定技能)
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電機・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
これらの業種であれば、どのような仕事でもできるわけではなく、可能な作業も限定されています。
また特定技能ビザでも、学歴は不要になりますが、日本語試験(日本語能力試験N4相当以上)と技能試験(各業種によって試験あり)に合格する必要があります。
試験は不定期で行っているので、「特定技能 試験 〇〇(希望の業種)」で検索して調べてみてください。
特定活動46号(コンビニ)
コンビニで接客させたい場合には、2022年時点では「特定活動46号」のみ可能となります。
以前は、スーパーバイザーで店舗管理という立ち位置であればコンビニでの就労ビザもとれていましたが、現在は取れません。
そして新しく特定活動46号が新設され、「日本の4年生大学(または大学院)を卒業し(学士の称号があること)、日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上(大学等で日本語専攻の場合は免除)の外国人」であれば、特定活動46号を取得し、コンビニでの就労が可能となります。
なお特定活動46号は、海外の大学は対象外となるのでご注意ください。
コンビニでの外国人の就労ビザも、記事作成時点では、特定活動46号以外では働くことはできません。