永住権に必要な年収はいくらか?ケース別に解説!
目次
永住権を取得するには年収要件がある
永住権の審査には、年収要件があります。
永住権の年収の金額は公表されていなく、色んなサイトで目安は年収300万円以上で、扶養家族1人につき+70万円~80万円必要という記載があります。
年収300万円と言うのは間違ってはいないのですが、外国人の状況によって必要とされる年収は変わってきます。
永住権の年収要件は、外国人の状況によって変わる
- 住んでいる地域
- 同居家族と扶養家族の人数
- 日本人配偶者がいるかどうか
- 母国にいる家族を扶養に入れている場合
まず永住権の年収を考える上では、上記3つの項目に注目してください。
上記の他にも様々な状況はありますが、一般的な内容を解説させて頂きます。
住んでいる地域
ネット記事では主に東京基準で記載していることが多く、住んでいる場所が地方であれば、東京とは給与水準が変わってきます。
永住権の審査では、住んでいる地域の生活水準が審査上考慮されます。
この水準は、入管では「総務省統計局の平均世帯年収」を参考にしていますので、チェックしてみると住んでいる世帯の基準がわかります。
同居家族と扶養家族の人数
永住権の年収要件は、安定した収入があるかどうかという点が審査上大切になります。
この安定した収入は、「独身」「夫婦2人家族」「子どもを含めて4人家族」なのかで、実際に必要になる年収額は変わってきます。
現実的に家族が増えれば生活費は多くなりますので、永住権の申請においての必要年収も上がってきます。
具体的には、1人扶養するごとに+70万円必要というネット記事が多いですが、これは総務省統計局の平均世帯年数をもとにして計算されている額になります。
では子どもを産めば永住権が取りづらくなるのかと言うとそうではなく、確かに必要となる収入は上がりますが、日本に永住しなければいけない理由がしっかりあれば、永住権の許可を取れる可能性はあります。
(理由に関しての詳細は後述)
日本人配偶者がいるかどうか
日本人と結婚していたり、日本人との間に子ども(実子)がいると、日本への永住理由が強くなるため、永住権取得には有利になります。
一般の外国人であれば、過去5年間の年収が審査対象ですが、日本人の配偶者では過去3年分(または1年分)と優遇されます。
年収要件は、この審査対象の期間すべてにおいて年収がクリアされていることが必要なので、1年でも年収が低かった年があると安定していないと判断され不許可になってしまいます。
母国にいる家族を扶養に入れている場合
日本の法律上は、海外にいる家族も扶養に入れることができます。
扶養に入れた場合は、継続して生活費を海外に住んでいる家族に送金していることが必要になります。
扶養に入れられる海外に住んでいる家族
- 両親
- 子ども
- 配偶者
- 6親等以内の血族(一定の要件あり)
- 3親等以内の姻族(一定の要件あり)
扶養している家族に生活費を送金している場合は、目安として扶養者1人につきプラス70万円が必要年収となってきます。
仮に扶養に入れているが送金はしていない場合は、脱法行為(違法行為)となるため、永住権も不許可になってしまいます。
海外に住んでいる家族を扶養しているが、送金していない場合の対処法
海外に住む家族を扶養に入れているが、送金をしていなく、これからもする予定がない場合は、最寄りの税務署で修正申告をする必要があります。
永住権の申請は、税務署で手続き後、就労ビザの方は5年間、日本人の配偶者の方は3年間経過して、住民税をしっかり支払った後でないと永住権の審査は不許可になってしまいます。
在留資格別の年収基準
永住権の年収要件は、持っている在留資格(ビザ)によって変わってきます。
ご自身の今の在留資格(ビザ)の年収基準をご確認ください。
就労ビザ(独身)の場合
就労ビザで働いている外国人(独身)の目安年収は300万円です。
300万円はあくまでも目安なので、住んでいる地域や持ち家で家賃がかからないなど状況によっては300万円以下の年収であっても取得の可能性はありますが、年収300万円以上あると許可率は上がります。
就労ビザ+家族滞在の場合
就労ビザの夫(妻)と、アルバイトをしている妻(夫)といったケースでは、妻のアルバイト代は永住権の収入要件に加算することはできません。
(例:夫300万円・妻50万円)
なぜかと言うと、妻のアルバイトはシフトにどの程度入るかで収入額が変わってくることから安定した収入と言えないことと、家族滞在ビザは就労するためのビザではないという観点から合算は不可とされています。
この場合は夫の収入のみで判断され、家族滞在ビザの場合は旦那の扶養に入っている必要があるため、年収要件も300万円だけでは足りず、一般的な基準である扶養家族1人あたり+70万円で考えると、370万円以上必要となります。
上記のケースでは夫の300万円の評価のみとなるため、永住権の許可は難しくなります。
就労ビザ+就労ビザの場合
外国人夫婦がどちらも就労ビザで働いている場合は、お互いに就労できるビザなので収入の合算ができます。
例えば、夫280万円・妻250万円の収入だとすると、一般的な目安は300万円の年収とお伝えしてきましたが、この場合は世帯年収として530万円あるため許可になる可能性が高くなります。
上記の家族滞在ビザの場合は、アルバイト代を収入として見てはくれませんが、就労ビザの場合は世帯年収として見てくれます。
配偶者ビザの場合
配偶者ビザの場合は、就労ビザの外国人に比べると永住権が取得しやすいです。
夫(日本人)が働いており、妻(外国人)が主婦の場合で、夫の年収が300万円だとしても住んでいる地域や家賃額など総合的に見て安定した生活が送れると判断できると許可になります。
また仮に妻がアルバイトとして働いている場合は、その金額も考慮できます。
上記の家族滞在ビザの場合は、アルバイトは年収に含めることはできませんでしたが、配偶者ビザの場合は、合算が可能となっています。
また夫が外国人で、海外で収入があり日本国内では収入がないと言った場合でも、海外での給与証明が出せれば永住権の取得は十分に可能となっております。
ケース別の年収基準
許可になった事例
- 在留資格(ビザ):技術・人文知識・国際業務
- 居住期間:10年
- 居住地:東京
- 結婚の有無:独身(扶養家族0人)
- 収入: 1年目260万円→2年目200万円→3年目310万円→4年目410万円→5年目330万円(コロナで減収)
このケースでは、留学生から社会人になった1年目は4月より正社員として勤務しているので、年収が260万円でも説明することで理解してもらい、その後体調を崩して入院し手術した結果2年目の年収が大きく下がってしまいました。
通常であれば、年収が少ないということで不許可になってしまいますが、手術した証拠やその間仕事を医師より制限されていたなど、客観的に正当な理由があり、その後仕事に復帰して収入が上がっていことをアピールしました。
5年目には新型コロナウイルスの影響で再度年収は減少しましたが、基準とされている300万円はキープできていることから、総合的に判断していただき、許可となった事例です。
入管では、今回の新型コロナウイルスのような世界的パンデミックな状況になり減収となっても、安定した収入が確保できるかも審査上考慮しており、年収が少なかった部分に関しても正当な理由(今回は手術)を示し、その後の成長性も考慮して頂いた結果となります。
不許可になった事例
- 在留資格(ビザ):技術・人文知識・国際業務
- 居住期間:10年
- 居住地:東京
- 結婚の有無:独身(扶養家族0人)
- 収入: 1年目350万円→2年目320万円→3年目286万円→4年目340万円→5年目320万円
このケースでは、3年目の286万円の年収が引っかかり不許可となりました。
独身で扶養家族はいなかったのですが、3年目以外は年収300万円以上はクリアできており、3年目もあと14万円で300万円という数字ではありますが、安定した収入をクリアできていないということで不許可になりました。
この事例からみると、東京での基準となる年収は300万円ということと、4年目以降は年収300万円以上あるものの、年収が大きく増えているわけではないので、その点において3年目の286万円という年収をカバーできるものではありませんでした。
この場合には、過去5年分の年収証明から286万円が消えるまであと3年ほど待ってから再申請するしかなくなってしまいます。
求められる年収の期間は?
ここまで年収の基準をご説明してきましたが、年収は何年間、証明すればよいのでしょうか?
永住権の年収は何年間の証明が必要か?
- 一般的な外国人:過去5年分
- 日本人の配偶者の外国人:過去3年分(状況によって1年分の場合もある)
日本人の配偶者の場合は永住者の配偶者も含まれ、結婚してすぐに日本で生活し始めた場合は3年、結婚後は海外で暮らしており、結婚生活が3年以上ある場合は1年の証明で大丈夫です。
永住権の年収要件は、上記の期間すべてにおいて基準年収がクリアされている必要があるので、仮にこの期間内の1年間のみクリアできていなくても不許可になってしまいます。
ですので、永住権がとれるまでは安定した収入を意識していただき、転職なども大幅な年収アップなど以外は控えた方がよいかと思います。
年収の証明は、住民税の課税証明書で行う
年収の証明書は、役所で発行している「住民税の課税証明書」「住民税の納税証明書」で判断します。
この住民税の課税証明書と納税証明書は、毎年5月中旬~6月上旬に新しいものが発行され、年収は昨年の1年間のものが記載されています。
(例;令和2年度の住民税の課税証明書の場合は、令和元年度の年収が記載されます)
ですので、永住権の申請するタイミングでは(特に1月~5月)は、最新の年収の証明を取るのに6月まで待たないといけないので、過去5年分の収入と言っても実質的に一番新しい住民税の課税証明書の記載の年収は、約2年前のものになってしまいます。
(令和3年1月に申請の場合、取得できる最新の住民税の課税証明書は令和2年度のものであり、令和2年度に記載の年収は令和元年度の年収になります)
また最新の源泉徴収票を提出するというのも方法としてはありますが、源泉徴収票は最終確定の収入額ではないので、永住権の審査ではあくまでも参考資料としてにとどまってしまいます。
永住権の申請理由も大切
永住権を取得するためには、申請理由も大切になってきます。
永住権はその名の通り、日本に永住できる権利であり、簡単には許可になりません。
永住権を申請する人は、今何らかの在留資格(ビザ)を持っているので、入管としてはそのビザを更新していくことで日本にはずっといられるわけなので、永住権がなくてもよいという考えをします。
とはいえ、更新手続きを繰り返していくのは精神的にも影響がありますし、永住権がないと家のローンが組みづらいなど様々な弊害がでてきます。
ではどういった理由があれば永住権が取りやすくなるのでしょうか。
永住権の申請理由の具体例
- 日本人と結婚し実子がおり、今後実子を日本で育てていく必要がある
- 日本に長年住んでおり、母国では親戚もすでに亡くなっており、生活の基盤が日本になっている
- 仕事で大きなプロジェクトを任されており、今後も継続して日本で活動する必要があり、永住して仕事を行うことで企業に大きな利益をもたらせる
上記はあくまで一例ですが、永住権を取得する理由は人それぞれ違い、入管にアピールするポイントも変わってきます。
まずはなぜ永住権をしたいのかまとめ、書類として提出できるものがあれば任意書類として提出すると許可の可能性は上がっていきます。