永住申請の出国期間と出国が多い場合の対処法について

日本の永住申請をするためには多くの要件がありますが、その1つとして「引き続き10年以上、日本に住んでいること」という条件があります。(ビザの種類によっては例外あり)
この10年の計算方法については、在留カードを取得してから日本に住んでいる期間を計算することになりますが、日本から出国していた期間が長いと10年のカウントが途切れてしまいます。
これは入管法上、日本に10年以上住んでいることの中には「引き続き」という文言があり、住民票が日本にあり日本に住んでいるだけでは足りず、日本からの出国が少ないことが条件となっています。
そこで今回は、この永住申請において出国が認められている期間についての説明と、出国が多い場合の対処法についてご説明していきたいと思います。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
永住申請で必要な居住年数は?
永住申請では、「居住要件」「生計要件」「素行要件」「納税状況」など様々な視点からの審査があります。
その中の居住要件では、「引き続き10年以上、日本に居住していること」という条件があります。
※配偶者ビザや高度専門職ビザでは、3年や1年以上まで短縮されます。
10年後に永住申請をしようとしても、実は居住要件に計算方法ではカウントできていなかったということが起きないように意識して生活をする必要があります。
ポイントは「引き続き10年」である
永住申請では、引き続き10年以上日本に住んでいる必要があり、日本に住民票があればいいわけではなく、「日本からの出国日数」によっては、10年にカウントされない場合があります。
一度居住カウントが途切れてしまうと、日本に帰国した日から再度、10年間のカウントをし直しになってしまいます。
また日本からの出国では、出張や家族のトラブルなど様々な理由で出国されると思いますが、基本的には、これらの理由であったとしても、日本の永住申請の場合には、引き続き10年のカウントをしてもらうことは難しいです。
よくある長期出国の理由
- 仕事での出張
- 出産などでの帰国
- 家族のお見舞い等での帰国
10年より短い期間で永住申請できる例外について
永住申請には10年間、日本に住んでいないと永住ビザのための居住要件が認められないとご説明しましたが、ビザの種類によっては、5年・3年または1年間、日本に住んでいれば永住申請できる人もいます。
10年住んでいなくても永住申請できる人
- 日本人の配偶者(3年または1年後)
- 永住者の配偶者(3年または1年後)
- 定住者(5年後)
- 高度専門職ビザを持っている外国人(3年または1年後)
この記事では、永住申請における出国日数について説明する記事になるので、上記のビザの説明は省略しますが、これらのビザの方で居住要件が短くなっても、出国日数の考え方は一緒になります。
それぞれのビザから永住ビザを申請する要件を知りたい場合は、下記から確認いただけます。
「日本人の配偶者」から永住ビザを申請する場合
「永住者の配偶者」から永住ビザを申請する場合
「定住者ビザ」から永住ビザを申請する場合
「高度専門職ビザ」から永住ビザを申請する場合
日本から出国できる日数は?
では実際にどのくらいの期間であれば、日本から出国しても永住申請で影響がでないのでしょうか?
基準としては2つあり、下記の出国をしてしまうと、日本に引き続き住んでいるとは判断されなくなってしまいます。
永住申請で認められない出国日数
- 3ヶ月以上連続した出国
- 1年間の合計で120日以上の出国
3ヶ月以上連続した出国
「3ヶ月以上連続した出国」した場合は、出国理由が出張だとしても、日本にずっと住んでいるとはカウントはできないというのが永住申請の考え方です。
就労ビザや配偶者ビザなどの更新申請の場合は、出国が多くても理由があればビザ更新ができますが、永住申請の場合には「引き続き10年」以上日本に住んでいることという条件があり、3ヶ月以上連続した出国は、引き続き住んでいるとは認めてもらうことができません。
そのため、例えば日本に住んで9年経っていても、永住権の取得前に3ヶ月以上連続して日本から出国してしまうと、今までの9年間の居住年数カウントが消滅してしまい、日本に帰国後から引き続き10年住まないと永住権の許可はもらえなくなってしまいます。
なお、永住審査中も出国期間は審査されているので、永住許可が出るまでは出国日数に気を付ける必要があります。
1年間の合計で120日以上の出国
1年間の合計で120日以上(約4ヶ月)出国している場合にも、引き続き日本に住んでいるとは認めてもらえない可能性が高いです。
ちなみに、合計120日という日数は、明確にガイドラインに定められているわけではないですが、令和4年(2022年)時点でのビザプロの実績では120日以内は問題なく許可がおりているため、安全ラインとして120日を基準としています。
ただし、年々永住申請は厳しくなってきており、過去には150日や180日まで大丈夫という時代もありましたが、今はかなり厳しくなってきており、今後より厳しくなり可能性はあり、そうなったことも考慮すると、合計100日以内にしておくと安心できるかと思います。
1年間の計算方法について
1年間の計算方法ですが、1月1日~12月31日ではなく、「いつを基準にしても1年間」となります。
例えば、4月1日を基準にするのであれば、翌年の3月31日までが1年間の基準日となり、8月10日を基準にするのであれば、翌年の7月9日までが1年間の基準日となりますので、ご注意ください。
出国日数が多い場合の対処法は?
10年以上は日本に住んでいるが、出国日数が多く「引き続き10年」に該当しない場合はどうしたらいいのでしょうか?
永住申請は年々審査が厳しくなっているので、申請時の状況によって変わってきますが、上記で説明した出国要件以上日本から長期出国してしまった場合は、その理由について明確に説明することで、永住申請が認められる場合もあります。
ただし、すべてのケースで認められるわけではなく、「どうしても出国しないと行けなかった理由」「帰国できなかった理由」「出国要件以上の出国が1回など少ない場合」など、特別な理由として認められる場合に限ります。
基本的には永住権というのは、名前の通り日本に永住するためのビザなので、今まで日本で暮らしており、これからも日本にずっと暮らす予定ということが前提で許可となるので、日本からの出国が多いと、永住権ではなく就労ビザなどのビザでいいのではないか?という判断になってしまう可能性が高くなります。
新型コロナウイルスで帰国できなかった場合は?
2020年3月から、新型コロナウイルスの影響で日本への入出国が制限されていて、帰国したくても帰国できない方も多くなり、1年以上日本に帰国できない方が多くなってしまいました。
新型コロナウイルスが原因で日本に帰国できなかった場合には、その旨を証明する書類とともに理由書にて説明することで、永住申請が認められることがあります。
ただし、入国制限が解除されているにも関わらず、正当な理由なく帰国していなかった場合などは、新型コロナウイルスを原因として帰国できなかったとは認められません。
入国制限が解除されてはいたが、航空券の高騰で帰国できなかった場合には、当時の航空券がいくらだったのかを証明することで、正当な理由として認められることがあります。
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