高度専門職ビザ(高度人材)から永住申請する場合の要件と注意点は?

高度専門職ビザ(高度人材)を持っている外国人は、永住申請の居住要件が大幅に短縮されています。
高度専門職ビザの居住要件は、ポイント計算表で70ポイント以上あれば3年居住、80ポイント以上ある場合は1年居住となっています。
また、今のビザが高度専門職ビザでなくても3年前(または1年前)から高度専門職ビザのポイントに該当していたことを証明できれば、永住申請をすることが可能です。
高度専門職ビザに該当すると、本来であれば10年以上日本に住んでいないと申請できない永住申請が3年または1年後にできるようになるので、魅力がありますが、高度専門職ビザから永住申請する際には注意点も多くあります。
そこで今回は、高度専門職ビザの外国人が永住申請をするための要件と、注意点・審査期間などついて説明していきます。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
高度専門職ビザ(高度人材)とは?
高度専門職ビザとは、高度人材とも言われ、「高度な専門的な能力があり、日本経済に大きく貢献できることが見込まれる外国人」が取得できる就労ビザのことを言います。
高度専門職ビザは、他の就労ビザと違い、勤務する企業ごとに申請をして取得するものになるので、転職をした場合には、在留期限が残っていても申請をやり直す必要があります。
高度専門職ビザの主な特徴
- 在留期間が5年になる
- 永住申請の居住要件が短縮される
- 転職したら、都度申請が必要
- 審査を優先的に行ってもらえる
- 親が呼べる(条件あり)
高度専門職ビザはどうやったら取れるのか?
高度専門職ビザを取得するためには、「高度専門職ポイント計算表で70ポイント以上」しないといけません。
高度専門職ビザは、国や入管があなたのポイントを調べてくれてもらえるビザではなく、「自分で高度専門職に該当します」と申請をしないともらうことはできません。
高度専門職ポイント計算表はこちら(日本語版)
Point Calculation Table(English Version )
高度専門職ビザの種類は?
高度専門職ビザは、高度専門職1号と2号に分かれていますが、いきなり2号は取得できないので、まずは1号を取得します。
そして高度専門職1号も「イ・ロ・ハ」の3種類に分かれており、行う業務内容に応じてイ・ロ・ハのどれを申請するかが変わってきます。
最も多い申請は、日本の一般的な就労ビザと言われる「技術・人文知識・国際業務」が該当する高度専門職1号ロになります。
その他、大学教授や高校の教師などは「1号イ」、日本で会社経営する場合は「1号ハ」となります。
高度専門職ビザの対象となるビザ(在留資格)
- 高度専門職1号イ
・教授
・研究
・教育 - 高度専門職1号ロ
・法律会計
・医療
・技術・人文知識・国際業務
・業内転勤
・技能 - 高度専門職1号ハ
・経営管理
高度専門職ビザから永住申請をする要件は?
高度専門職ビザから永住申請をする要件は、基本的には他のビザ(在留資格)から永住申請する場合と変わりはありません。
高度専門職ビザが優遇されているのは、居住要件のみで3年(または1年)で居住要件がクリアになりますが、年収や出国・納税義務・素行要件などの他の要件で優遇措置はありません。
高度専門職から永住申請するための要件
- 高度専門職ビザのポイントに該当して3年または1年以上日本に引き続き住んでいること
- 3年または5年のビザを取得していること
- 安定した収入が確保できていること
- 納税義務を履行していること
- 社会保険の支払いをしていること
- 素行が良好なこと
日本に3年または1年以上引き続き住んでいること
高度専門職ビザから永住申請する場合、高度専門職ポイントが70ポイント以上で3年以上、80ポイント以上で1年以上の居住で永住申請ができるというメリットだけ知っているという人も多いと思います。
ただし正確に言うと、日本に3年または1年間、日本に住所があればいいわけではなく、日本から出国をどのくらいしているのかに関しても審査されます。
具体的には、1回の出国で3か月間以上の出国がある場合は、その時点で日本に住んでいた年数がリセットされてしまいます。
さらに1年間で、合計120日以上出国がある場合も同様に、今まで日本に住んでいた年数がリセットされてしまう可能性があります。
1年間合計で120日以上というのはあくまでも目安になりますが、年々厳しくなってきているので、日本からの出国には注意が必要です。
納税義務の審査も厳しくなっている
納税義務の審査では、日本国内において税金の未納や遅延がないか審査しています。
未納がある場合は、支払っていただくことは当然必要になり、未納だった期間によっては永住申請をすぐにしても審査に引っかかってしまう可能性があります。
納税義務の審査は、税金を納期通りに支払っているかを審査しているため、期限通りに支払っていない場合も審査で引っかかる可能性があります。
また税金のほかに、社会保険の支払いも厳しく審査されるようになりました。
社会保険の支払いも税金と同様に、支払っているだけではなく、遅延なく支払っているかが審査されます。
高度専門職ポイントの計算方法は?
高度専門職ビザのポイント計算は、該当する内容の証明書類を提出する必要がありますが、特にポイントが取得しやすい項目において、注意点もいくつかあります。
なお、該当している項目があっても証明書の準備ができない場合には、ポイントとして認めてもらうことはできなくなってしまいます。
それでは、具体的に主にポイントが取得しやすい項目について、注意点などを見ていきましょう。
高度専門職ポイント計算表はこちら(日本語版)
Point Calculation Table(English Version )
高度専門職のポイント分類
- 学歴
- 職歴(実務経験)
- 年収
- 年齢
- 研究実績(論文の有無など)
- 勤務先の先進性
- 日本語能力
- 国家資格の有無
勤務先の先進性(イノベーション)についてはこちら(1)
勤務先の先進性(先端的事業)についてはこちら(2)
世界大学ランキングに基づき加点対象となる大学の詳細はこちら
日本語能力の一覧はこちら
国家資格の内容についてはこちら
この中で、特に注意が必要なのは、「職歴(実務経験)」と「年収」です。
職歴(実務経験)でポイントを取得する場合の考え方
職歴(実務経験)は今まで仕事をしてきた年数(社会人年数)ではなく、「今日本で行う仕事と同じ実務経験は何年あるか」という視点で計算します。
さらに、計算できる職歴は正社員や契約社員として働いていた経験のみ加算が可能で、パート・アルバイトについては、職歴年数には含めることはできません。
実務経験として含められるもの
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員
- 会社経営(経営管理のビザの場合のみ)
- 個人事業主(証明できる書類がある場合のみ)
会社経営を実務経験として計算できる?
職歴に会社経営していた経験を加えることは可能ですが、会社経営の場合は、経営または管理の実務経験となるので、高度専門職1号ハ(経営管理ビザ)の申請の際にのみ実務経験に含めることができます。
高度専門職1号イまたはロで高度専門職ビザを申請しようとする際には、会社経営の実務経験に含めることはできません。
個人事業主の証明について
個人事業主としての経験も職歴の経験年数に含めることはできますが、個人事業主として働いていたという証明をすることはかなり難しいです。
日本だと、個人事業主としての「開業届」と「毎年の確定申告の書類」などがありますが、海外の場合は個人事業主の証明書がないところが多いです。
国によっては個人事業主の証明書もあるところもあるようですが、何かしらの証明書がない場合は個人事業主の実務経験を含まることはできなくなってしまいます。
年収でポイントを取得する場合の考え方
年収は「過去の実績」と「確定している今期の年収予定」でポイントの対象かどうか判断します。
年収に含めることができるもの
- 基本給
- 固定残業代
- 賞与(決まっているものだけ)
なお、年収に含められる内容は決まっており、基本給以外には、固定残業代と確定している賞与が年収として計算できます。
固定残業代以外の「残業代」は、どの程度残業するのか確定事項でないため、年収に含めることはできません。
「賞与」に関しても、業績に応じて支給ということであれば含めることはできず、会社から賞与も含めた今期の年収証明書を発行してもらえれば、収入として認めてもらうことができます。
ですが、会社から年収証明書を発行してもらえない場合は、未確定の賞与は収入の対象外となることが多いです。
永住申請の審査中に転職は大丈夫?
永住申請の審査では、基本的に転職はマイナス評価になることが多いです。
そのため、転職してすぐの永住申請や、永住申請中に転職することはおすすめしません。
しかし、例えば年収100万円ほどの転職であれば、キャリアアップとして評価してくれる可能性もあるため、一概にすべての転職がマイナス評価というわけではありません。
これが「年収20万円あがる」「年収は同じ」「年収が下がる」などの場合には、審査でネガティブに評価されてしまいます。
では永住申請中の転職は、どういった点に注意が必要なのでしょうか。
永住申請後に転職をした場合の注意点
- 永住申請後に転職した場合は、「転職後」のポイントで審査される
- 収入に安定性・継続性があるか
永住申請の審査期間はどのくらい?
高度専門職ビザからの永住申請だとしても、審査期間の優遇措置はありません。
東京の場合ですと、毎年審査期間が長くなってきており、2024年時点だと約1年3か月ほどかかっています。
1~2年前までは6ヶ月程度で審査が完了していましたが、近年は申請件数の増加と審査官不足により審査期間がかなり長くなっています。
ちなみに地方の場合だと、6か月程度で審査結果が出る場合もありますが、入管の込み具合によって審査期間は変わってきます。
また永住権申請の場合は、よく追加資料を求められることがあります。
追加資料を求められると、追加資料を提出するまでの間は審査が止まってしまうので、なるべく早めに審査を再開してもらうために早めに追加提出したほうがいいですが、入管の意図している書類を提出することも大切となってきます。
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