特定技能から就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)に変更する条件と事例
特定技能ビザで働いている外国人が、一般的な就労ビザである技術・人文知識・国際業務ビザに変更することは可能です。
ただし、一般的な就労ビザの技術・人文知識・国際業務ビザには、学歴や外国人ができる仕事内容に制限があります。
そこで今回は、特定技能ビザで働く外国人の方が、技術・人文知識・国際業務ビザに変更する条件と事例についてもご紹介していきます。
目次
特定技能ビザと技術・人文知識・国際業務ビザは何が違う?
特定技能ビザは、2019年4月からスタートした新しい就労ビザで、「人材不足が深刻な業界に限り、技能試験などに合格すれば現場労働も可能」となっています。
そして特定技能ビザは、特定技能ビザの外国人に不利益が起きないように第三者視点での管理が必要となっており、中小企業のほとんどでは、外部の登録支援機関にこの管理を依頼することになります。
そのため、会社負担での管理費が毎月2~3万円ほどかかり、3ヶ月に1回の面談と入管への報告義務があったり、何かと制限がある就労となっています。
技術・人文知識・国際業務ビザとは?
日本で就労ビザと言うと、一般的に「技術・人文知識・国際業務」のことを指しています。
技術・人文知識・国際業務ビザでは、特定技能ビザと違い技能試験はないですが、「学歴」と「職務内容(仕事内容)」に制限があります。
具体的には、技術・人文知識・国際業務ビザでは、大学などで学んだ内容を活かせる仕事内容で、現場労働を除く、いわゆるホワイトカラーの仕事を対象としています。
そのため多くの企業では、特定技能ビザで行ってもらっている仕事内容(現場労働)のまま、一般的な就労ビザである技術・人文知識・国際業務ビザに変更するのは難しいケースが多いです。
ですが、すべてのケースにおいて無理なわけではないので、具体的にどういったケースなら可能なのかについてご説明していきます。
技術・人文知識・国際業務ビザに変更できる条件は?
前提として、技術・人文知識・国際業務ビザでは現場労働の仕事はできません。
そして、行ってもらえる職務内容(仕事内容)に制限があることに加え、外国人本人の学歴も必要となってきます。
そこでまずは技術・人文知識・国際業務ビザに変更できる条件を理解する必要がありますので、下記で確認していきましょう。
学歴について
まず大切なのが、外国人の学歴です。
技術・人文知識・国際業務ビザで認められている学歴は、「大学院」「大学」「短期大学」「専門学校(日本のみ)」を卒業して「学位」を取得していることが必要とされています。
学位とは、大学でいうと「学士」と呼ばれているもので、大学という名前がついていても学士がもらえない学校もあるので、注意してください。
なお、学校は過去に卒業した学校でも、日本の学校でも海外の学校でも大丈夫です。
しかし、専門学校のみは「日本の専門学校のみ」が認められているので、海外の専門学校は対象外なります。
学歴がない場合は?
学歴がない場合は、「実務経験」で技術・人文知識・国際業務ビザが取得できる場合があります。
実務経験は、海外で正社員等で働いてた経験のことを指し、日本で行う仕事内容と同じ仕事内容の年数のみをカウントします。(アルバイトの経験年数は含められません)
よく日本で行う仕事内容と違う職務経験をカウントしてしまう人が多いですが、実務経験年数は、社会人経験の年数ではないので注意してください。
なお実務経験に関しては、技術・人文知識・国際業務ビザが現場労働での仕事内容では取得できないビザとなるため、特定技能ビザでの実務経験をカウントできない場合がほとんどです。
例えば、特定技能ビザで翻訳・通訳の仕事もしていたとしても、メインの業務ではないはずなので、特定技能ビザで翻訳・通訳していた期間を含めるのは難しいと考えるのが一般的です。
なお、必要とされる実務経験年数は、行い仕事内容によって変わってきます。
必要な実務経験の年数
- 営業やマーケティング、経理などの「人文知識」に該当する仕事内容
10年以上 - 翻訳・通訳や海外取引業務などの「国際業務」に該当する仕事内容
3年以上
職務内容(仕事内容)について
技術・人文知識・国際業務ビザで働ける職務内容(仕事内容)は、外国人が大学等で勉強した内容と関連性がある仕事である必要があります。
ただし、勉強した内容と関連性があったとしても、現場で働くことはできず、あくまでもエンジニアや営業、経理など、専門性をもったホワイトカラーの仕事のみが対象となっています。
また、技術・人文知識・国際業務ビザで該当する仕事内容は、その名前の通り「技術」「人文知識」「国際業務」の3つに分けることができますので、そのぞれ対象としている仕事内容についてご説明していきます。
技術・人文知識・国際業務ビザの仕事内容
- 技術
エンジニア業務 - 人文知識
学校で学んだこととの関連があるホワイトカラーと言われる仕事内容(営業・マーケティング・経理など)の業務 - 国際業務
母国語や外国人特有の感受性を活かせる語学教師・翻訳通訳・海外との取引業務などの業務
特定技能ビザから技術・人文知識・国際業務ビザに変更する場合には、外国人に行ってもらう仕事内容が、上記のどれかに該当していることが求められています。
特定技能から技術・人文知識・国際業務に変更できるケースは?
特定技能ビザで働いているということは、現場作業の仕事をしていると思います。
そのため、今の仕事内容のまま、特定技能ビザから就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)に変更することは難しいケースがほとんどです。
技術・人文知識・国際業務ビザに変更できるかは、下記ステップに基づいて、行える仕事内容かどうかを確認していきます。
技術・人文知識・国際業務ビザで働ける仕事内容かを確認する流れ
- 外国人の学歴を確認する
- 大学等の成績証明書に記載ある履修科目を確認する
- 履修科目と関連がある仕事内容で雇用ができるか検討する
なお、技術・人文知識・国際業務ビザに変更後した後に、現場労働をしていると不法就労となりますのでご注意ください。
それでは、具体的に特定技能ビザから技術・人文知識・国際業務ビザに変更した事例を2つご紹介します。
具体的な事例について
ご紹介する事例は、飲食店と建設業の2つになります。
事例1
業種:飲食店
外国人の学歴:大学卒業(学士)
専攻科目:経済学部(マーケティングなどを履修)
特定技能での仕事:接客・調理補助
特定技能ビザでは、店舗にて接客や調理業務を行っていましたが、技術・人文知識・国際業務ビザに変更するに伴って、本部の店舗開発業務に従事することになりました。
対象の外国人は、日本語も問題なく話せていたことに加えて、大学ではマーケティングなどを勉強しており、特定技能ビザで店舗で働いていた際も能動的に動けていたことから店舗開発に異動させました。
事例2
業種:建設
外国人の学歴:大学卒業(学士)
専攻科目:建築科
特定技能での仕事:内装工事
特定技能ビザでは内装工事の仕事をしていましたが、コミュニケーション能力が高かったため、営業をメイン業務として、その他に学校で学んでいたCADオペレーターや設計業務も行ってもらうために技術・人文知識・国際業務ビザに変更しました。
技術・人文知識・国際業務に変更するための必要書類は?
特定技能ビザから技術・人文知識・国際業務ビザに変更する場合には、違う種類の就労ビザになるので、在留資格変更許可申請をする必要があります。
必要書類は、外国人や業種によって変わってきますが、下記にて一般的に必要な書類についてご案内させていただきます。
技術・人文知識・国際業務ビザに変更するための必要書類
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート
- 在留カード
- 証明写真1枚(発行から3か月以内のもの)
- 履歴書(学歴と職歴がわかるもの)
- 卒業証明書(学位の記載があるもの)
- 成績証明書
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
- 直近年度の決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 登記簿謄本(発行から3か月以内のもの)
- 新たに契約した雇用契約書
- 理由書(仕事内容について具体的に説明したもの)
また技術・人文知識・国際業務ビザの申請では、会社規模に応じてカテゴリーという呼び方で分けており、必要書類が省略できます。
また、実際に技術・人文知識・国際業務ビザで働き始められるのは、審査が終わり、新しい在留カードを受け取った後になりますのでご注意ください。