特定技能ビザとは?就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)との違いについて
特定技能ビザという名前を聞いたことはありますか?
特定技能ビザは、2019年4月から始まった新しいビザで、人手不足の業界に専門性や技能をもった外国人を即戦力して受け入れることを目的として作られました。
この記事作成時においては、人出不足が深刻な12分野のみを対象としていますが、今後対象業種が増えていく可能性があります。
目次
特定技能ビザとは?
特定技能ビザは、人出不足が深刻な12分野において、外国人を即戦力人材として受け入れることができる就労ビザの1種です。
日本の就労ビザは全部で19種類あり、外国人が行う仕事内容に応じて取得する就労ビザが変わってきますが、一般的な就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」と言います。
この一般的な就労ビザの技術・人文知識・国際業務では「現場労働することはできない」ので、今まで現場労働が必要な業界では就労ビザの取得が難しく、人出不足が深刻となってしまっていました。
そこで新設されたのが、「特定技能」です。
特定技能ビザには「1号」「2号」の2つがあり、最初は1号から取得することになりますが、1号は最大5年間しか認められていません。
1号の期間中に2号に変更するか、他の就労ビザに変更する必要がありますが、現状2号に変更できるのは「建設業」「造船・舶用工業」の2業種のみに限られています。
しかし、2024年春を目安に2号に変更できる業種を広げ、特定技能12分野のち、介護を除く11分野すべてで、2号に変更できるように改正される予定です。
特定技能1号の12業種一覧
- 介護
- ビルクリーニング
- 宿泊
- 建設
- 素形材産業分野 / 産業機械製造業分野 / 電気・電子情報関連産業分野
- 飲食料品製造
- 外食業
- 造船・船舶工業
- 自動車整備
- 航空
- 農業
- 漁業
特定技能と就労ビザの違いについて
就労ビザとは、働くためのビザの名称で、就労ビザというビザはありません。
しかし私たちは、総称で就労ビザと呼び、それは一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」という就労ビザを指すことがほとんどです。
そこで今回は、特定技能ビザと一般的な就労ビザの技術・人文知識・国際業務ビザの違いについてみていきます。
「特定技能ビザ」と「就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)」の違い
- 在留期間
- 取得するための条件
- 働ける仕事内容
- 管理する企業の有無(登録支援機関)
- 家族の帯同
- 転職について
- 永住権について
在留期間
特定技能ビザと技術・人文知識・国際業務ビザでは、働ける期間が違います。
特定技能ビザは1号と2号があり、最初は1号を取得しますが、1号では、最大5年間しか働けません。
1号から2号に変更ができれば、無制限で働くことができますが、2号に変更できる分野は、現在「建設業」「造船・舶用工業」の2分野のみです。
しかし、2024年春目安で、介護業界を除く11分野において、2号に変更できるように改正される予定です。
介護分野においては、「介護」という就労ビザもあるため、介護分野の2号以降は認められていません。
そして、技術・人文知識・国際業務ビザ‘(一般的な就労ビザ)では、3か月、1年、3年、5年のいずれか在留期間が与えられ、雇用が続き、入管法の要件も満たしているのであれば、ずっと更新して働くことができます。
取得するための条件
特定技能ビザと技術・人文知識・国際業務ビザの取得条件は、かなり違います。
まずは特定技能ビザからご説明します。
特定技能ビザ取得条件
- 技能試験の合格(各業界で試験内容が異なる)
- 日本語試験の合格(日本語能力試験N4または日本語基礎テストの合格のいずれかが必要)
特定技能ビザを取得するためには、働きたい業界の知識や技能がないと取得できません。
そこで、特定技能用の技能試験が設けられており、技能試験は、〇〇に働きたい業界名を入れて、「特定技能 〇〇 試験」と検索すると、いつどこで試験が開催されているか確認できます。
日本語レベルも全くできないと特定技能ビザの取得はできず、最低限の日本語はできるレベルである日本語能力試験N4以上が求められています。(日本語基礎テストの合格でも可)
なお、介護分野だけは、上記の日本語試験に加えて、「介護日本語評価試験」という介護業界に特化した日本語試験があり、この日本語試験にも合格している必要があります。
一方、技術・人文知識・国際業務ビザには、技能試験や日本語試験はありませんが、その代わりに「外国人の学歴」が必要になります。
技術・人文知識・国際業務ビザの取得条件
- 大学以上の学歴または日本の専門学校を卒業して、学位(学士など)を取得していること
- 学歴がない場合は、日本で行う仕事内容と同じ仕事の実務経験が10年以上あること
※現場労働は除く
※国際業務の場合は、3年以上の実務経験が必要
働ける仕事内容
簡単に説明すると、「特定技能ビザ=現場労働も可能」「技術・人文知識・国際業務ビザ=現場労働はできない」となります。
特定技能ビザでは現場労働可能とお伝えしましたが、鋭角には、同じ就労場所で働いている日本人が従事する業務に付随的に従事することが認められているので、例えば飲食店の場合は、接客業務や調理補助、清掃などを行うことができます。
一方、技術・人文知識・国際業務ビザの場合、いわゆるブルーカラーと言われる現場で働く仕事は、学校で勉強していたとしてもできませんので、現場労働で働く場合は、「特定技能ビザ」を検討することになります。
管理する企業の有無(登録支援機関)
特定技能ビザでは、特定技能ビザ1号の外国人が、安定的に円滑に計画書に基づいた仕事ができているかを確認する環境が必要になります。
自社でもこの管理業務を行うことは可能ですが、外国人の母国語での対応や、社長や直属の上司といった利害関係がある方以外の方が管理者とならないといけず、さらに3か月に1回入管への報告義務や3か月に1回以上の外国人との面談など、多くのルールがあるため、実質大企業以外は、この管理業務を外部に委託することが必要になります。
もちろん外部に委託するにあたって外国人の給与以外に管理費用が会社負担でかかってきます。(管理費を外国人負担にすることはできません)
一方、技術・人文知識・国際業務ビザでは、外国人の方の仕事内容などの管理は必要ないので、登録支援機関に依頼することは必要ありません。
家族の帯同
特定技能ビザ1号の場合、家族を日本に呼び寄せることはできませんが、特定技能ビザ2号に変更後は、家族を日本に呼ぶことができます。
例外して、元留学生で、留学ビザ時代に家族を日本に呼び寄せていた場合は、特定技能ビザに切り替えた後でも家族も引き続き日本で暮らすことができます。
一方、技術・人文知識・国際業務ビザでは、家族滞在ビザで海外から日本に家族を呼ぶことができます。
そして、家族滞在ビザの外国人は資格外活動許可を取得することで、週28時間以内のアルバイトをすることができます。
転職について
転職は、特定技能ビザと技術・人文知識・国際業務ビザのどちらでも認められています。
しかし、特定技能ビザの場合、他業界に転職する場合は、働く12分野の業界に応じて、必要な技能試験が異なるため、「技能試験」の合格が必要になります。
また特定技能ビザで転職する場合には、ビザは取得した会社がスポンサーとなって取得しているので、同じ業界でも他業界でも、転職後の会社にスポンサーになっていただき、ビザ申請をして、許可になった後でないと転職して働くことはできません。
一方、技術・人文知識・国際業務ビザの場合も、転職は可能で、特定技能ビザと違う点としては、同じ技術・人文知識・国際業務ビザ範囲内の仕事内容への転職であれば、転職後に「所属機関の変更の届出」を入管に提出するだけで足り、ビザの申請は不要です。
※届出には審査はなく、提出するだけになります。
しかし、技術・人文知識・国際業務ビザ以外の仕事内容に転職する場合は、ビザの変更申請が必要です。
またビザの更新をする際に、転職後の仕事内容が技術・人文知識・国際業務ビザに該当しないと判断されてしまった場合は、日本で仕事を続けていくことができなくなります。
そうならないためにも、転職後の会社での仕事内容が問題ないか確認する方法として「就労資格証明書」というものがあります。
就労資格証明書の取得をしておくことで、ビザの更新申請の際に、問題なくビザ更新をすることができます。
永住権について
特定技能ビザ1号の最大5年間は、永住申請で必要な要件である居住要件には該当しません。
特定技能ビザ2号に変更すれば、2号になった後からの居住歴は永住申請の要件に算入することができます。
例えば、一般的な外国人が永住申請するためには、最低でも日本に10年以上住まないといけません。その10年のカウントの中に、特定技能ビザ1号が入っている場合は、その特定技能ビザ1号の期間は日本の居住年数に含めることはできません。
一方、技術・人文知識・国際業務ビザで日本に滞在していた期間は、永住申請時の居住要件に含めることができます。
まとめ
日本で外国人が働くためには働くためのビザ(就労ビザ)の取得が必要です。
できれば、制限が少なく費用が抑えられる技術・人文知識・国際業務ビザを取得したいと考えられる方が多いと思います。
ただし、「特定技能ビザ」か「技術・人文知識・国際業務ビザ」かの選択は、行う仕事内容によって変わってきます。
特定技能ビザの対象12分野の該当していることが前提ですが、「現場労働」をする場合は、特定技能ビザのみ可能となるため、技術・人文知識・国際業務ビザの取得はできません。
また現場労働はするが、特定技能12分野に入っていない場合には、現状該当する就労ビザがない可能性が高いため、その仕事内容で働いてもらうことは難しくなります。