特定技能(建設業)での外国人受入れのルールについて
目次
特定技能ビザってどんな制度?
特定技能ビザは、2019年4月から新しく始まった就労ビザ(在留資格)で、労働力不足が深刻な14業界に限り認められており、その中には「建設業」も含まれております。
建設業では、制度成立時点で合計40,000人の特定技能外国人を受入れる予定で動いていますが、特定技能ビザを作った際の制度の準備不足と、新型コロナウイルスの影響もあり、2021年2月末現在で1,837人にとどまっており、主に技能実習生だった外国人が特定技能ビザに移行されるのが主流となっています。
特定技能ビザで働ける建設業の職種とは?
特定技能ビザには、建設業も含まれておりますが、建設業と言ってもその業務内容は幅広く、すべての職種で特定技能ビザを取得できるわけではありません。
2021年5月末時点での対象職種は19職種(内装仕上げと表装は試験区分が一緒なので、計18区分となります)になります。
建設業対象職種(特定技能)
- 型枠施工
- 左官
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 建設機械施工
- 土工
- 屋根ふき
- 電気通信
- 鉄筋施工
- 鉄筋継手
- 内装仕上げ / 表装
- とび
- 建築大工
- 配管
- 建築板金
- 保温保冷
- 吹付ウレタン断熱
- 海洋土木工
ここにない職種であっても、今後職種の拡大が考えられていますので、今後の政府の動きに注目していきましょう。
また上記の業務をメインとするのであれば、それに関連する(付随する)業務を行っても問題はございませんが、上記の業務がメインでない場合は、特定技能ビザの取得はできなくなってしまいます。
雇用形態と給与について
特定技能ビザ(建設分野)では、雇用形態や給与について細かなルールがございます。
雇用形態
「直接雇用」でないといけなく、派遣契約はNGとなっています。
直接雇用とは、「正社員」や「契約社員」のことを指します。
給与
「月給制」で「銀行振込」が求められています。
現金手渡しや日給での支払いは、管理が難しいため認められておりません。
給与額
「実務経験が3年以上の給与水準」でなければいけなく、同じ会社に同ポジションの日本人がいる場合は、その方よりも不当に給与を下げることは認められていません。
また最低賃金での雇用も認められておりません。
特定技能ビザでかかる費用とは
全部で3種類あります。
①JAC(建設技能人材機構)への加入
特定技能ビザを取得するには、入管でビザの申請をする前に、国交省の計画認定を受ける必要があり、この計画認定を受けるには、JAC(建設技能人材機構)への加入が必要があり、固定費がかかってきます。
出典:一般社団法人 建設技能人材機構
このJACへの加入には、上記の月額費用に加えて、正会員と賛助会員に分かれており、正会員は36万円 / 賛助会員は24万円の年会費がかかります。
ですが、各職種ごとにある建設団体に加入している場合で、その建設団体が、JACに加入している場合は、間接的にJACに加入しているということで、直接企業がJACに加入する必要はなく、36万円 or 24万円を支払う必要はございません。
そのため直接JACに加入するよりも、JAC加入済の各職種の建設団体に加入した方が費用的には安いので、一般的には建設団体に加入して間接的にJACに加入したとされるのが一般的です。
下記、2020年6月4日時点でのJACに加入している各団体です。
出典:JAC(建設技能人材機構)
②建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録
その他にも、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録も必要になります。
これは国交省が管轄し、一般財団法人建設業振興基金が運営するもので、2019年4月より本格運用されています。
2020年1月には技能実習生にもこのキャリアアップシステムの登録を義務化することを告示しています。
そして特定技能外国人を雇用する場合にも、キャリアアップシステムに登録する必要があり登録料がかかります。かかる費用は、4つ(A~D)ありますので、下記ご確認ください。(費用は2021年4月改定済)
A. 技能者利用料(税込)
1)簡易型:2,500円 / 人
2)詳細型:4,900円 / 人
※どちらを選択されても問題ございません。
※詳細型は、保有資格なども登録できるものになります。
※10年間有効です。
B. 事業者登録料
出典:一般財団法人建設業振興基金
C.管理者ID利用料
法人・個人事業主:11,400円 / 年
一人親方 :2,400円 / 年
※年間更新になります。
D.現場利用料(元請けのみ)
1日の現場あたり:10円(税込)
※1人あたり、1日の1現場入場料金になります。
※下請け業者は不要です。
③登録支援機関によるサポート
特定技能ビザの場合は、入管法に基づき特定技能外国人の生活支援や手続き代行などのサポートを行うことが必要になります。
大企業の場合は、自社内で行える場合もございますが、中小企業の場合は特定技能外国人を管理する方法として「登録支援機関」を利用することがほとんどだと思います。
そしてこの登録支援機関の利用に、管理費が月額3万円ほどかかってきます。(登録支援機関によって金額が変わります)
その他のポイント
ポイント1 建設業許可の取得
特定技能外国人を雇用するには、建設業許可を取得している必要がございます。(法人・個人事業主どちらも可)
建設業許可は、会社や個人として建設業許可を持っていればよく、その許可内容と特定技能外国人が行う業務内容が一致していなくても大丈夫です。
あくまでも雇用側が何かしらの建設業許可を取得していればOKということになります。
ポイント2 受入れ可能人数の制限
建設業の特定技能外国人は、受入れ可能人数が決まっています。
基準は会社の”常勤職員”であり、1号特定技能外国人と外国人建設就労者(特定活動)社員の合計が、常勤職員を超えて雇用することはできません。
例えば、社長1人だけの会社(労働者はすべて業務委託の労働者)の場合は、、基準は常勤職員になるので、特定技能外国人を雇用できるのは1人になります。
ポイント3 就労期間の制限なく働ける可能性あり
建設業の特定技能は、1号と2号が設けられており通常は1号から取得していくのですが、2号に移行することも可能であり、2号になると就労期間の上限がなくなります。(1号は5年間になります)
そして2号になると、居住要件や収入要件などをクリアすれば、最終的に永住権を取得することも可能になるので、ビザの心配なく働くことができるようになります。
2021年5月時点では、2号への移行試験がまだ未定のため、近い将来試験が行われ、2号に移行することが可能となります。
さいごに
建設業の特定技能の場合、「技能実習生2号」→「特定技能1号」というのが現在主流になっていますが、「技能実習3号」にとの違いなどで迷っている企業も多いと思います。
特定技能ビザでは、JACへの加入で固定費がかかる部分がございますが、固定費がネックとなり、特定技能外国人が思ったよりも増えていないことで、この費用が改定される可能性もございます。(すでに1度、変更された実績があります)
今後も政府の動きを注視していく必要がございます。
また建設分野の特定技能ビザは、特定技能ビザの中でも2号への移行が可能な分野であり、技能実習の制度が厳しくなってきている中で、即戦力人材をより長く雇用したい企業には向いている就労ビザになります。
また将来的に、2号へ移行すれば永住権の取得も可能になってくるので、早めに特定技能ビザに変更し、永住権の取得まで持っていくのも方法としてあります。
今後長期で、雇用していきたいということであれば、技能実習3号よりも特定技能ビザにいち早く変更する経営戦略も必要になってくるかと思います。