高度専門職ビザの「職歴」の計算方法と注意点について

今回は、高度専門職ビザを申請する場合の、ポイント計算表の「職歴」の計算方法について解説していきます。
高度専門職ビザの職歴は、ポイント加算できる大切な項目ですが、計算方法が間違っていると、高度専門職ビザが認められない場合もあるので注意が必要です。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
高度専門職ビザとは?
高度専門職ビザとは、就労ビザの1つで「学歴」「収入」「実務経験の年数」「日本語能力」「年齢」などをポイントにして合計で70ポイント取得できていると取得できるもので、高度人材とも呼ばれ、ハイスペック向けの就労ビザになります。
そして高度専門職ビザは1号と2号に分かれており、まずは1号を取得して3年経過後に2号の申請ができるようになります。
高度専門職1号及び2号には、それぞれメリット・デメリットがあるので、理解したうえで申請する必要があります。
今回は、高度専門職ビザを取得するための記事になるので、1号についてご説明していきます。
高度専門職1号のメリット
- 5年のビザがもらえる
- 2週間~1ヶ月ほどで審査をしてもらえる
- 親を日本に呼ぶことができる(条件あり)
- 永住権の申請が早くできるようになる(最短で1年後~3年後)
- 家事使用人を雇うことができる(条件あり)
- 配偶者もフルタイムで働くことができる(条件あり)
- 今の仕事と関連する仕事であれば、資格外活動許可なしで複数の仕事ができる
メリットに感じるのは人それぞれだと思いますが、一般的な就労ビザに比べると優遇措置が多くあり、中でも5年のビザがもらえ、最短で1年~3年で永住申請ができるようになるのは大きなメリットかと思います。
高度専門職1号のデメリット
- 転職するたびにビザ申請が必要
- 高度専門職のポイントが下がってしまった場合は、更新ができない
高度専門職ビザは、勤務する会社ごとに取得する必要があるので、転職をしたいときには、転職先企業での高度専門職ビザの許可が下りた後に転職が可能となります。
そのため、高度専門職ビザは5年ビザではありますが、転職のたびに申請が必要となるので、転職が多い場合にはビザ申請が大変になります。
また高度専門職ビザを持っている間に、ポイントが70ポイント以下に下がってしまった場合は、高度専門職ビザの更新ができなくなってしまいます。
高度専門職ビザを保有している間も70ポイント以上をキープしないといけないルールはありませんが、70ポイント以下の場合には、高度専門職ビザの更新はできなくなってしまいます。
申請する高度専門職ビザの種類について
高度専門職ビザは、1号の中でも「1号イ」「1号ロ」「1号ハ」の3種類に分けられており、それぞれ日本で行う仕事内容によってイ・ロ・ハのどれになるかが異なります。
申請する高度専門職ビザの種類
- 1号イ
教授、教育 - 1号ロ
技術・人文知識・国際業務(国際業務は除く)、法律・会計、医療、介護、興行、技能 - 1号ハ
経営管理
上記をご確認いただき、該当するビザのポイント計算表でポイント計算を行ってください。
高度専門職ポイント計算表はこちら(日本語版)
Point Calculation Table(English Version )
一般的な就労ビザは、「技術・人文知識・国際業務」になるので「1号ロ」で申請すること多いですが、大学の先生の「教授」や学校の先生などの「教育」は1号イ、会社経営の場合には「1号ハ」といったように、使用するポイント計算表が違うのでご注意ください。
ポイント加算できる項目とは?
高度専門職ビザは、「高度専門職ポイント計算表」で70ポイント以上獲得できれば、取得可能となります。
また、上記で説明した日本で行う仕事内容に応じて、1号イ・1号ロ・1号ハと計算で使用するポイント表が異なり、ポイントとなる項目も変化しますが、今回は、一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)でのポイント計算表である1号ロに基づいて説明していきます。
ポイントの対象となる主な項目(1号ロ)
- 学歴
- 職歴
- 年収
- 年齢
- 研究実績(特許や論文など)
- 国家資格の有無
- 勤務先企業の成長性(規定あり)
- 外国のハイレベルな資格の有無
- 日本語能力
- 卒業した大学等のレベル
高度専門職ポイント計算表はこちら(日本語版)
Point Calculation Table(English Version )
この中で高度専門職1号を取得できる人の多くは、「学歴」「職歴」「年収」「年齢」「日本語能力」などの項目でポイント取得しています。
そして、多くの方が「職歴」のカウントについて間違っていることが多いので、細かくご説明していきます。
高度専門職1号で認められる「職歴」とは?
高度専門職ビザポイント計算表の中でも、「職歴」はポイントが獲得できる重要な項目です。
ただし、高度専門職1号で獲得できる「職歴ポイント」は、日本で行う仕事内容と同じ仕事での経験年数を指しており、社会人経験年数を聞いているわけではありませんので、注意が必要です。
例えば、今「営業」の仕事を7年している場合で、過去に「英会話講師」の経験を3年したことがあったとしても、合算して職歴10年とはなりません。
今行っている「営業」の仕事を違う会社でも行っていた場合に加算できますが、違う職種の仕事は職歴の年数には含められません。
職歴の計算ポイント
- 日本で行う仕事内容と同じ業務の経験のみカウントする
- 複数社での経験であっても合算が可能
- 海外で仕事をしていた経験も合算可能
ポイント加算できるのは、正社員や契約社員のみ
「職歴」の加算は、正社員や契約社員など「フルタイムで働いていたもののみ加算可能」で、アルバイトやパートで働いていたものは職歴として加算できません。
会社経営や個人事業主として働いていたものは加算が可能ですが、特に個人事業主の場合には、証明がとても難しくなります。
国によっては、個人事業主も国に登録が必要なので、その場合には個人事業主として働いていた証明書を発行できますが、ほとんどの国では、個人事業主として働いていた証明をすることは難しいことが多いです。
さらに個人事業主として、その事業がメインであったことを証明することも難しいですが、ポートフォリオなど、客観的に証明できるものがあれば認めてもらえる可能性が上がります。
まずは何か証明できる方法を探してみてください。
「職歴」の証明方法について
職歴の証明方法は、「在職証明書で証明」しますので、今の勤務先や過去の勤務先から在職証明書を発行してもらうことが必要になります。
発行してもらう在職証明書には、「在籍期間」「行っていた仕事内容」など、具体的に記載していないといけないので、在職証明書に記載してもらわないといけない内容を確認しておきましょう。
在職証明書に記載する項目
- 勤務していた時期(入社日と退社日)を明確に記載する
- 行っていた業務内容を記載する(複数ある場合は、期間を分けてすべて記載)
- 会社名と代表者などのサインをしてもらう
- 電話番号を記載してもらう(あった方がよい)
「在籍期間」「行っていた仕事内容」「会社名・代表者のサイン」は必ず、在職証明書に記載してもらう必要があります。
この記載がないと、高度専門職ポイント計算表の職歴年数に該当するか判断できないからであり、会社の電話番号については任意ですが、記載があった方が望ましい項目です。
理由としては、在職証明書は偽装がしやすい書類になるため、入管も審査の中で直接会社に電話して確認する場合があります。
「会社が本当に存在しているのか」「本当に働いていたのか」などを審査の中で確認する必要があると感じた場合に、入管が直接電話をして確認を行っています。
すでに倒産している会社はカウントできない
過去に本当に職歴(実務経験)があったとしても、その会社が倒産してしまっていて、在職証明書をもらえない場合は、職歴として認めてもらえません。
ただし倒産していても、当時の社長に在職証明書を発行してもらうことができ、会社が存在していたことが証明できれば、入管に認めてもらうこともできますが、社長から在職証明書を取得できない場合には、残念ながらその職歴の合算はできなくなってしまいます。
「職歴」のポイント計算の注意点とは?
職歴の証明として前職などに在職証明書を発行してもらうとお伝えしましたが、会社で色んな業務を行っていた場合は注意が必要です。
長い年数働いていると、1つの業務だけではなく、部署が変わり仕事内容が変化したり、複数の仕事内容を掛け持ちで行っていたケースもあると思います。
その場合は、在職証明書を発行してもらう際に、トータルの在籍期間に加えて、行っていた仕事内容ごとの期間も記載してもらうようにしてください。
例えば、7年間勤務していて、最初の3年間は営業の仕事、その後2年間はマーケティング、最後の2年間は企画の仕事だった場合は、2008年2月1日~2011年1月31日まで営業、2011年2月1日~2013年1月31日までマーケティング、2015年2月1日~2017年1月31日まで企画といったように明確に記載します。
たまに行ってきた仕事内容が曖昧に記載されている場合がありますが、仕事内容が曖昧な場合は、最悪の場合、職歴として認めてもらえない可能性もあるので、仕事内容は明確に記載することが必要です。
職歴の期間は1日でも不足していると認められない
多くの在職証明書には、入社日と退社日の日付けまで記載してあることは少ないです。
職歴として認めてもらいたい年数までの期間が在職証明書で明確な場合には問題ないですが、ぴったり3年や5年と言った職歴の場合には、入社日と退社日が2010年4月1日~2013年3月31日と記載してあることが必要です。
例えば、2010年4月~2013年3月だけの記載だと、もうかすると、2014年4月4日入社の場合もあり、そうなると3年の職歴にはならないので、職歴のポイントとして認めてもらえない可能性が高いです。
高度専門職ビザの職歴は、1日でも不足していると認められないので、ぴったりの年数を証明する場合には在職証明書の記載方法には注意してください。
国際業務の仕事内容は高度専門職ビザの対象外
高度専門職ビザ1号ロは、技術・人文知識・国際業務での仕事内容がメインとなりますが、「国際業務」の仕事は高度専門職ビザの対象外となります。
国際業務の仕事とは、「語学教師」「翻訳・通訳」「海外取引業務」などが含まれており、これらの仕事をする場合には、ポイントが70ポイント以上あっても高度専門職ビザの取得はできません。
なお海外取引業務は国際業務の仕事に該当しますが、人文知識の要素も入るので、必ずしも高度専門職ビザの申請ができないないので、具体的にどのような業務を行っているのかで判断することになります。
しかし、語学教師や翻訳・通訳のみの仕事内容の場合には、高度専門職ビザが認められないことがほとんどです。
そして、すでに技術・人文知識・国際業務ビザを取得していて、高度専門職ビザに変更したい場合、今の就労ビザが国際業務のみで取得できているか、人文知識も含めて取得できているかの判断はとても難しいです。
そのため、その場合は入管に相談するか、専門家に相談されることをおすすめします。
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