技術・人文知識・国際業務(就労ビザ)の取得条件は?手続きの流れと審査期間も解説

日本の一般的な就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」と言います。
技術・人文知識・国際業務ビザを取得するには、学歴や仕事内容に制限があるため、どんな仕事でも取得できるものではありません。
そこで今回は、技術・人文知識・国際業務の就労ビザを取得するための条件と申請までの手続きの流れ、審査期間についても解説していきます。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
技術・人文知識・国際業務とは?
「技術・人文知識・国際業務」とは、日本の一般的な就労ビザのことを言い、技術・人文知識・国際業務は長いので、通称で「技人国ビザ(ぎじんこくビザ)」と呼ばれています。
※この記事でも技人国ビザと表記します。
技人国ビザではできる仕事内容に制限があり、「エンジニア(理工系技術者、IT技術者)」「営業」「マーケティング」「外国語教師」「通訳翻訳者」「デザイナー」などのホワイトカラーの仕事が対象となります。
ちなみに技人国ビザについての入管法上の表記は、下記になっています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う、理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術者若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
出典:出入国在留管理庁 |
まとめると、外国人が大学などで学んだ知識や母国の文化や言語と関連性がある仕事であれば、技人国ビザが認められることになります。
専門知識が不要な仕事(単純作業・反復作業など)や現場労働の仕事、外国人の学歴と関連性がない仕事の場合は、技人国ビザには当てはまりません。
技術・人文知識・国際業務で認められる仕事内容は?
技人国ビザに当てはまる職種は、ホワイトカラーの仕事とお伝えしましたが、具体的にどのような仕事内容が認められるのでしょうか?
技術・人文知識・国際業務ビザは、その名前の通り「技術」「人文知識」「国際業務」の3つに分けて考えたほうがわかりやすいので、分けてご説明していきます。
「技術」の仕事
「技術」とは、エンジニアのことを指します。「システムエンジニア」「プログラマー」「機械工学の技術者」「情報セキュリティー」などの仕事をする場合に該当します。
「人文知識」の仕事
人文知識とは、大学等で文系科(経済学部・経営学部・言語学・社会学・文学など)の科目を専攻して、その知識を活かして行う仕事をする場合に該当します。
具体的には、「営業職」「マーケティング」「コンサルティング」「企画」「デザイン」「設計」「映像制作」「労務管理」「経理」「人事」「法務」「総務」などが該当します。
「国際業務」の仕事
国際業務とは、「外国人の特有の思考や感受性」が活かせる仕事をする場合に該当します。
具体的には「語学教師」「翻訳通訳者」「広報・宣伝」「海外取引業務」「服飾デザイン」「インテリアデザイン」「商品開発」などが該当します。
認められてない仕事内容は?
技人国ビザで認められる仕事内容は、「専門的知識」を活用できる仕事である必要があります。
そのため、現場労働(単純労働・反復作業)の仕事は技人国ビザでは認められていません。
※現場労働の場合には、仮に大学を卒業していても認められていません。
認められていない内容
- 単純作業(反復的に行なう仕事)
ex.工場のライン作業など - 専門的知識を必要としない作業
ex.レジ打ち、接客、調理補助、ベッドメイキングなど - 現場で行う作業
ex.建設現場の作業、マッサージ、警備員、配送業務など
技術・人文知識・国際業務の取得条件は?
技人国ビザの取得条件は、外国人に学歴があることが必要です。そしてその学歴の内容と行う仕事内容との間に関連性があることが求められています。
通常は「学歴」で取得することがほとんどですが、学歴がない場合には「実務経験」で取得できる場合もあるので、学歴がない場合には実務経験も確認しておきましょう。
技人国ビザで必要は「学歴」は?
技人国ビザで必要な学歴は、「大学以上を卒業して、学士などの学位を取得していること」が求められています。大学以外には、「日本の専門学校」を卒業して専門士の学位を取得していても技人国ビザの取得は可能です。
※海外の専門学校は認められていないので注意してください。
また大学という名前がついていても、「学位」がもらえない学校もあり、学位がもらえないと技人国ビザの学歴要件に該当しないと判断されてしまう場合があります。
学歴の証明については、卒業証明書(または卒業証書)を提出して証明しますので、卒業証明書がない人は学校から再度取得する必要があります。
卒業証明書を準備できない場合は、本当に大学等を卒業していても、技人国ビザは認められなくなってしまいます。
学歴がない場合は「実務経験」を証明する
該当する学歴がない場合は、実務経験を証明するという方法もあります。
※学歴に該当がある人は、実務経験の証明は不要です。
技人国ビザで必要な実務経験とは、社会人経験のことではなく、日本で行う仕事内容と同じ仕事の実務経験年数を指します。
仕事内容が違う実務経験年数を証明しても、技人国ビザは認められませんのでご注意ください。
実務経験で必要な年数
- 「技術・人文知識」の仕事は10年以上の実務経験
- 「国際業務」の仕事は3年以上の実務経験
なお、実務経験は正社員や契約社員での経験のみ含めることができ、アルバイトやパートは含まれません。
さらに実務経験は、過去の会社などから「在職証明書」を取得して証明することになるので、前の会社と関係性が悪くて取得できない・倒産してしまって取得できない場合は、本当に実務経験があったとしても認めてもらうことはできません。
そして在職証明書をもらう際も、〇年〇月〇日~〇年〇月〇日まで勤務し、何の仕事をしていたのかを具体的に記載した在職証明書である必要があります。
技人国ビザの審査では、在職証明書に記載ある仕事内容が日本と同じ仕事内容であるかをチェックしています。そのためもし勤めている期間中に部署移動などがあり、複数の仕事をしていた場合は、行っていた仕事内容ごとに期間を記載する必要があります。
企業側の取得条件は?
技人国ビザを取得するには、企業側にも条件があります。
技人国ビザを申請できるのは、法人に加えて個人事業主も可能ですが、規模が小さいほど、提出書類が多くなり、審査が厳しくなる傾向にあります。
そのため、まずは最低限おさえておきたい条件について解説していきます。
企業側の条件
- 給与が日本人と同等以上の金額であること
- 経営状況が安定していること(債務超過の場合は注意)
給与が日本人と同等以上の金額であること
技人国ビザを取得するには、外国人の給与が「日本人を雇用した場合と同等額の給与水準」であることが必要になります。
外国人にも労働基準法は適用されるので、同一労働同一賃金である必要があり、同ポジションで同スキルの日本人を雇用する場合と比較して、外国人という理由だけで不当に給与を低くすることは認められていません。
給与に差をつけてはいけない具体例
- 日本語ができないので、日本人よりも給与を下げる
- 外国人採用は初めてなので、様子見で日本人よりも給与を下げる
給与額で審査に引っかかる例としては、ネット求人サイト等で募集をかけている場合です。現在募集していなくても、過去に募集したことがある場合、ネット上には過去の求人が残っている場合が多いです。
その求人内容が外国人と同ポジションの求人の場合で、外国人の給与がネット求人より安い場合には、不当に給与を下げているのではと疑われてしまうので、その理由を説明する必要があります。
経営状況が安定していること(債務超過の場合は注意)
技人国ビザでは、外国人に対して給与の未払いなどが起きないように、会社が給与を支払える経営状況であるかを審査しています。
審査で引っかかる可能性があるケースは「債務超過」(負債が資産を上回っている状態)になっている場合です。
「債務超過=不許可」ではないですが、レバレッジをかけて設備投資などに力を入れている場合もあると思いますので、その場合は、入管の審査官にわかるように理由書を作成して説明するようにしてください。
何も説明をしないと、給与をどのように支払うのか不透明なため、最悪の場合不許可になってしまう可能性があります。
技人国ビザの手続きの流れについて
技人国ビザを申請する手続きの流れは、まず労働条件(給与や労働時間・休日など)を審査することになるので、雇用開始前ですが雇用契約書の締結が必要になります。
雇用開始日は、就労ビザの許可後になるので、2~3か月後で締結するか、就労ビザの許可後というような記載をしておきます。
またトラブル防止のため、停止条件として備考欄に「就労ビザの許可がされない場合は、発効しないものとする」といったような記載をしておくのも効果的です。
なお入管ではカテゴリーといい、会社の規模に応じてカテゴリーを4つに分けています。
そしてカテゴリー1と2の企業である上場企業や法定調書合計表に記載されている源泉徴収税額が1000万円以上の企業については、雇用契約書の提出は不要となっています。
技人国ビザ申請の流れ
- 技人国ビザでできる仕事内容かどうかを確認する
- 外国人の学歴または実務経験年数を確認する
- 雇用契約を締結する
- 技人国ビザの必要書類を準備する
- 入管に申請する
- 許可
- 在留カードを受け取る(就労開始)
※外国人が海外在住の場合には、認定証明書を受け取る以下は、外国人が海外在住の場合のみ - 認定証明書の原本を外国人に送る
※電子版の場合は、メール転送のみでOK - 海外にある日本領事館(大使館)にて外国人が査証(ビザ)申請をする
- 許可後、来日
審査期間はどのくらい?
技人国ビザの審査期間は年々長くなっており、2024年時点での東京入管では、2~3ヶ月程度かかっています。
上場企業や会社規模が大きいカテゴリー1・2企業では、審査期間を早くしてもらえる傾向にありますが、上場企業などでも2ヶ月くらいは審査でかかることが多くなっています。
そして外国人が海外在住の場合には、審査が4ヶ月ほどかかる場合もあるので、採用が決まった際には早めに申請をすることをおすすめします。
ちなみに入管では標準処理期間というものを公表していますが、全国平均の日数となるため、審査する入管の場所によって審査期間は変わってきます。
審査を早める方法はある?
特別な事情があれば審査を早く行ってくれる可能性もありますが、基本は審査を待つしかありません。
少しでも審査を早めたい場合には、早めに申請を出すことも大切ですが、審査官が見て内容がすぐわかるように申請書類をわかりやすくまとめることが大切です。
例えば、外国語の書類には日本語訳をつけたり、外国人に行ってもらう仕事内容について細かく説明した理由書を作成したり、会社の経営状況について任意で説明したりするのが有効的です。
ちなみに審査状況の確認については、申請した入管に直接確認できますが、「審査中」または「審査が終わったか」のどちらかしか教えうことはできません。
申請する入管はどこ?
技人国ビザを申請は、「外国人」が行うことを原則としており、申請する入管は、外国人が住んでいる地域を管轄する入管になります。
外国人が海外に住んでいる場合には、会社の担当者が申請代行することができ、会社所在地を管轄する入管で申請ができます。
入管(出入国在留管理局)は全国にありますので、最寄りの入管がどこにあるかは「入管 (住んでいる都道府県)」で検索してもらうとすぐに出てきます。
また分局が自宅の近くにない場合には、最寄りの支局や出張所で申請をすることも可能です。
ただし、支局や出張所次第では申請を受け付けていない場合もあるので、事前に確認を取るようにしてください。
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