外国人エンジニアが就労ビザを取得する要件と手続きの流れ
IT社会の昨今、日本で働く外国人エンジニアも増えてきていますが、世界的にエンジニア人材の取り合いになっています。
そして優秀な外国人エンジニアを日本企業で働いてもらうためには、就労ビザの取得が必要になりますが、なるべく早めに確実に就労ビザを取得するためには、まず何を確認するべきなのでしょうか?
そこで今回は、外国人エンジニアの就労ビザを取得するための要件や手続きの流れについて説明していきます。
目次
外国人エンジニアの就労ビザの種類は?
日本でエンジニアとして働くための就労ビザは、「技術・人文知識・国際業務」と言われるビザ(在留資格)になります。
※エンジニアとは、システムエンジニアやITエンジニア、プログラマーなどすべての開発関係のすべての業務が含めて記載しています。
そして入管法では、「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務」と表現されており、技術・人文知識・国際業務ビザは、日本国内で日本にある会社と契約して働くために必要となる就労ビザとなっています。
高度専門職とは?
高度専門職とは、就労ビザの種類の1つで、高度人材と呼ばれる優秀な外国人のみが取得できる就労ビザとなっています。
高度専門職には、1号と2号に分かれており、最初は必ず高度専門職1号を取得することになり、1号の中にもイ・ロ・ハの3種類に分かれています。
エンジニアで高度専門職ビザを取得する際は、高度専門職1号ロになります。
高度専門職ビザを取得するためには、高度専門職ポイント計算表で70ポイント以上を取得している必要があり、「学歴」「収入金額」「実務経験年数」「年齢」「日本語能力」などでポイントが取得できるようになっています。
高度専門職ポイント計算表はこちら(日本語版)
Points Calculation Table(English)
その他にエンジニアが取得できる就労ビザはある?
外国人エンジニア向けの就労ビザは、技術・人文知識・国際業務ビザが一般的で、高度人材になると高度専門職ビザの取得も可能とご説明しました。
しかし、その他にも外国人エンジニアが取得できる可能性がある就労ビザがありますので、ご紹介していきます。
外国人エンジニアが取得できる就労ビザ
- 技術・人文知識・国際業務
- 高度専門職
- 企業内転勤
- 特定活動(インターンシップ)
企業内転勤とは?
企業内転勤とは、転勤ビザとも呼ばれますが、日本にある企業の海外子会社(親会社)から日本の会社にに転勤してもらう就労ビザになります。
なお、関連会社でも転勤は認められていますが、関連会社との関係性の審査があるので、議決権や経営権、採用に関しての権利などがどの程度あるのかによって認められるかが変わってきます。
なお企業内転勤ビザは、海外の子会社などで直近1年以上働いている外国人が対象で、仕事内容も技術・人文知識・国際業務ビザで認められている業務に限られています。
特定活動(インターンシップ)とは?
インターンシップとしての特定活動では、海外の大学に通っている学生に限り、インターンシップで受け入れることができます。
さらにインターンシップの活動に対して報酬があるのか、ないのかによって取得するビザの種類が変わってきますが、報酬がある場合には、特定活動(告示9号)のインターンシップを取得することになり、インターンシップ期間中の活動で大学の単位が取得できることも条件となってきます。
外国人エンジニアが就労ビザを取得するための要件は?
外国人エンジニアが「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得するための要件についてご説明していきます。
技術・人文知識・国際業務ビザでは、行う業務内容も重要な審査項目ですが、今回はエンジニア向けの記事となるため、エンジニアでの仕事であれば、業務内容の要件はクリアされています。
続いて重要なのは、外国人本人の「学歴」「実務経験」「資格の有無」のいずれかになり、一般的には学歴を証明して、技術・人文知識・国際業務ビザを取得します。
エンジニアで必要な要件(どずれか1つ該当すること)
- 「大学」「「短期大学」「大学院」または「日本の専門学校」を卒業して「学位」を得ていること
- 日本で行うエンジニア業務と同じ業務の「実務経験が10年以上」あること
- 指定されている「資格に合格」していること
学歴について
一般的には、外国人が日本でエンジニアとして働くには「学歴が必要」となり、学歴には「大学」「短期大学」「大学院」および「日本の専門学校」が対象となっています。
ただし、学校を卒業していても、「学位」が取得できていないといけなく、学位とは、大学であれば学士、大学院であれば修士と言われるものになります。
卒業している学校は日本の学校でも海外の学校でも問題はありませんが、専門学校に限っては日本の専門学校のみ認められており、海外の専門学校は対象外となります。
また、学校名に大学と入っていても、学位がもらえない学校もあるので注意してください。
学校を卒業してもらえる称号について
- 大学:「学士(Bachelor Degree)」
- 短期大学:「短期大学士や準学士(Associate Degree)」
- 大学院:「修士(Master’s Degree)」
- 専門学校:「専門士」
※「海外の専門学校」「日本語学校」「職業訓練校」などは就労ビザの審査において、学歴としては認めてもらえません。
履修科目について
日本の就労ビザの審査では、業務内容が外国人の学歴(専攻科目)と関連していることが求められています。
そのため大学等で何を専攻していたのかも技術・人文知識・国際業務ビザを取得するためには重要なポイントです。
工学部であれば、関連性は高いので問題はないですが、他の学部の場合には、どのように関連しているのかを入管に説明する必要があります。
ただし、大学以上を卒業している場合には、専攻科目の審査は緩くなるので工学部以外でも許可されやすいですが、日本の専門学校卒業の場合には、専攻科目にエンジニア業務との関連性があるかどうか、細かく審査されますので、関係ない科目を専攻している場合には注意が必要です。
実務経験について
該当する学歴がない場合には「実務経験を証明する方法」もあり、実務経験の証明ができる場合は、学歴は不要になります。
実務経験では、日本で行うエンジニアの仕事と同じ仕事の実務経験年数が必要になるので、エンジニア以外の仕事の経験があっても実務経験に加えることはできません。
そして、アルバイトやパートタイムの経験は含められず、「正社員や契約社員として経験した年数で10年以上」が必要となります。
ちなみに実務経験の証明書類は、元勤務先から「在職証明書」を発行してもらい証明することになるのですが、在職証明書は偽装されやすい書類となっているので、入管では厳しく審査しています。
資格について
学歴も実務経験も該当しない場合は、エンジニア業務に関連する資格に合格していれば、技術・人文知識・国際業務ビザの取得が可能となります。
該当資格は、日本の資格から海外の資格までいくつかありますので、下記入管のサイトより、対象の資格をご確認頂ければと思います。
ちなみに対象となっている資格は、高難易度の資格となるので、合格している外国人はあまり多くありません。
雇用契約の方法について
外国人がエンジニアとして就労ビザを申請する際には、「先に雇用契約の締結が必要」になります。
雇用契約書は、日本人を雇用する場合と同じように締結することが必要となりますが、就労ビザの審査において重要なポイントをいくつかご説明していきたいと思います。
雇用契約書のを作成する際のポイント
- 業務内容
- 勤務地
- 給与水準
業務内容について
今回は、エンジニア業務での就労ビザ取得になるので、業務内容は「エンジニア業務」となると思いますので、今回は特段問題はありません。
ちなみに、技術・人文知識・国際業務ビザは、ホワイトカラーの仕事の就労ビザになるので、現場労働はできないので、現場労働での仕事内容では許可になりません。
勤務地について
エンジニア業務の場合には、「出社して作業」「契約先の企業に常駐で作業」「自宅作業」など様々な働き方があると思います。
さらにはSES・出向という雇用形態をとっている場合もあると思います。
前提として今の入管法では、雇用企業のオフィスにて勤務することが原則として作られている法律になるので、勤務場所が異なる場合には、別途理由書で状況の説明をする必要があります。
ただし提携先常駐や自宅作業だと就労ビザの許可がされないわけではないので、法令を守って作業していることを説明すれば問題はありません。
何も説明がないと、入管の審査官もわからないので、審査内容によっては最悪の場合、虚偽申請を疑われてしまったりする可能性もあるので、事前に審査官にわかるように申請することが大切になります。
給与水準について
外国人エンジニアが日本の就労ビザを取得するためには、「日本人と同等以上の給与金額であること」が必要です。
外国人であっても日本の労働基準法は適用となるため、最低賃金を守っていることは当然として、同ポジションで日本人を雇用する場合と比べ明らかに給与額が低い場合は、審査で引っかかってしまいます。
入管の審査では、過去に出しているネット求人なども調べている可能性も高いため、ネット求人が残っている場合で、ネット求人よりも給与金額が低くなる場合には、給与の決め方に変更があった旨の説明も理由書に記載しておくようにしてください。
会社の安定性・継続性について
就労ビザの審査では、「会社の安定性と継続性」も審査されており、安定性とは、外国人エンジニアに対して「安定して給与を支払える資金力があるか」を確認していることになります。
特に規模の小さい会社や新しく設立したばかりの会社の場合には、今後の資金繰りやキャッシュフローについて説明をするのが効果的です。
また継続性とは、主に「債務超過ではないか?」を見ており、債務超過の場合には、「新規雇用する余裕があるのか?」「今後の収支計画はどうなっているのか?」が審査されるので、なぜ債務超過なのか、今後の資金計画などの説明をするようにしてください。
会社の規模について
就労ビザの審査では、会社の規模に応じて「カテゴリー」と呼ばれる区分がされており、カテゴリーによって提出書類が異なってきます。
カテゴリーはカテゴリー1~4までに分けられており、簡単に言うとカテゴリー1が上場企業、カテゴリー2が源泉徴収税額が1,000万円以上の企業、カテゴリー3がその他の一般企業、カテゴリー4が新設会社と個人事業主となっています。
カテゴリー1の上場企業であれば、かなり提出書類は少なくなり、カテゴリー4の新設会社や個人事業主の場合は、提出書類が多くなります。
就労ビザ申請の手続きの流れは?
ここからは、就労ビザ申請の手続きの流れについてご説明していきます。
なお手続きの流れは、外国人エンジニアが海外に住んでいるか、日本に住んでいるかによって変わります。
就労ビザ申請の流れについて(海外在住の場合)
- 雇用契約を締結する
- 必要書類をそろえる
- 会社の担当者が日本にある入管に申請する(審査2ヶ月~3ヶ月ほど)
- 認定証明書(許可証)が会社に届く
- 認定証明書を海外に住む外国人に送る
- 外国人が認定証明書を使い、現地日本大使館でビザ(査証)手続きをする(1週間程度)
- 来日
- 就労開始
就労ビザ申請の流れについて(日本在住の場合)
- 雇用契約を締結する
- 必要書類をそろえる
- 外国人が日本にある入管に申請する(審査2ヶ月~3ヶ月ほど)
- 許可通知が外国人に届く
- 新しい在留カード(就労ビザ)を入管に受け取りに行く
- 就労開始
審査期間について
就労ビザの審査期間は、入管の場所や会社規模、外国人の学歴などによって変わってきますが、おおよそ東京入管の場合には、2ヶ月~3ヶ月ほどになります。
近年は入管の混雑により、以前よりも審査に時間がかかる傾向にあり、海外に住んでいる場合の方が日本に住んでいる場合に比べて審査に時間がかかります。
外国人が海外に住んでいる場合は、日本の入管での申請の他に、海外にある日本大使館(領事館)での再度申請もあるため、早くても来日までには4ヶ月以上かかる傾向にあります。
そして審査内容によっては、審査期間が大幅にかかる可能性もあるため、採用スケジュールは余裕を持って進めるようにしてください。