外国人が料理人(コック)として技能ビザを取る要件とは?実務経験の証明についても解説
飲食店で、外国人のコックさん(料理人)に働いてもらうためには、「実務経験が必要」になります。
「実務経験は原則10年以上必要」になりますが、タイ料理のみ5年以上となっています。
また、どんな飲食店でも外国人がコックさんとして働けるわけではなく、外国料理の専門店(中華料理・イタリア料理など)である必要があります。
今回は、そんなコックさんとして働くための要件等について解説していきます。
目次
外国人がコックさんとして日本で働く要件とは?
コックさん(料理人)のビザは、技能(Skilled Labor)と言いますが、技能ビザに学歴要件はなく実務経験が求められています。
この実務経験は細かくは後述しますが、おおむね10年以上ですが種類によって変わってきます。
コックさんのビザ要件(外国人本人)
- コックさん(料理人)としての実務経験が10年以上あること(タイ料理のみ5年)
コックさんのビザ要件(日本の会社)
- 外国の料理の専門店であること
- 日本で働くお店が20席以上ある広さであること
- コースメニューがあることが望ましい
コックさんには学歴要件が求められていない代わりに、「調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者」とあります。
ここでのポイントは、コックさん(料理人)であればどんな料理でも良いのかというとそうではありません。
“外国において今案され我が国において特殊なものを要する業務“とあるように「日本発祥の料理ではなく外国の料理であること」が必要です。
外国の料理の中には、すでに日本で日本料理のように進化し海外の料理人を呼ぶまでもないと判断されてしまうものもございます。(例:ラーメン)
コックさん(料理人)としての実務経験が10年以上あること
外国人本人に求められる実務経験10年以上ですが、これにもポイントがございます。
実務経験のポイント
- 専門的料理の実務経験であるかどうか
- 日本で働くお店の料理と一緒かどうか
- アルバイトやパートでなく、正社員や契約社員としての実務経験であるか
- 証明ができるか
日本の居酒屋のようないろいろな種類の料理を出すレストランでの実務経験ではなく、「外国料理の専門店での実務経験が必要」になります。
ただし、様々な種類の料理を出すレストランだったとしても、その中で専門でやっていたということであれば可能性はありますが審査はかなり厳しくなります。
また実務経験には、専門学校等で調理について学んでいたのであればその期間も含むことは可能です。
外国の料理の専門店であること
日本で勤務するレストランについても外国料理の専門店である必要があります。
インド料理屋やタイ料理屋、ベトナム料理屋などはわかりやすいですが、中華料理の場合には注意が必要です。
詳しくは後述します。
日本で働くお店が20席以上ある広さであること
お店の広さも関係してきます。
例えば7席ほどのカウンターだけのお店などでは審査はかなり厳しくなります。
あくまでも外国料理の専門店ですので、席数が少ないと他の業務などを行う可能性も高く、認められない傾向にあります。
コースメニューがあることが望ましい
これはマストではないですが、「コースメニューはあった方が審査には有利」です。
イメージとしては中華料理店でも、街によくある中華料理屋さんというよりは中華街にあるコースメニューがある高級な中華料理店をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
実務経験の証明方法とは?
外国人本人のコックさんとしての実務経験ですが、「在職証明書で証明する」ことになります。
在職証明書の証明内容について
- 勤務期間(いつ~いつまで)
- 職務内容(調理担当など)
- 雇用形態(正社員など)
- ポジション(役職などあれば)
- 会社名と電話番号・代表者サイン
在職証明書は、元々勤務していた会社に「いつ~いつまで、どの料理のコックさん(料理人)として勤務していた」ことを証明してもらうものなりますが、この書類は偽装されることが多いので入管の審査ではとても厳しく見られます。
まず会社の実態があるのか、そこでどのような料理を作っていたのか、専門店なのかなど細かく審査されます。
10年以上の「実務経験は合算が可能」ですので複数の会社より在職証明書を取得することは問題ないですが、10年の実務経験が「1日でも不足していれば不許可」になります。
さらに会社が倒産していて在職証明書をもらえないといった場合にも証明ができないのでいくら事実であったとしても認めてもらえません。
中華料理のコックさん(料理人)は注意
中華料理店の場合は、コースメニューがある高級店のようなレストランでは問題はないですが、ラーメン店では中々難しいです。
ラーメンも中華料理ではありますが、日本文化として進化したものでもありますのでラーメン店で就労ビザを取るのは厳しいです。
コースメニューがない中華料理店では、席数が大切になってきます。
あまり小さい店舗であると専門店として認められない可能性があります。
タイ料理だけ違うポイントとは?
コックさん(料理人)の就労ビザは原則10年以上の実務経験が必要ですが、タイ料理人だけは5年以上の実務経験で足ります。
これはEPA協定によってタイ国との間で定められているもので、下記が条件となります。
タイ料理人の要件
- 5年以上の実務経験があること
- タイ労働省が発行する「初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書」の発行を受けている者
- 申請を行う日の直近1年間においてタイでタイ料理人として妥当な報酬を受けていた者
タイ料理人の場合は5年以上の実務経験で足りますが、「直近1年間勤務していること」に加えて「タイ労働省の技能水準初級以上が必要」になります。
居酒屋や日本料理店では外国人はコックさんとして働けない?
日本では主流の居酒屋や日本料理などでは技能ビザの取得は難しいです。
居酒屋は専門店ではなく、日本料理は日本独自のものであり外国において考案されたものではないという判断になります。
ただし日本料理については、農林水産省が出している「日本料理海外普及人材育成事業」において認められる可能性はあります。
その他の方法としては、2019年4月に新設された「特定技能」ビザです。
特定技能であれば居酒屋や日本料理店でもコックさん(料理人)として就労ビザを取れる可能性があります。