海外在住の外国人がリモートワークで働く場合でも就労ビザは必要か?税金関係についても解説

「リモートワーク」は、新型コロナウイルスの影響で一気に普及し、「海外在住の外国人をリモートワークで雇用する」機会も多くなっています。
しかし、「外国人を雇う場合は就労ビザが必要と聞いたことがあるが、海外在住の場合も就労ビザの取得が必要なのか?」という疑問が出てくるかと思います。
原則として海外在住のままリモートワークする場合は、日本の就労ビザの取得は不要ですが、日本に出張などで来る可能性がある場合は、雇用形態によって変わってきますので注意が必要です。
そこで今回は、海外在住の外国人をリモートワークで雇用する場合の就労ビザのルールや税金関係、社会保険関係について解説していきたいと思います。
目次
監修者

-
行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
海外在住の外国人はリモートワークでも就労ビザは必要か?
海外在住の外国人が日本企業と契約して働くのに就労ビザが必要かどうかは、「海外在住」か「日本在住」かで異なってきます。
日本の就労ビザは、「日本国内で報酬を得る活動をする外国人」が取得するものなので、海外に住みながらリモートワークで仕事をする場合は、日本の就労ビザ取得は基本的に不要になります。
ただし、海外在住でリモートワークだとしても、たまに日本に出張で来る可能性がある場合は、雇用形態によって、日本にくる際に必要なビザが異なってきます。
日本に出張に来るとしても就労ビザが必要な場合とは?
出張で日本に数日だけ来るとしても、海外在住の外国人と「雇用契約」を締結している場合には、就労ビザを取得が必要となります。
理由としては、雇用契約を締結していると言うことは社員となるので、社員が日本で活動する内容はすべて報酬内での活動と判断されるからになります。
そのため、打ち合わせや納品サポートなど、実際に日本で行う作業に対して、別途報酬を出さないとしても、社員である以上は就労ビザを取得した後でないと日本に来ることができません。
なお必要な就労ビザは、外国人が行っている業務内容によって変わってきますが、一般的な就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」というものになります。
技術・人文知識・国際業務ビザは、ホワイトカラーの仕事で取得するもので、エンジニアや営業、コンサルタント、マーケッター、デザイナー、経理・人事などの仕事はすべて、技術・人文知識・国際業務ビザとなります。
出張で短期滞在ビザを取得するケースは?
一方、雇用契約ではなく、業務委託契約などで外部の取引先という契約であれば、出張などで日本に来る際には、短期滞在ビザの取得が必要となります。
ただし、アメリカやイギリス、韓国など、短期滞在ビザの取得が免除されている国(ビザ免除国)もあり、そういった国の方であれば、出張で日本に来る際に、短期滞在ビザの取得も不要となります。
ビザ免除国の一覧はこちら
なお、短期滞在ビザの種類は複数ありますが、出張の場合は「短期商用」という種類の短期滞在ビザを取得する必要があります。
そして短期滞在ビザは、1回最大で90日の滞在が可能で、原則1年間に最大180日まで使用することができます。
報酬を得る場合は「就労ビザ」が必要になる
ただし短期滞在ビザで90日以内の滞在であっても、日本国内で行う活動に対して報酬が出る場合は、「就労ビザの取得が必要」になります。
例えば、ワークショップなどを行い、その活動に対して報酬を支払われるのであれば、業務委託契約だとしても、就労ビザの取得が必要となります。
就労ビザの取得には通常、3か月以上かかるため、計画的に申請を行わないと来日までに間に合わなくなってしまいますので、スケジュールにはご注意ください。
海外在住の外国人の税金の支払いはどうなる?
海外在住の外国人であれば、税金に関しても役員報酬以外であれば「給与の源泉徴収は不要」になります。
これはたとえ、海外在住の外国人リモートワーカーが日本国内の銀行口座を持っており、その口座に給与を振り込む場合でも、海外在住の外国人リモートワーカーの場合は、源泉徴収は不要となります。
※課税は海外の現地で行う形になります。
ただし過去日本に滞在したことがあり、今も日本に住民票が残っている場合(例:永住者など)は、海外でリモートワークをしていたとしても日本の居住者とみなされてしまいますので注意が必要です。
この場合は、海外で仕事をしていたとしても日本企業から支払われる給与は課税対象となり、源泉徴収が必要になります。
役員の場合は、課税対象になる
海外在住の外国人リモートワーカーの方が「役員の場合」は、役員報酬で給与を支払いますが、この場合は日本国内にいなかったとしても、「課税対象」になります。
課税は国内在住者と同じく、原則20.42%の源泉所得税が課税されます。
海外在住の外国人でも社会保険は加入するのか?
海外在住の外国人でリモートワークであったとしても、下記条件に当てはまる場合は、社会保険の加入が必要になります。
海外在住のリモートワーカーでも社会保険への加入が必須になる場合
- 日本法人と雇用契約を結んでいる
- 日本法人から指揮命令を受けて仕事をしている
- 日本法人から給与が支払われている
海外在住の外国人は、基礎年金番号やマイナンバーを持っていません。
そのため、パスポートの写真部分のコピー(日本語訳も必要)と、日本法人との雇用契約書・入社書類などで手続きをすることになります。
健康保険はどう使うのか?
風邪で海外の病院に行った際には、まず全額実費で支払い、その後、海外療養費の制度を使って還付請求をする流れになります。
ただし、還付される金額は日本国内の療養費を基準に算定されるため、現地で支払った金額の7割(3割負担ではない)が還付される訳ではないので、トラブル防止のために事前に外国人本人に説明しておく必要があります。
厚生年金も加入義務がある
上記条件に当てはまる場合は、海外在住の外国人でリモートワークだとしても厚生年金の加入も必要になります。
海外ですでに年金に加入している場合は、「二重で加入」することになります。
しかし、日本と社会保障協定を結んでいる国の場合は、日本の社会保険への加入を免除できます。
国ごとに対応はことなるので、都度確認するようにしてください。
社会保障協定を締結している国
ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、イタリア、スウェーデン、フィンランド
脱退一時金制度について
脱退一時金制度とは、外国人労働者が、年金受給資格期間である10年を満たさずに退職や帰国する場合、すでに納めている年金保険料の一部を返金してもらえる制度です。
対象となる外国人労働者が、日本に住所を保有しなくなった日から2年以内に請求をすることで支給を受けることができます。
労働保険(労災保険と雇用保険)について
「雇用保険」「労災保険」についても、社会保険と同じ条件で雇用保険・労災保険の加入が必要になります。
海外在住の外国人リモートワーカーは、の雇用保険資格取得手続きのために必要な在留カード(就労ビザ)を持っていないため、雇用契約書とパスポートの写真部分のコピー等で手続きを行っていきます。
労働保険(労災保険と雇用保険)の加入が必要な場合
- 日本法人と雇用契約を結んでいる
- 日本法人から指揮命令を受けて仕事をしている
- 日本法人から給与が支払われている
記事公開日: