技術・人文知識・国際業務(就労ビザ)の取得条件と流れについて
「日本の就労ビザはどう取得するの?」というご質問をよくいただきます。
日本の就労ビザは、大きく分けると「学歴」「仕事内容」の2つの要件があります。
また就労ビザとは通称名となり、日本の就労ビザは全部で19種類あり、その中で一般的な就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」と言い、今回は技術・人文知識・国際業務の就労ビザについて解説していきます。
目次
技術・人文知識・国際業務とは?
「技術・人文知識・国際業務」とは、日本の一般的な就労ビザのことで、正式には在留資格と言います。
技術・人文知識・国際業務は長いので、通称で「技人国ビザ(ぎじんこくビザ)」と呼ばれているので、この記事でも技人国ビザと表記します。
技人国ビザに当てはまる職種は、「エンジニア(理工系技術者、IT技術者)」「営業」「マーケティング」「外国語教師」「通訳翻訳者」「デザイナー」などのホワイトカラーの仕事になります。
ちなみに入管法上の表記は下記になっています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う、理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術者若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
出典:出入国在留管理庁 |
まとめると、外国人が大学などで学んだ知識や母国の文化や言語と関連性がある仕事であれば、技人国ビザが認められることになります。
専門知識が不要な仕事(単純作業・反復作業など)や現場労働の仕事、外国人の学歴と関連性がない仕事の場合は、技人国ビザには当てはまりません。
技術・人文知識・国際業務で認められる仕事内容は?
上記で、技人国ビザに当てはまる職種は、ホワイトカラーの仕事とお伝えしましたが、具体的にどのような仕事内容なのかも細かく確認していきましょう。
「技術」の仕事
「技術」とは、エンジニアのことを指します。
「システムエンジニア」「プログラマー」「機械工学の技術者」「情報セキュリティー」などの仕事をする場合に該当します。
「人文知識」の仕事
人文知識とは、大学等で文系科(経済学部・経営学部・言語学・社会学・文学など)の科目を専攻して、その知識を活かして行う仕事をする場合に該当します。
「営業職」「マーケティング」「コンサルティング」「企画」「デザイン」「設計」「映像制作」「労務管理」「経理」「人事」「法務」「総務」などが該当します。
「国際業務」の仕事
国際業務とは、「外国人の特有の思考や感受性」が活かせる仕事をする場合に該当します。
「語学教師」「翻訳通訳者」「広報・宣伝」「海外取引業務」「服飾デザイン」「インテリアデザイン」「商品開発」などが該当します。
認められてない仕事内容は?
仕事内容は、「専門的知識」を活用できる仕事である必要があります。
そして、技人国ビザでは現場労働(単純労働・反復作業)の仕事は認められていません。
※現場労働の場合には、仮に大学を卒業していても認められていません。
認められていない内容
- 単純作業(反復的に行なう仕事)
ex.工場のライン作業など - 専門的知識を必要としない作業
ex.レジ打ち、接客、調理補助、ベッドメイキングなど - 現場で行う作業
ex.建設現場の作業、マッサージ、警備員、配送業務など
技術・人文知識・国際業務の取得条件は?
技人国ビザでできる仕事内容に該当する場合、続いて確認するのが外国人本人の要件です。
技人国ビザでは、外国人に対して「学歴」または「実務経験」のどちらかを求めています。
通常は「学歴」で取得することがほとんどで、学歴がない場合には「実務経験」を証明できるか確認していきます。
学歴について
学歴は、「短期大学以上を卒業して、学士などの学位を取得していること」が求められており、専門学校については、「日本の専門学校」のみ認められており、海外の専門学校は認められていないので注意してください。
また大学という名前がついていても、「学位」がもらえない学校もあり、学位がもらえないと技人国ビザの学歴要件に該当しないと判断されてしまう場合もあります。
なお学歴の証明については、卒業証明書(または卒業証書)を提出して証明しますので、卒業証明書がない人は学校から再度取得する必要があります。
卒業証明書を準備できない場合は、本当に大学等を卒業していても技人国ビザは認められなくなってしまいます。
実務経験について
上記に該当する学歴がない場合は、実務経験を証明するという方法もあります。
※学歴に該当がある人は、実務経験の証明は不要です。
実務経験とは、社会人経験のことではなく、日本で行う仕事内容と同じ仕事の実務経験年数を指します。
仕事内容が違う実務経験年数を証明しても技人国ビザは認められませんのでご注意ください。
実務経験で必要な年数
- 「技術・人文知識」の仕事は10年以上の実務経験
- 「国際業務」の仕事は3年以上の実務経験
なお、実務経験は正社員や契約社員での経験のみ含めることができ、アルバイトやパートは含まれませんのでご注意ください。
さらに実務経験は、過去の会社などから「在職証明書」を取得して証明することになるので、前の会社と関係性が悪くて取得できないや、倒産してしまって取得できない場合は、本当に実績があったとしても実務経験として認めてもらうことはできません。
そして、在職証明書をもらう際も、〇年〇月〇日~〇年〇月〇日まで勤務し、何の仕事をしていたのかを具体的に記載した在職証明書である必要があります。
ここに記載ある仕事内容が日本と同じ仕事内容であるかをチェックしており、もし勤めている期間中に部署移動などがあり、複数の仕事をしていた場合は、行っていた仕事内容ごとにその期間を記載している必要があります。
企業側の条件について
技人国ビザを取得するには、企業側にも条件があります。
企業側の条件
- 給与額が日本人と同等以上の金額であること
- 経営状況が安定していること(債務超過の場合は注意)
給与額が日本人と同等以上の金額であること
技人国ビザを取得する場合には、外国人の給与が「日本人を雇用した場合と同等額の給与水準」であることが必要になります。
外国人にも労働基準法は適用されるので、同一労働同一賃金である必要があり、同ポジションで同スキルの日本人を雇用する場合と比較して、外国人という理由だけで不当に給与を低くすることはできません。
給与に差をつけてはいけない具体例
- 日本語ができないので、日本人よりも給与を下げる
- 外国人採用は初めてなので、様子見で日本人よりも給与を下げる
給与額で審査に引っかかる例としては、ネット求人サイト等で募集をかけている場合です。
現在募集していなくても、過去に募集したことがある場合、ネット上には過去の求人が残っている場合が多いです。
その求人内容が外国人と同ポジションの求人の場合で、外国人の給与がネット求人サイトより安い場合には、不当に給与を下げているのではと疑われてしまうので、その理由を説明する必要があります。
経営状況が安定していること(債務超過の場合は注意)
外国人の雇用する場合には、外国人に対して給与の未払いなどが起きないように、会社がしっかり給与を支払えるだけの体力があるかを審査されます。
審査で引っかかる可能性があるケースは「債務超過」(負債が資産を上回っている状態)になっている場合です。
「債務超過=不許可」ではないですが、レバレッジをかけて設備投資などに力を入れている場合もあると思いますので、その場合は、入管の審査官にわかるように理由書を作成して説明するようにしてください。
場合によっては、事業計画書を作成して提出することもあります。
他社で働いている外国人を転職で採用する場合
すでに技人国ビザを持って他社で働いている外国人を採用する場合は、外国人が持っている技人国ビザの在留カードに記載されている在留期限があとどのくらい残っているのかによって行うべき対応が変わってきます。
転職の外国人の場合の対応
- 在留期限の残りが4~5か月ほどであれば「技人国ビザの更新申請」の準備をする
- 在留期限が6ヶ月以上残っている場合は「就労資格証明書」の申請を検討する
技人国ビザの仕事内容に該当し、外国人の学歴とも関連性がある場合は、自由に転職ができます。
転職する前には何か手続きをする必要はなく、転職後に「所属機関等に関する届出」を外国人が入管に届け出れば問題ありません。(届出には審査がなく、提出するのみです)
そして技人国ビザの更新手続きは、在留期限の3ヶ月前からしか申請ができないので、在留期限がまだ残っている場合は、所属機関等に関する届出以外に絶対にしないといけないことはありません。
しかし、転職後の仕事内容が本当に問題ない仕事かどうか確認する方法がないので、後から不法就労に該当してしまう内容だったということも、少なからず出てきてしまいます。
そのために任意の申請になりますが、「就労資格証明書」という転職後の仕事内容に問題がないか確認する申請があり、在留期限が残っている場合はこの申請をしておくと技人国ビザの更新時する時も安心です。
就労資格証明書の審査には2~3ヶ月ほどかかるため、在留期限が4~5ヶ月ほどしか残っていない場合には、就労資格証明書ではなく、技人国ビザの更新申請(在留期限の3ヶ月前から可能)を進めるようにしてください。
技術・人文知識・国際業務の申請の流れ
技人国ビザを申請する流れは下記になります。
技人国ビザ申請の流れ
- 技人国ビザでできる仕事内容かどうかを確認する
- 外国人の学歴または実務経験年数を確認する
- 雇用契約を締結する
- 技人国ビザの必要書類を準備する
- 入管に申請する
- 許可
- 在留カードを受け取る(就労開始)
※外国人が海外在住の場合には、認定証明書を受け取る以下は、海外在住の場合のみ - 認定証明書の原本を外国人に送る
※電子版の場合は、メール転送のみでOK - 海外にある日本領事館(大使館)にて外国人が査証(ビザ)申請をする
- 許可後、来日
技人国ビザの申請では、労働条件(給与額や休日など)を審査することになるので、雇用開始前ですが、雇用契約書の締結が必要になります。
カテゴリー1と2の企業である上場企業や法定調書合計表に記載されている源泉徴収税額が1000万円以上の企業については、雇用契約書の提出は不要なので、給与額を申請書に記載できれば問題ありません。
それ以外の中小企業や個人事業主の場合には、雇用契約書(または労働条件通知書)の提出が必要となります。
ただしすでに技人国ビザを持っている外国人以外の場合は、技人国ビザの取得後に就労可能となるため、雇用契約書の締結の際には、雇用開始日を3ヶ月ほど先の日付けで締結するか、技人国ビザ取得後からといった表記にすることをおすすめします。
審査期間はどのくらい?
技人国ビザの審査期間は年々長くなっており、2024年時点での東京入管では、2~3ヶ月程度かかっています。
ただし外国人が海外在住の場合には、審査が4ヶ月ほどかかる場合もあるので、採用が決まった際には早めに申請をすることをおすすめします。
審査を早める方法としては、審査官が見てすぐわかるように申請書類をわかりやすくすることです。
例えば、外国語の書類には日本語訳をつけたり、外国人に行ってもらう仕事内容について細かく説明した理由書を作成したり、会社の経営状況について任意で説明したりするのが有効的です。
審査中に進捗状況を入管に確認しても、「審査中か審査が終わったか」のどちらかしか教えてもらえず、どのくらいで審査が終わるかは教えてもらえないので待つしかない状況となります。