海外在住の外国人が会社設立するためのポイントと流れについて
法改正により、「海外在住」の外国人でも日本で会社設立できるようになりました。
ただし海外在住の場合、会社設立するのに必要な日本の銀行口座がなかったり、オフィスの契約などの様々な問題がでてきます。
そのため一般的に海外在住の外国人の場合には、日本在住の友人(日本人または永住者)に協力者になってもらい、一緒に会社設立を進めることが多いです。
そこで今回は、海外在住の外国人が日本で会社設立するためのポイントと手続きの流れ、そして協力者に行ってもらうことについてご説明していきます。
目次
日本で設立できる会社の種類は?
日本で設立できる会社は全部で4つありますが、外国人の方で説明することが多いのが「株式会社」「合同会社」の2つです。
その他に合資会社・合名会社もございますが、こちらは日本人でも設立することが少ないので、今回は説明を省略させていただきます。
なお、将来的にビザを取得したいと思っている場合でも、株式会社・合同会社どちらでもビザ取得はできますのでご安心ください。
株式会社のメリット・デメリット
最も有名で設立件数が多いのが「株式会社」です。
株式会社の特徴は、出資者と経営者が異なることで、出資者がそのまま経営者になることもできれば、出資者だけして経営は別の人にしてもらうことも可能な会社となっています。
そして株式会社を設立するメリットは「社会的信用の高さ」「資金調達がしやすい」「株主が有限責任」の3つです。
社会的信用は、日本の約7割の会社は株式会社であり、他の企業と取引をする際に株式会社は信用性が高いため、取引しやすい傾向にあります。
資金調達については、株式会社が株式を発行して投資家などから資金調達できる法人であり、社会的信用も高いので、金融機関からの融資も受けやすい傾向にあります。
最後に株主は出資額を上限として責任を負うため、万が一倒産してしまっても、出資額を超えて責任を負うことはありません。
一方デメリットは、いくつかありますが、設立費用が20万円以上かかる点で、専門家に依頼すると30万円ほどはかかってしまいます。
合同会社のメリット・デメリット
合同会社とは、出資者が必ず経営者になる必要があり、出資した人はすべて経営に関わることになるので、会社の意思決定を素早くすることができ、経営の自由度が高い会社になっています。
また合同会社は株式会社とは異なり、株式会社の役員のことを「社員」と呼びますので、合同会社の社員は役員のことを指し、従業員とは違います。
そして合同会社を設立するメリットとしては、「設立費用が安い」「出資した金額以上の責任は負わない」の2つになります。
設立費用は6万円ほどで設立ができ、専門家に依頼しても10万円~14万円ほどで設立できることが多いです。
そして合同会社は、出資者が経営者になるとお伝えしましたが、万が一倒産してしまっても、出資した金額以上の責任を負うことがないのもメリットになります。
一方デメリットとしては、株式会社と比べると設立件数が少ないことから社会的信用が低くなってしまう点と、株式発行による資金調達ができないため、資金調達が大変となる点です。
さらに将来的に株式市場に上場したい場合には、合同会社のままでは上場はできないので、株式会社に組織変更することが必要となってきます。
一般社団法人とは?
一般社団法人とは、利益を目的としない非営利の法人のことを言いますが、非営利というのは、ボランティアという意味ではなく、構成員に剰余金を分配しない法人ということを言います。
そのため、株式会社のように利益を上げることもできますし、役員報酬や給料の支払いもすることができです。
一般社団法人は外国人でも設立はできますが、社員が2名以上いないと設立ができなく、経営管理ビザの場合、社員2名の業務内容が明確に分かれていることや、仕事のボリュームが十分にあるかなどが審査されますので、一般社団法人で経営管理ビザを申請する場合は注意が必要です。
海外在住で会社設立をするためのポイントは?
海外在住の外国人が日本で会社設立をする際、日本にいないことで様々な問題が発生します。
具体的には、会社設立するため必要な資本金の振り込み先としての銀行口座、オフィスとして登録するためのオフィスの契約、会社を登録する登記手続き、ビザ申請するのであればビザの申請をするための法定代理人などがあります。
海外在住の外国人が会社設立する際のポイント
- 資本金を振り込む銀行口座はあるか?
- 会社住所(オフィス)はどこにするのか?
- 定款認証は誰が行うのか?
- 登記手続きは誰が行うのか?
- ビザ申請する場合は、誰が法定代理人になるのか?
海外在住の外国人でも、短期滞在ビザで日本に来日してすべてを自身で行うことも不可能ではないですが、難しい日本語や法律の知識が必要になるため、1人ですべてを行うのはかなり大変です。
そのため、一般的なのは専門家に依頼しつつ、日本在住の日本人または就労制限がない外国人(永住者など)の友人に協力者として、手伝ってもらうことが一般的です。
会社を設立するパターンについて
海外在住の外国人が日本で会社を設立するパターンは3つありますが、多くの場合は日本在住の友人などに協力者になってもらう方法です。
海外在住の外国人の会社設立する3パターン
- 日本在住の友人(日本人や永住者など)に協力者となってもらう
- 短期滞在で来日して、すべて自分で会社設立手続きする
- スタートアップビザを使用して来日後、会社設立手続きを進める
スタートアップビザという、日本で起業準備のためのビザがあり、スタートアップビザで来日し、その後に会社設立するという方法もありますが、スタートアップビザは会社設立後に経営管理ビザを取得することを想定しているものなので、経営管理ビザの要件もスタートアップビザの申請時に確認されます。
そして、事業計画書なども精度が高いものが求められるので、とりあえず会社を作りたいと考えている場合には、スタートアップビザの取得は難しいです。
協力者になれる人・協力者にしてもらうことは?
協力者とは、日本で会社設立する際に手伝ってもらう人のことを言い、日本在住で日本人または就労制限がない永住者の外国人しか協力者にはなれません。
協力者には、お金のやりとりも含まれるため、友人や過去にお世話になった方など信頼できる人にお願いする必要があります。
協力者になれる人の条件
- 日本に住所がある「日本人」または「永住者等の就労制限がない外国人」
- 日本に銀行口座を持っている
- 会社設立時に共同代表になれる人(会社設立してビザ取得後に退任)
協力者には、会社設立する際に共同代表として代表取締役に入ってもらい、会社設立の手続きが完了し、ビザの申請も必要な場合は、ビザの許可がおりて来日できた後に、協力者には共同代表を辞任してもらいます。
共同代表になってもらう理由としては、新しく設立する会社の役員がすべて海外在住だと、会社設立の手続き・ビザの手続きを行うために、何回か短期滞在ビザで来日してもらう必要があるため、日本在住の友人(協力者)に共同代表となってもらうことで、来日せずに手続きを進めることができるようになるからになります。
協力者にしてもらうこと
協力者になってもらう人には、共同代表になってもらうほか、書類の取得やオフィスの契約時に日本在住の役員がいないと契約できない不動産も多いので、契約時には協力者に不動産会社との契約書にサインしてもらうことになります。
なお専門家に会社設立の依頼をする場合は、書類作成などの業務は専門家に行ってもらうことが可能です。
協力者に協力してもらうことの内容
- 新設会社の共同代表になってもらう
- 資本金の振込先として、協力者の日本の銀行口座を使う
- 日本国内のオフィスの契約サポート
- 印鑑証明書の取得
- 法人印の作成
- 定款作成・定款認証手続き
- 登記手続き
- 税務署への開業届の提出
- 経営管理ビザ(ビジネスビザ)の申請の際に法定代理人になってもらう
資本金の振り込みが認められている銀行口座は、「日本の銀行の日本にある本店・支店」「日本の銀行の海外支店」「外国の銀行の日本にある支店(認可を受けているもの)」です。
すでに口座を持っていれば問題ないですが、これから口座開設する場合、日本になる銀行の口座は日本に住民票がないと口座開設できず、日本の銀行の海外支店については、現在は個人で新規開設はできなくなっているので、協力者の口座を資本金振り込み口座として使用し、資本金の額を振り込むしかないです。
そして、会社設立後に経営管理ビザを取得したい場合は、海外在住でビザ申請する場合は、関係者の誰かが日本にいないと申請できないため、協力者に法定代理人として申請書にサインしていただき、ビザ申請することになります。
上記でご説明させていただきました通り、少なからず協力者に人には何かしら手続きしてもらう必要が出てきてしまいます。
日本での会社設立の流れについて
会社設立の流れについては、「日本に協力者がいるパターン」「協力者がいないパターン」「スタートアップビザを申請するパターン」の3つに分けてご説明させていただきます。
ここでご説明させていただく会社設立の流れは、最もベーシックなやり方になりますので、状況によって流れは変わります。
そして今回は、会社設立後に経家管理ビザ(ビジネスビザ)を取得することを前提としての説明となるので、会社設立のみしたい場合は、若干内容が変わります。
手続きの流れ(協力者がいるパターン)
協力者がいる場合の流れ
- 会社の基本事項を決める
「会社名」「会社所在地」「事業目的」「資本金額」「会社設立希望日」等を決める。 - 会社住所を決める
オフィスを契約する際に、会社設立後に「法人名義に変更したい」旨を先に不動産会社に伝える。
日本に住所がない外国人だけでは、事務所契約ができないところが多いので、日本在住の協力者のサポートが必要になる。
シェアオフィスなどであれば、海外在住の外国人でも契約できるオフィスもある。
※最初の契約時は個人名義で大丈夫。
※持ち家等でも登記は可能ですが、経営管理ビザ申請前に変更登記が必要になる。(登録免許税:3~6万円) - 定款の作成
会社の基本事項を落とし込んで、定款を作成する。 - 定款の公証
公証役場で作成した定款を公証してもらう。(合同会社は不要)
公証された定款は、直接公証役場に取りに行く必要がある。 - 資本金の振込み
発起人または設立時取締役(委任状必要)の口座に資本金を振込む。
また、日本円以外で資本金の払い込みをする場合は、振込があった日の為替相場(金額を為替に基づき、日本円に換算)を記載する形になる。
(例:〇年〇月〇日1ドル=〇〇円)振込み口座として認められている口座は下記。
・日本にある日本の銀行(例:三菱UFJ銀行の新宿支店)
・日本にある海外の銀行の支店(例:中国銀行の東京支店)
・海外にある日本の銀行の支店(例:三菱UFJ銀行の中国支店)
※ただし、海外にある日本の銀行の支店は、今から個人では作れないので注意。 - 登記申請を行う
管轄の法務局に登記申請書等を提出
郵送でも可能ではありますが、不備等があった場合には電話があるので、日本の電話番号が必要になってくる。(協力者のサポートが必要) - 登記後、法人設立の届出を行う
「税務署」に提出する法人設立の届けの控え(税務署印があるもの)は、経営管理ビザ申請時に必要になる。
その他、「都道府県県税事務所」「社会保険事務所」「労働基準監督署」「公共職業安定所」等も必要になってきます。
日本在住の協力者がいないケース
日本在住の協力者がいない場合は、「日本に銀行口座を持っているか」で、難易度が変わってきます。
日本の銀行口座を持っているケースとしては、過去に日本に留学した経験があり、その時に日本の銀行口座を開設している場合です。
日本に銀行口座がない場合は、第三者(法人を含む)の口座を使用して、資本金の振込を行って会社設立を行うことなります。(平成29年3月17日民商第41号通達)
※協力者がいないので、口座を貸してくれるサービスなどに依頼することも考えられますが、資本金を振り込みことになるので、契約時には十分注意してください。
協力者がいない場合の流れ
- 会社の基本事項を決める
「会社名」「会社所在地」「事業目的」「資本金」「会社設立希望日」等を決める。 - 会社の住所を決める
オフィスを契約する際に、会社設立後に「法人名義に変更したい」旨を先に不動産会社に伝えておく。
日本に住所がないとオフィスを貸してくれない不動産屋は多いですが、シェアオフィスであれば、割と柔軟に対応してくれるところも多いのでいくつか探してみてください。
※最初の契約時は個人名義で大丈夫です。
※持ち家等でも登記は可能だが経営管理ビザ申請前に変更登記が必要になります。(登録免許税:3~6万円) - 定款の作成
会社の基本事項を落とし込んで、定款を作成していく。
- 定款の公証
公証役場で作成した定款を公証してもらう。(合同会社は不要)
公証された定款は、直接公証役場に取りに行く必要があるので、何度か日本に来日する必要がある。 - 資本金の振込み
日本に協力者がいない場合の一番の問題点となります。
委任状を使用し第三者の口座を資本金の振込み口座としますが、経営管理ビザの際に見せ金を疑われる可能性もあるため、振込人名義がわかることが必要です。
合わせて、第三者の口座使用する場合には、事前に法務局に確認をとるようにしてください。
また、日本円以外で資本金の払い込みの場合は、振込があった日の為替相場(金額を為替に基づき、日本円に換算)を記載する形になります。
(例:〇年〇月〇日1ドル=〇〇円)振込み口座として認められている口座は下記になります。
・日本にある日本の銀行(例:三菱UFJ銀行の新宿支店)
・日本にある海外の銀行の支店(例:中国銀行の東京支店)
・海外にある日本の銀行の支店(例:三菱UFJ銀行の中国支店)
※ただし、海外にある日本の銀行の支店は、今から個人では作れないので注意。 - 登記申請を行う
管轄の法務局に登記申請書等を提出する。
郵送でも可能ではありますが、不備等があった場合には電話があるので、日本の電話番号が必要になってくる。 - 登記後、法人設立の届出を行う
「税務署」に提出する法人設立の届けの控え(税務署印があるもの)は、経営管理ビザ申請時に必要になる。
その他、「都道府県県税事務所」「社会保険事務所」「労働基準監督署」「公共職業安定所」等も必要になってくる。
スタートアップビザで日本に来日後、会社設立手続きを進める方法
スタートアップビザとは、「海外在住」の外国人が日本での起業準備のためにもらえる6ヶ月のビザになります。
起業準備をするためのビザなので、日本に来てからオフィスや市場調査をして事業内容を決めたいと思う人も多いと思いますが、スタートアップビザを取得するためには、行う事業計画が決まっていて実現可能性があるのか、オフィスも候補を出すなど、起業準備のためのビザではありますが、ある程度詳細が決まっていないと取得ができません。
そしてスタートアップビザは、会社設立後に経営管理ビザを取得して、日本で会社経営をすることを前提としているので、事業計画の実現可能性やオフィスについても経営管理ビザの要件で判断されるため、簡単に取れるビザではありません。
スタートアップビザの手続きの流れは申請する都道府県によって変わりますが、下記は東京の場合の一般的な流れになります。
スタートアップビザ申請の流れ(東京の場合)
- ビジネスコンシェルジュ東京に連絡をする
申請する都道府県によってスタートアップビザの事務局が変わる。 - 事業計画書・オフィスの候補など必要書類を提出する
事前にビジネスコンシェルジュ東京において、経営管理ビザの要件を満たしているか確認される。 - 東京都に確認申請をする
東京都で面談があります。 - 創業活動確認証明書を発行してもらう
東京都の審査が完了すると、創業活動確認証明書が発行される。(審査期間:約2週間程度) - 入管にてスタートアップビザの申請をする
スタートアップビザは通称名となるため、正式には経営・管理ビザの6ヶ月の申請となる。(審査期間:2~3ヶ月) - 許可後、認定証明書(COE)を受け取る
審査が完了し許可されると、認定証明書(Certificate of Eligibility)が発行される。 - 海外にある日本領事館(大使館)で手続き
認定証明書(COE)を使用し、海外にある日本領事館(大使館)で査証(VISA)の手続きをして来日する。(約1週間)
また、スタートアップビザを取得できて日本に来れたとしても、スタートアップビザはあくまでも「起業準備のため」なので、スタートアップビザの期間中は報酬を得る活動はできません。
行える活動としては、「銀行口座を作る」「オフィスを探す」「会社設立の登記手続き」「その他打ち合わせ」などです。
さいごに
海外在住の外国人が日本で会社設立することは、日本在住の協力者がいる方がスムーズに行えます。
協力者がいない場合でも方法はいくつかありますが、時間とお金が多くかかってしまいますので、まずは日本在住で協力してもらえる人がいないか探してみてください。
また、会社を設立した後に会社情報を変更しようとすると、国に支払う変更手数料が数万円単位でかかってきてしまうのと、ビザの申請時には、なぜ変更したのかの理由や証拠書類など求められる可能性があり、申請が複雑になるので、日本での会社設立を考えている人は、まず専門家に相談するのが良いと思います。
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