就労ビザから永住申請する要件と必要書類について
就労ビザの外国人が永住申請するためには、日本に引き続き10年以上在留し、そのうち5年間は就労資格の在留資格(ビザ)で働いていることが必要です。
その他にも、永住権は「収入額」「納税状況」「社会保険の支払い」「出国の頻度」「犯罪歴」など厳しい基準で審査されます。
証明書類は、最大で過去5年分の書類を提出することになるので、5年前の情報を今から帰ることはできないので、永住申請を考えている場合には早いうちから要件を理解しておく必要があります。
そこで今回は、永住申請をするための要件と必要書類についてご説明していきます。
目次
永住申請のメリットとは?
日本の永住権は、法務大臣に対して「永住許可申請」をして許可されると取得できる在留資格(ビザ)になります。
そのため、永住権はいきなり取れるものではなく、日本に長く住んでいる外国人や基準の収入額を継続して稼いでおり、納税もしっかり行っている外国人にのみ許可されます。
永住申請のメリット
- 在留期間が無期限になる
- 就労活動に制限がない
- 配偶者や子どもも永住権を取得しやすくなる
- ローンが組みやすくなる
在留期間が無期限になる
永住権を取得できると、在留期間が無期限となるため、将来ずっと日本にいることができるようになります。
日本のビザを取得するためには、留学や就労など、目的がないとビザが取得できなく、ほとんどのビザは、1年・3年・5年のいずれかの年数のビザなので、在留期限が来る前に更新をしないといけません。
しかし、就労ビザの場合は仕事を辞めてしまうと、日本のビザがなくなってしまうため、将来ずっと日本に住むということは難しくなってしまいます。
ちなみに永住権を取得できると、在留期間が無期限にはなりますが在留カードの有効期間はあるため、7年に1度は在留カードの有効期間の更新申請は行う必要はあります。
この手続きは申請書と証明書類を提出するだけで、審査はなく当日新しい在留カードを発行してもらうことができます。
就労活動に制限がない
永住権を取得できると就労制限がなくなるので、日本人と同じように好きな仕事をすることができます。
外国人が日本で働くには就労ビザが必要で、就労ビザには在留期間の制限があるので、在留期限前に更新申請をしないといけなく、就労ビザは1年・3年・5年のいずれかで、最長の就労ビザでも5年後には更新申請をする必要がでてきます。
また就労ビザでは、働いていることが条件で取得できるビザなので、会社を辞めてしまうと更新できなくなってしまいますが、永住権では働かなくても日本にいることができます。
配偶者や子どもも永住権を取得しやすくなる
永住権を取得できると、永住者の配偶者と子どもは「永住者の配偶者等」というビザが取得できます。
「永住者の配偶者等」ビザは、日本人の配偶者等と同じ扱いで、永住申請するための居住年数の要件が10年から3年に短縮されるなど、永住権を取得しやすくなります。
永住者の配偶者等ビザも、就労制限はないビザにはなりますが、永住者が日本に住んでいるので一緒に住めるビザになり在留期間もあるので、永住権を取得しないと日本に永住することはできません。
ローンが組みやすくなる
永住権があれば在留期間が無期限なので、収入額にもよりますが、長い年数のローンを組むことができるようになります。
就労ビザだと最大でも5年のビザなので、最大でも5年間しかローンを組むことができず、住宅ローンなどは、5年以上のローンが一般的なので、結果家を買うのが難しくなってしまいます。
永住申請の要件は?
永住申請は、就労ビザと比べるとかなり厳しく審査されます。
永住申請の審査は大きく分けると、「独立生計要件」「素行善良要件」「国益適合要件」の3つの審査になり、それぞれにおいて法務大臣に最終決定権があります。
ここでは法務省が公開しているガイドラインに沿って、申請要件を見ていきましょう。
永住申請の要件
- 在留資格(ビザ)が3年または5年であること
- 日本に引き続き10年住んでおり、うち就労ビザで5年以上働いていること
- 安定した収入があること
- 公的義務を履行していること
- 素行が善良であるか
- 身元保証人がいること
今のビザが3年または5年であること
ガイドラインでは、永住申請の許可条件として、今のビザが「最長の在留期間」と表記されていますが、3年または5年の就労ビザを持っていれば、条件クリアとなります。
1年の就労ビザの場合だと、他の要件をすべてクリアしていても永住申請は許可にならないので、まずは3年の就労ビザがとれるように更新申請をすることが必要です。
日本に引き続き10年住んでおり、うち就労ビザで5年以上働いていること
永住申請では、引き続き日本に10年以上住んで、そのうち5年間は就労ビザで働いていることが必要です。
ここでのポイントは「引き続き10年」と言う言葉で、引き続きの意味としては、日本に住民票があるだけでは足りず、日本からの出国が多いと、10年住んでいても、引き続き住んでいるとは認めてもらえません。
では、どのくらい日本から出国すると、引き続き住んでいるとは認めてもらえないかというと、基準は2つあります。
永住申請で認められない出国日数
- 1回の出国で3ヶ月間以上連続で日本から出国している
- 1年間で合計120日以上出国している
このどちらかの出国日数に該当すると、日本に引き続き住んでいるとはされず、帰国日から再度10年間引き続き住まないと永住申請はできません。
また、2つ目の1年間で合計120日以上の出国とは、1月1日~12月31日までの1年間のことではなく、どこを起点にしても合計で120日を超えていないことが必要になります。
例えば、4月10日~翌4月9日でも、10月30日~翌10月29日でも、どこを数えても1年間と計算します。
そして120日以上という基準の日数ですが、明確に開示されている情報ではなく、ビザプロでの基準になり、安全ラインは100日以内ですが、ギリギリ許可になるラインが120日以内と判断しています。
ただし以前より出国日数についても審査が厳しくなっているので、今後は120日でも審査で引っかかってしまう可能性もあるので、なるべく出国日数は少なくされることをおすすめします。
就労ビザの年数も5年必要
10年間引き続き日本に住んでいる間の5年間は、就労ビザを取得して働いていることが必要です。
就労ビザから永住申請する場合で多いのが、留学生として日本に来て、就労ビザに変更して永住申請をするという流れです。
例えば、留学ビザで4年間、就労ビザで6年間日本にいる場合が該当します。
留学ビザで6年間、就労ビザで4年間の合計10年間では認められないので、あと1年間就労ビザで働く必要があります。
安定した収入があること
永住申請で、多くの外国人が苦労するのが、「安定した収入があること」です。
就労ビザで働いている5年間すべての収入額が審査され、永住申請のガイドラインで明示されているわけではないですが、独身で扶養家族0人の場合の目安は、年収300万円以上です。
結婚して家族滞在ビザで日本にいる家族がいる場合には、1人あたり+70万円の収入が必要とされています。
この年収の中には家族滞在の配偶者がアルバイトをして得た収入金額は含めることができませんので、就労ビザの方の収入金額のみで判断されます。
なお、結婚をしているが両方とも就労ビザの場合には、それぞれ300万円以上の収入があれば大丈夫です。
そして年収の証明は、役所で取得できる「住民税の課税証明書」に載ってくる金額で判断しますので、源泉徴収票で判断しないようにしてください。
住民税の課税証明書は、直近5年分の収入額が審査されますので、直近5年間で1回でも年収300万円を下回っていると審査で不許可になってしまう可能性があります。
公的義務を履行していること
公的義務とは、主に「納税状況」のことを指し、具体的な税金は「所得税」「住民税」で、未納がないことは当然ですが、過去の支払いにおいての遅延も回数も審査対象となっています。
納期がきていないもの(納期未到来)については問題ないですが、未納があると納税ルールを守れていないと同時に、今の収入金額では納税ができず安定していないと判断されてしまいます。
さらに過去の支払いにおいて遅延があると、ルールを守れない人と判断されてしまい、具体的な遅延の回数も公表はされていないと、直近1年間で2回以上、直近5年間で4回以上あると注意が必要です。
社会保険も審査対象
社会保険は税金ではないですが、支払いは義務になりますので、「健康保険」「年金」の支払いについては、特に近年は厳しく審査されています。
基本的には会社で加入義務があるので会社で社会保険に加入していると思いますが、会社で加入していない場合は、自分で国民健康保険と国民年金に加入しないといけません。
自分で社会保険に加入する人では、国民健康保険は支払っている人が多いですが、年金が未納と言う人が多いです。
その場合は、永住申請のために年金加入して、過去の未払い分の支払いも一気に支払って永住申請する人がいますが、これでは永住申請は許可になりません。
社会保険の支払いも、過去の遅延についても審査しているため、過去の支払いを一気に支払っても意味がなく、少なくても納期通りに直近2年間は支払いをしている必要があります。
そのため、国民健康保険・国民年金に加入している人は、払い漏れが起きないように、口座振替など自動的に支払うような手続きにすることをおすすめします。
素行が善良であるか
素行とは、「犯罪歴」「在留状況」のことを指し、犯罪歴の中には軽微な「交通違反」も含まれます。
交通違反について、ガイドラインに明確に交通違反の何回が記載されているわけではありませんが、直近2年以内で2回以上あると審査は厳しくなります。
在留状況については、過去に転職したことがある場合には、退職時と新しい会社への入社時に入管に届出を提出しているかも審査対象です。
届出とは、勤務先の会社を辞めたり、新しい会社に就職した場合には、その旨を変更が生じた日から14日以内に届出しないといけないルールがあり、そういったルールを守れているかも確認されています。
身元保証人がいること
永住申請をするためには「身元保証人」を用意する必要があり、身元保証人になれる人は、日本在住の日本人または永住者のどちらかの人です。
また過去には、身元保証人に住民税の課税証明書を求めて収入があるかも審査していたのですが、2022年6月より提出が不要になり収入証明は不要となりましたが、身元保証人という立場から無職の方は身元保証人には避けたほうがよいです。
そして身元保証人と言うと、何かお金が要求される保証人なのではないかと、日本人は保証人になりたがらない傾向にあります。
しかし永住申請の身元保証人は、お金が要求される保証ではなく、「法令順守」「公的義務の履行」を永住権を取得できた後に、しっかり行うように見守っておいてくださいという努力義務となります。
そのため、身元保証人には大きな責任はありませんが、永住権取得後に身元保証人の方に迷惑をかけないように、法律を守り、納税などはしっかり行うようにしてください。
そして一般的には、会社の上司や同僚、学生時代の友人などに身元保証人になってもらうことが多いです。
永住申請の必要書類について
就労ビザの外国人が永住申請をする際の必要書類についてご説明します。
永住申請の必要書類は状況に応じて異なりますが、下記は最低限必要になってくる書類になります。
永住申請の必要書類
- 永住許可申請書
- パスポート原本
- 在留カード原本
- 証明写真(縦4cm×横3cm)※撮影から3ヶ月以内のもの
- 住民票(世帯全員分)※発行から3ヶ月以内のもの
- 理由書(永住申請をしたい理由を説明)
- 在職証明書
- 残高証明書または通帳のコピー
- 直近5年分の住民税の課税証明書
- 直近5年分の住民税の納税証明書
- 国税の納税証明書その3(源泉所得税及び復興特別所得税、申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税、相続税、贈与税の記載があるもの)
- 健康保険証(または国民健康保険証)
- 国民健康保険料(税)納付証明書(国民健康保険の方のみ必要)
- 年金に関する資料(年金定期便または年金ネットでの各月の年金記録の印刷画面)
- 身元保証書
- 身元保証人の身分証明書(運転免許証など)
- 了解書
永住申請中の注意点は?
ここまで永住申請の要件や必要書類を説明してきましたが、永住申請をした後の審査中にも注意が必要です。
永住申請は、申請した入管の場所や時期にもよりますが、東京入管の場合だと、審査期間がかなりのびて、1年3ヶ月ほど時間がかかっています。
申請を出してから1年以上審査にかかるので、審査中においても注意する点があります。
審査中に就労ビザの期限が来る場合
永住申請の審査では、特例期間は適用外となりますので、就労ビザの在留期間の満了日までに永住権の許可がなされない時は、永住申請の審査中でも、就労ビザの在留期間更新許可申請をすることが必要になります。
永住申請の審査中だからと言って、審査中に就労ビザの在留期限が過ぎてしまうとオーバーステイになり、当然に永住権も不許可になってしまうので、永住申請のタイミングで1年ほどしか在留期限が残っていない場合は、就労ビザの更新手続きを忘れずに行うようにしてください。
転職しないこと
永住申請中に転職はしないことをおすすめします。
永住申請中の転職は絶対だめではないですが、転職すると入管に新しい勤務先の情報を提出しなおさないといけないのと、審査のし直しになるので、審査期間がのびる可能性があります。
さらに、転職は仕事の安定性がないと判断されやすいので、永住申請の審査期間が1年以上とはなっていますが、なるべく永住申請中には今の会社のまま勤務し、永住申請の許可後に転職するほうがよいです。
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