永住申請の要件とメリットとは?
外国人が「日本で永住権を取得する」と、ビザ更新の手続きが不要になり制限なく活動することができます。
日本の永住権は、世界的に見ても取得するのが難しいですので、まずは要件を把握して、準備することが大切になります。
今回は、永住申請のメリットと要件について見ていきましょう。
永住権を取得するメリットとは?
永住権(Permanent residency)とは、「在留期間がなく活動制限もない」ため、日本人と同じように日本で生活できる在留資格になります。
では具体的に永住権を取得するとどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
永住申請するメリット
- 在留期限がなくなる
- 仕事内容に制限がなくなる
- 配偶者や子どもも永住権が取りやすくなる
- ローンが組みやすくなる
- 社会的信用があがる
在留期限がなくなる
永住申請して永住権を取得できると、ビザの更新手続きがなくなります。
7年に1度の書き換え手続きはありますが、審査はありません。(日本人の運転免許証の更新のイメージ)
そのため、「いつまでビザ更新できるのだろうか」「ビザのために今の会社で仕事をしないといけない」などの不安な気持ちがなくなり、手続きの手間もなくなります。
日本人の配偶者の外国人は、日本人と離婚や死別してしまうと、ビザを変更したり、母国に帰国しないといけないですが、永住権を持っているとそういった心配もなくなります。
仕事内容に制限がなくなる
就労ビザだと、やりたい仕事があっても、就労制限があるので、できないことも多くあります。
永住権があれば、仕事内容や働き方も自由になるので、自分の好きな方法で働くことができます。
配偶者や子どもの永住権が取りやすくなる
永住権を取得すると、「外国人の配偶者や子どもの永住権が取りやすくなります。」
永住者の配偶者と子どもは、「永住者の配偶者等」という在留資格を取得できるようになり、1年~3年で永住権申請ができるようになります。
ローンが組みやすくなる
日本に長く住んでいると、家を買いたいという思うこともあるかと思います。
ただし外国人の場合は、ローンが組みづらいため、現金で購入しないといけなかったりするので、家の購入にはハードルがあります。
永住権を持っていると、住宅ローンで有名なフラット35のローンも組めるようになるため、家の購入もしやすくなります。
社会的信用があがる
「ローンを組めるようになる」というのと同じ考え方になりますが、社会的信用があがります。
一般の外国人の方だと、在留期限があるため、在留期限以上日本にいれるかどうか不明確なため、ローンや銀行融資が受けづらくなっています。
永住権を取得できると、在留期限がなくなるので、日本人と同じようにローンや融資も審査してもらえます。
永住権の取得要件とは?
日本の永住権は、年々審査が厳しくなっています。
”2022年6月時点”での永住権の取得要件についてみていきます。
永住申請の要件
- 日本に10年以上引き続き住んでいること
- そのうち5年間、就労ビザで働いていること
- 今の在留資格(ビザ)が3年または5年のビザであること
- 過去5年間の年収が300万円以上であること
- 過去2年間、社会保険(健康保険と厚生年金)に加入し、遅延なく支払っていること
- 所得税等の国税の支払いに未納がないこと
- 過去5年間で、日本から3か月以上連続で出国していないこと
- 犯罪歴がないこと(交通違反も含む)
- 過去の在留状況が不良でないこと
日本に10年以上引き続き住んでいること
永住権を取得するためには、「日本に引き続き10年以上居住」している必要があります。
この「引き続き」というのは、在留資格を持って日本に住んでいることを言います。
※特定技能1号や技能実習はカウントされません。
そのうち5年間、就労ビザで働いていること
10年以上日本に居住していることに加えて、「5年以上就労ビザで働いていること」も必要となります。
そのため、10年以上日本に住んでいたとしても、留学生として6年、就労ビザで4年だと、就労期間が1年足らないので、あと1年働かないと就労ビザの申請ができないことになります。
今の在留資格(ビザ)が3年または5年のビザであること
入管法では、「最長の在留期間が必要」であるという記載がありますが、「3年または5年のビザを持っていれば永住権の申請が可能」です。
1年のビザの場合は、他の要件をすべてクリアしていたとしても永住権は許可されません。
過去5年間の年収が300万円以上であること
永住権の年収要件は、具体的にいくらと決まっているわけではありません。
ただし、審査傾向的に「年収300万円以上」が一つの目安となっています。
※これは独身で扶養家族0人の場合を想定しています。
これは「過去5年分すべてで年収300万円以上」というのが条件となります。
1年間だけ300万円以下の場合は、その年から5年間経って、すべて300万円以上になってからでないと永住権の許可は難しい場合がほとんどです。
また結婚していたり、扶養家族がいる場合は、1人あたり年収70万円~80万円がプラスで必要になります。
過去2年間、社会保険(健康保険と厚生年金)に加入し、遅延なく支払っていること
現在は、社会保険の支払いを厳しく審査しています。
以前は年金は審査対象外でしたが、現在は「健康保険と年金の両方が審査」されています。
健康保険は加入しているが、年金を払っていないと言う方がたまにいらっしゃいますが、年金を支払っていないと許可にはなりません。
また支払っていればいいというわけではなく、「支払いが遅れている場合もNG」となります。
「審査対象期間は過去2年間になります」が、2回や3回ほどであれば支払いが遅れてしまった理由を説明できれば、許可の可能性もありますが、5回以上ある場合は、その履歴が消えるまで待ってから申請を出されることをお勧めいたします。
所得税等の国税の支払いに未納がないこと
永住権では「住民税だけでなく、国税も審査対象」です。
審査対象は、税務署で発行される納税証明書その3の「源泉所得税及復興特別所得税」「申告所得税及復興特別所得税」「消費税及地方消費税」「相続税」「贈与税」となります。
会社員の場合は、会社から天引きされることがほとんどなので、問題はないかと思いますが、相続税や贈与税も審査対象となるので注意が必要です。
過去5年間で、日本から3か月以上連続で出国していないこと
永住申請の場合は、「日本からの出国日数」も審査されます。
永住権という名前の通り、「日本に永住する」ことが目的のビザになるので、日本から多く出国している外国人には許可がおりません。
「審査される年数は過去5年分」で、明確な基準はないのですが、審査の傾向は下記となります。
永住申請で引っかかる出国日数
- 1回の出国で3か月以上出国している
- 1年間で合計120日以上出国している
上記に該当する場合は、不許可リスクが高まります。
1回の出国が3か月以上というのはわかりやすいですが、1年間で合計120日以内というのは、どこから起算しても1年ということになります。
(1月1日~12月31日ではなく、6月1日~5月31日でもどこを切り取っても120日以内というのが基準です)
ただしこの120日も絶対ではなく、もちろん出国日数が多くなればなるほど、不許可リスクは高くなっていきます。
犯罪歴がないこと(交通違反も含む)
犯罪歴とは、窃盗や暴行なども含まれますが、「交通違反」も含まれます。
交通違反では免許停止となるような大きな違反に加えて、「駐車違反」や「一時不停止」などの軽微なものもすべて含まれます。
この軽微な交通違反 は、近年厳しく審査されており、「過去5年分見られる」のですが、直近2年間で2~3回ある場合は特に注意が必要です。
過去の在留状況が不良でないこと
10年間以上日本に住んでいるが、例えば転職している場合には注意が必要です。
就労ビザを持っている時に転職した場合には、会社が変わった旨を入管に知らせる「所属機関変更の届出」を出していないなどの場合は、在留不良にあたります。
1回くらいであれば問題ないですが、何回も繰り返し行っていると、ルールを守れない人と思われてしまい、審査で不利益を被る可能性があるため、細かなルールも違反ないようにしてください。
日本人と結婚している場合や、定住者、高度人材の場合
ここまでは一般の外国人の方の永住権要件について解説してきました。
例えば、「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」「高度専門職」の外国人には、優遇措置があります。
そのため居住要件も10年ではなく、5年、3年、最短で1年で永住申請が出来る方もいます。
これはそれぞれ要件がありますので、下記にてご確認ください。
「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」の場合の永住申請はこちらから確認できます。
「高度専門職」の外国人の場合の永住申請はこちらから確認できます。
永住権の審査期間とは?
永住権の審査期間は、入管の場所によってかなり変わります。
入管のHPでは、4カ月が標準処理期間とされていますが、東京は一番混んでいる入管なので、「平均6か月ほど」審査でかかります。
例えば、北海道などでは混みあっていないので、1か月~2か月で審査が終わることもあります。
永住権の審査中に在留期限がくる場合
永住申請中に、今のビザの期限がくる場合は、「永住権の申請に関わらず更新申請をする必要があります。」
通常、ビザ申請は2つ以上同時に申請することはできないのですが、永住権だけは特殊で、他のビザではある特例期間という考え方がありません。
そのため、在留期限が来る前に更新申請をしないといけません。
万が一、更新申請を忘れてしまった場合は、永住権が不許可になるだけでなく、オーバーステイになってしまいますのでご注意ください。