留学ビザから配偶者ビザへ変更したい。注意点と必要書類も解説します。

留学生とお付き合いをしていて結婚することになった場合、「留学ビザから配偶者ビザに変更したい」という要望が多くあると思います。
ただ「学生なので収入が少ない」「学校を早く辞めたい」「もうすぐ卒業だが配偶者ビザの申請が間に合うか不安」など多くの疑問・不安点があるのも事実かと思います。
今回は、留学ビザから配偶者ビザに変更する際の注意点や、やり方について説明していきたいと思います。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
留学ビザから配偶者ビザに変更する際のチェックポイント
留学ビザから配偶者ビザに変更する際には、配偶者ビザの要件の審査の他に、「留学ビザ時代の在留状況も審査対象」になります。
具体的には、「留学の活動をちゃんと行っていたか」「オーバーワークなど違反行為はしていないか」という点が審査されます。
留学ビザ時代の審査される内容
- オーバーワークはしていないか?
- 出席率・成績は悪くないか?
- 退学・休学していないか?
オーバーワークはしていないか?
留学生は、資格外活動許可を取得している場合「週28時間以内であればアルバイト可能」です。
夏休みや冬休みの学校がない時間は週40時間アルバイト可能になります。
留学生の方がアルバイトできる時間が決まっているのは、留学生が持っている留学ビザは、学校に通って勉強するためのものであり、メイン活動は勉強になります。
そのためアルバイトがメインとならないように働ける時間に制限があります。
ただし、多くの学生は「他の学生もオーバーワークしているから大丈夫」と週28時間以上アルバイトしていることが多くあります。
オーバーワークは法律違反になりますので、オーバーワークの事実が入管で発覚すると、ビザの取り消し対象になります。
そのため配偶者ビザの変更申請時に、留学時代のオーバーワークが発覚すると不許可になる可能性が高まってしまいます。
オーバーワークはどうやって発覚するのか
一番多いのは、「住民税の課税証明書」の提出を求められ、そこに記載されている「収入額が180万円以上あるとオーバーワークの疑い」が高くなってきます。
住民税の課税証明書は、1年前の収入が記載される書類になるので、直近の収入まではわかりません。
住民税の課税証明書を入管から求められ、オーバーワークの疑いをかけられた場合には、「アルバイトしている勤務先名」「勤務表」「給与が振り込まれている銀行口座のコピー」などを追加で求められることがあります。
これらの書類を提出してオーバーワークの疑いがあると判断されてしまうと、配偶者ビザへの変更申請が不許可になってしまいます。
出席率・成績は悪くないか?
留学生は学校に通い「勉強するため」に留学ビザをもらっています。
そのため、学校に行っていなかったり、卒業できない成績だと、留学ビザの活動をしていないと判断され、「在留不良」と判断される可能性があります。
在留不良では、「留学ビザの活動をしていなかった」という判断と、「在留不良で留学ビザが更新できないから配偶者ビザに変更するのではないか?」という偽装結婚としての疑いも持たれてしまうため審査は厳しくなります。
出席率は80%以上が良好と判断される
日本語学校や専門学校に通っている外国人であれば、「出席率80%以上で良好」と判断されます。
70%まではギリギリセーフですが、なぜそんなに出席率が少ないのか合理的な説明が必要です。
仮に「アルバイトのし過ぎで疲れてしまった」などの理由は合理的理由ではなく、「体調不良だった」などが合理的理由になります。
体調不良の場合は、証拠書類として病院からの診断書や、通院していた証拠(領収証など)が必要になります。
ちなみに大学生の場合は、出席率という考え方はないので、取得できている単位で判断されるので、成績が大切になります。
成績は、卒業できるか?留年しないか?が判断基準となる
出席率と合わせて大切なのが「成績」です。
成績不良の判断は「卒業ができない」「留年してしまう」場合です。
一生懸命学校に通い、出席率は良いが成績が悪いと言った場合は、今後どのように成績アップをしていくのか、学校の先生と話ながら決めたことを入管に説明していきます。
出席率が悪くて成績が悪い場合は、その具体的な理由を記載します。
そして今後の計画をより詳細に記載するようにしてください。
「卒業ができない場合」「留年してしまう場合」も、留学ビザが更新できないので、配偶者ビザに変更申請するのではないかと偽装結婚を疑われてしまい、審査が厳しくなる傾向があります。
退学・休学はしていないか?
留学生が日本人(または永住者)との結婚が決まると、「配偶者ビザに変更する前」に学校を辞めてしまったり、休学してしまう場合があります。
学校を辞めてしまったり、休学すると、留学ビザの活動をしていないと判断されてしまうため、配偶者ビザの審査でも不利になります。
そのため原則として、「配偶者ビザを取得できるまでは学校を辞めない」ことをおすすめいたします。
ただし、学費を支払わなければいけない関係で、配偶者ビザを申請する前に学校を辞めたいと言った場合は、学校を辞めてから1日でも早く配偶者ビザの申請をするようにしてください。
入管法では、「現在保有している留学ビザの活動を行わなくなってから、3か月以内に他のビザに変更または帰国してください」という規定があり、3か月以上過ぎると留学ビザの取り消し対象期間となるとしています。
なら「3か月は余裕がある」と思われる方もいるかもしれませんが、イメージとしてはあくまでも猶予期間ですので、学校を辞めてから1日経つに連れて審査が厳しくなると思ってもらえればと思います。
留学ビザから配偶者ビザに変更する際の必要書類は?
留学ビザから配偶者ビザへの変更申請の際の必要書類は下記になります。
留学生や日本人配偶者の方の状況によって細かな書類は変わってきますが、下記は最低限必要になります。
留学ビザから配偶者ビザへ変更する際の必要書類
- 申請書(変更申請書)
- 証明写真(縦4cm×横3cm) ※発行から3か月以内のもの
- 日本人配偶者の戸籍謄本
※婚姻の情報が反映されているもの
※発行から3か月以内のもの - 外国人配偶者の母国の結婚証明書 ※発行から6か月以内のもの
- 住民票 ※世帯全員で同居しているもの
- 直近年度の住民税の課税証明書(原則日本人側のが必要です)
- 直近年度の住民税の納税証明書(原則日本人側のが必要です)
- 在職証明書(原則日本人側のが必要です)
- 質問書
- 身元保証書(日本人配偶者が身元保証人になります)
- スナップ写真3~5枚
- パスポート原本
- 在留カード原本
留学生とご結婚される方は、日本人配偶者側も学生だったり、新社会人の方と言うケースも多くあり、まだ「安定した収入が確保できていない」場合もあるかと思います。
上記で記載されていただいた⑥~⑧の収入に関しての書類ですが、基本的には日本人配偶者側のものを提出しますが、日本人配偶者および外国人配偶者側のどちらも収入がない場合は、日本人配偶者の親御さんにサポートしてもらうというのもいつの方法としてあります。
卒業が近くて内定が決まっている場合は、在職証明書に代えて内定書や雇用契約書のコピーをご準備ください。
学生で収入がない場合の対処法
外国人配偶者と日本人配偶者の両方が学生であったり、日本人配偶者の方もまだお仕事をしていない場合には、「結婚後、どのように生計を維持していくのか」考えている計画を説明する必要があります。
生計の維持方法でよくある例
- 親と同居する
- 親から資金援助を受ける
- 就職先が決まっている
- アルバイトで生計を立てる
親と同居する
日本人配偶者の「親と同居する」のは方法としてよくあります。
親と同居をすると「家賃がかからない」ので、ご夫婦の最低限必要な生活費が少なくて済みます。
家賃がかからないのは、配偶者ビザの審査においても有利です。
ただし家賃がかからないと言っても、何かしら収入を得る必要があると思うので、計画であったとしても今後の見通しを説明する必要があります。
親の住民税の課税証明書と納税証明書が必要になる
日本人配偶者の親と一緒に暮らす場合には、「親にも身元保証人になってもらう」必要があります。
身元保証人の責任についての詳細はこちらから確認できます
身元保証人になるということは、「直近年度の住民税の課税証明書と納税証明書」を提出しなければなりません。
その場合、最低でも収入で300万円ほどないと身元保証人としてのサポートが本当に可能なのか?と疑われてしまうことになるので、親の収入額も大切になってきます。
親から資金援助を受ける
親と同居はしないが、「資金援助を受ける」ことも配偶者ビザの審査上、加点ポイントになります。
この場合も、親の住民税の課税証明書と納税証明書の提出が必要となり、最低でも親の年収が300万円以上必要になります。
就職先が決まっている
卒業がまだ先であるが、すでに「夫婦のどちらかの就職先が決まっている」場合は、配偶者ビザの審査上、加点になります。
その場合は、「内定書」または「雇用契約書」のコピーの提出をしてください。
申請時点においては、学生であるため安定した収入が確保できていないが、将来的に安定した収入が確保できていることを証明できれば、配偶者ビザの取得可能性は大きく上がります。
アルバイトで生計を立てる
「アルバイトで生計を立てることを計画している場合は注意」が必要です。
アルバイトは、シフト数によって月収額が変わってきます。
これは安定した収入とは言えなく、配偶者ビザの要件である「安定的・継続的な収入の確保ができていること」の要件には該当しない可能性が高いです。
ただしアルバイトの場合でも、過去アルバイトで毎月同じ月収が稼げているのであれば、配偶者ビザ取得後も同じだけの月収が確保できる可能性は高いと判断されるため、「安定性がある」と判断される可能性が高くなります。
とはいえ、将来的なところを考えると、月額収入が決まっている仕事を探すことも必要になってきます。
卒業後は、ビザ期限が残っていても早めに配偶者ビザ申請をする
「留学ビザの取り消し制度」はご存じでしょうか?
留学ビザの場合、「学校を辞めた」「学校を卒業した」など、学校に通わなくなってから3か月以上経つと、留学ビザを入管の職権により取り消しできるようになる制度です。
例えば、3月に留学先を卒業したとして、留学ビザの期限が9月まであったとしても、卒業後3カ月経過した、7月からは「留学ビザが取り消される可能性」が出てきてしまいます。
現実的に学校を卒業して3か月以上経った場合でも、いきなり留学ビザが取り消されるということは考えづらいですが、配偶者ビザへの変更申請の際の審査は難しくなっていきます。
配偶者ビザへの変更申請が遅れて、不許可になってしまった場合は、最悪の場合一度母国へ帰国しないといけなくなってしまい、その間別々に暮らさなければいけなくなる可能性もあるため、配偶者ビザへの申請はなるべく早めに行うようにしてください。
なお配偶者ビザの申請は、国際結婚手続きが終了後に完了となるため、時間がかかる国際結婚手続きをなるべく早めに計画的に行うようにしてください。
配偶者ビザに変えると就労制限がなくなる
配偶者ビザの最大のメリットは就労制限がなくなることです。
留学ビザの場合は、資格外活動許可を取得して週28時間以内の就労のみ可能という制限があります。
一方、配偶者ビザはその就労時間の制限がなくなります。
さらに就労ビザとは違い、仕事の内容についても制限がないため、留学ビザでアルバイトしていたところで社員として働くといったことも十分に可能になります。
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