国際結婚での苗字の変更方法とは?子どもの苗字についても解説します

日本人同士が結婚する場合は、必ずどちらかの夫婦の苗字(姓)に統一しなければなりません。これは「夫婦同姓」という制度が法律上定められているからになります。この夫婦同姓の制度は、現在さまざまな意見があり、議論が活発となっている「夫婦別姓」問題にもつながります。
ところが、国際結婚の世界では「夫婦別姓」が当然に認められています。
今回は、夫婦別姓が認められている国際結婚ではありますが、外国人の苗字を変更する場合と、日本人側の苗字を変更する場合の手続きについて解説していきます。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
国際結婚で夫婦別姓が認められる理由とは?
国際結婚の場合は、「夫婦別姓」が基本となるのは、決して例外としてではなく、日本の戸籍制度に理由があります。
もともと「夫婦同姓」は、日本固有の制度である「戸籍」に姓名を紐づけるために設けられたものです。つまり戸籍は日本人にしか与えられません。外国人が日本人と結婚したとしても、日本の戸籍を取得することはできないのです。もし外国籍の人が日本の戸籍が欲しい場合は、帰化して単独戸籍を取得するしか方法がありません。
外国人が苗字を変えるための手続き方法について
国際結婚の場合は夫婦別姓が基本となるため、苗字を変更する必要はありません。
そのため、結婚をきっかけに苗字が勝手に変わることはなく、外国人側の苗字を日本人の苗字にしたい場合は、手続きが必要です。
外国人の苗字を変える方法
- 通称名を登録する
- 本国(母国)で名前の変更を行う
- 日本国籍に帰化する
通称名を登録する
通称名とは、本来の名前を変更するのではなく、日本国内において、通称名でも生活ができるようにする制度です。
この手続きは、最寄りの市区町村役場で手続きが可能で、「通称記載申出書」を提出することで、通称名の登録ができます。
例えば「ジョー ブラウンさん」が「鈴木さん(日本人)」と結婚した場合、
通称名を「鈴木 ジョー」と登録することが可能です。ジョーさんが、鈴木ジョーと通称名を登録すると、銀行口座や住民票、健康保険証、運転免許証など公的書類でも鈴木ジョーさんで登録できます。
そのため日々の生活では鈴木ジョーさんとして生活することができます。
ただし、本当の名前である「ジョー ブラウンさん」名前を変えているわけではないので在留カードやパスポートには記載されません。そのため、海外では使用することができません。
本国(母国)で名前の変更を行う
海外において、名前を変える手続きを行います。
これは国によって方法は異なりますが、基本的には裁判所の許可が必要になります。
例えば、「ジョー ブラウンさん」が「鈴木さん(日本人)」と結婚した場合、
「ジョー ブラウン(Joe Brown)さん」から「鈴木 ブラウン(Joe Suzuki)さん」に名前を変える方法です。ただし海外では漢字表記がないため、実質上記①で説明した通称名を登録して、「鈴木」の漢字を登録する必要があります。
日本国籍に帰化する
帰化申請をして日本国籍を取得すれば、日本国籍を名乗ることが可能になります。
ただし日本では二重国籍を認めていないので、日本国籍を取得するということは、外国の国籍がなくなるということになります。
また帰化申請は、外国人が日本人と結婚してすぐにできるわけではなく、日本人と結婚して3年以上で、うち1年間は日本で居住してからでないと申請ができません。
日本人が苗字を変えるための手続き方法について
日本人が外国人の苗字に変更することも可能です。
国際結婚においては夫婦別姓が基本なので、自動的に日本人側の苗字が変わることはなく、手続きをする必要があります。
日本人側が苗字を変更する場合は、結婚後「6か月以内に苗字変更の手続きを行う場合」と、「6か月以降に手続きを行う場合」で、手続き方法が変わってきます。
手続きが完了すると、日本人側の戸籍の名前が変わり、銀行口座や公的書類もすべて変更する必要がでてきます。
結婚から6か月以内に日本人の苗字を変更する場合
日本の市区町村役場または、海外にある日本領事館のどちらかで手続きを行います。
結婚から6か月以内であれば比較的簡単に役所で手続きが可能です。
結婚から6か月以上経ってから日本人の苗字を変更する場合
家庭裁判所の許可が必要になります。
家庭裁判所の許可後に、市区町村役場で手続きすることになるため、手続きプロセスが増えます。
家庭裁判所の許可は、少し複雑で必要書類も多くなるのに加え、時間もかかるため、なるべく結婚から6か月以内に手続きをすることをお勧めいたします。
苗字の変更パターンについて
苗字を変更する場合でも、パターンがいくつかあります。
まず前提として日本では、アルファベット表記での記載はできないため、カタカナ表記となります。
(例:鈴木 愛さんがジョー ブラウン(Joe Brown)さんと結婚した場合、鈴木 愛さんが外国人配偶者の苗字に変更する場合は、「ブラウン 愛さん」となります。)
苗字変更のパターン
- 「ブラウン 愛」
外国人配偶者の苗字に変更するパターンで、「ブラウン」が苗字、「愛」が名前になります。 - 「ブラウン鈴木 愛」
今の日本の氏名に加えて、外国人配偶者の苗字を加えるパターンで、「ブラウン鈴木」が苗字、「愛」が名前になります。 - 「ブラウン 鈴木愛」
苗字は外国人配偶者の苗字に変更し、名前を今までの日本名すべてにするパターンで、「ブラウン」が苗字、「鈴木愛」が名前となります。 - 「ブラウンF 愛」
苗字を外国人配偶者の苗字に変更し、加えてミドルネームも入れるパターンです。
この中で、②と③のように外国人配偶者の苗字と今までの日本の苗字のどちらも使用したい場合は、結婚から6か月以内であっても家庭裁判所の許可が必要になります。
カタカナ表記となる名前のルールについて
欧米などの国では漢字がないため、カタカナ表記で記載されますが、アジアの中国や韓国では漢字があります。
漢字表記がある国でも、手続きの方法や日本にない漢字だとカタカナ表記になります。
欧米圏の場合
「Brown」さん→「ブラウン」さん
カタカナ表記が難しい外国人配偶者の苗字だと、婚姻届に書いたカタカナが使用できるカタカナ表記となります。
中国国籍の場合
「王」さん→「王」 or 「オウ」 or 「ワン」 or 「ウォン」さん
「王」いう感じは日本にも存在するので、「王」と漢字で使用することも可能です。その他、「オウ」とカタカナにしても、「ワン」や「ウィン」というカタカナでも可能です。
また、「劉」という漢字は使用できないので、「リュウ」とカタカナ表記となります。
日本にある漢字の場合でも、漢字にするかカタカナにするかは、婚姻届に記載した漢字またはカタカナしか使用できませんのでご注意ください。
韓国国籍の場合
ハングル文字は日本では使用できません。
「김(金)」→「金」「キム」さん
「金」であれば、「金」or 「キム」の2拓になります。
漢字またはカタカナの選択は、婚姻届に記載した方になります。
離婚すると苗字はどうなるのか?
国際結婚では元々「夫婦別姓」なので、離婚したとしても自動的に苗字が戻るわけではありません。
元の日本の氏名に戻したい場合には、手続きをすれば結婚前の日本の苗字に戻すことが可能です。
結婚前の氏名に戻したい場合の手続き
- 外国人の苗字に変更した際に、結婚から6か月以内に手続きをしている場合で、離婚後3か月以内の苗字を戻す手続きなら市区町村役場の手続きで可能
- 外国人の苗字に変更した際に、結婚から6か月以上経ってから手続きをしている場合は、離婚後に結婚前の苗字に戻すためには、家庭裁判所の許可が必要です。
- 「ブラウン鈴木 愛」など、外国人の苗字と日本人の苗字のどちらも使用した変更をしている場合は、家庭裁判所の許可が必要になります。
子どもの苗字はどうなるのか?
外国人と日本人の間に産まれた子どもは、日本人側の戸籍に入るため、基本的には日本人側の苗字を使用することになります。
・外国人配偶者および日本人側の両方で苗字を変更していない場合
「ジョー ブラウン」さんと「鈴木 愛」さんの子どもの苗字は、「鈴木」になります。
・日本人が外国人配偶者の苗字に変更している場合
「ジョー ブラウン」さんと「ブラウン 愛」さんの子どもの苗字は、「ブラウン」になります。
日本人側が、外国人配偶者側の苗字に変更していなく、子どもだけ外国人配偶者側の苗字を使用したい場合には、家庭裁判所で許可をもらう必要があります。
そして外国人配偶者側の苗字になった子どもは、日本人側の戸籍には入らず、子どもの単独戸籍ができる形になります。
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