特定技能「外食業」で外国人を雇用する際の要件とは?【2025年版】

日本の一般的な就労ビザの技術・人文知識・国際業務では、現場労働がNGですが、特定技能ビザを活用することで、外国人を日本の外食業で働いてもらうことが可能です。
特定技能ビザは、2019年4月に施行され特定の業種で外国人の現場労働を認める新しいビザ制度として注目されています。
ただし特定技能ビザでも、どんな仕事でもしてもらえるというわけではなく、一般的な技術・人文知識・国際業務と違う点も多いので、この記事では、外食業に特化した特定技能ビザの要件や雇用時の注意点をわかりやすく解説していきます。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
特定技能ビザ「外食業」とは?
特定技能ビザとは、人手不足が深刻な業界において、外国人を雇用できるようにすることで、労働力確保を目的としている就労ビザです。
そして外食業も人材不足が深刻な業界の対象となっており、ファストフード店や居酒屋、レストランなどで外国人が勤務できるようになりました。
なおコンビニについても含まれる予定ではあったのですが、対象とならず見送りとなっております。
特定技能1号と2号の違い
そして特定技能ビザは、特定技能1号と特定技能2号の2種類に分かれます。
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特定技能1号:最長で5年間働くことができる。
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特定技能2号:無期限で働くことができる。
※ただし、一定の条件をクリアできる必要あり。
特定技能2号を取得するためには、一定の条件をクリアできると、「外食業特定技能2号技能測定試験の合格」「日本語能力試験(JLPT)3級以上の合格」「指導・管理などの2年間の実務経験」をクリアする必要があります。
そして特定技能2号はいきなり取得することはできないので、まずは特定技能1号を取得する必要があります。
特定技能1号を取得する要件は?
それでは、特定技能1号を取得するための外国人の要件についてご説明させていただきます。
特定技能ビザ1号は学歴や職歴には関係なく、下記条件をクリアできれば取得できます。
受け入れ要件:
- 年齢が18歳以上であること
- 日本語能力試験(JLPT)4級以上または日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格していること
- 技能水準試験に合格していること
特定技能1号を取得するためには、日本語試験と技能試験に合格することが必要です。
ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人については、日本語試験と技能試験(技能実習と同じ内容のみ)は免除されます。
そして技能試験は、「一般社団法人外国人食品産業技能評価試験(OTAFF)」が主催している試験に合格することが必要で、日本での海外でも試験の受験は可能です。しかし、技能試験の開催は不定期なので、海外の場合は開催されている国が限られているので、OTAFFのサイトからスケジュールを確認するようにしてください。
特定技能の「外食業」で働ける業務内容は?
特定技能ビザでは、外国人が従事する業務内容にも多少制限があります。主に以下の業務が認められています。
特定技能外国人が行える仕事内容
- 調理補助
- 接客
- 店舗管理
基本的には、調理業務やホールでの接客、店舗管理や原材料の仕入れなどの業務全般が可能となっています。
ただし、「皿洗いのみ」「清掃のみ」といった場合には、特定技能ビザでも認められていません。皿洗いや清掃などを行う場合には、必ず調理や接客・店舗管理の業務を行い、それに付随する業務であることが求められています。
働ける店舗は?
特定技能ビザは、飲食店であれば勤務可能ですが、風俗営業に関わる飲食店は対象外となります。以下は、外国人が特定技能ビザで勤務できる飲食店の代表的な例です。
特定技能外国人が働ける店舗の種類
- レストラン
- 食堂
- 居酒屋
- カフェ
- ファストフード店
- テイクアウト専門店(店内で調理した飲食料品を渡すもの)
- 宅配専門店(店内で調理した飲食料品を配達するもの)
- 仕出し料理店
上記以外にも、病院などの給食施設やホテル内のレストラン、キッチンカーでの勤務も可能ですが、現場で調理や接客業務を提供しているお店に限られます。
なお仕出し料理店とは、宅配と似ていますが、容器などを後から回収したりする懐石料理などの和食屋によくみられる形態になります。
受け入れ企業の注意点は?
企業が特定技能外国人を雇用するには、以下の基準と義務を遵守する必要があります。これらの要件を遵守しなければ、ビザの申請は通らないことになります。
【外国人を受け入れるための基準】
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日本人と同等以上の雇用契約であること
外国人という理由だけで給与を低くすることは認められておらず、給与金額が日本人と同等以上であることが求められます。
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過去に違反がないこと
受け入れ企業は、過去5年以内に出入国管理法や労働法令の違反がないことが求められます。
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外国人の支援体制の整備されていること
外国人を支援する体制とは、外国人が理解できる言語で支援ができることが求められており、外部機関である登録支援機関に委託することが可能です。
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支援計画が適切に実施されること
特定技能ビザには支援計画を作成することになりますが、その支援計画が適切に行われていることが求められます。
【受入れ機関(企業)の義務】
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雇用契約の履行
外国人との雇用契約を確実に履行し、適切な報酬の支払いや労働条件を遵守することが義務となります。
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支援の実施
外国人への支援は、企業が直接実施するか、登録支援機関に委託することができます。
すべてを登録支援機関に委託すれば、【外国人を受け入れるための基準】の③(外国人支援体制)の条件を満たすことになります。 -
届出義務
出入国在留管理庁への各種届出が必要であり、特定技能外国人の受け入れに関連する法令遵守が求められます。
【協議会への加入】
特定技能外国人を受け入れる企業は、食品産業特定技能協議会への加入が義務となります。
協議会は、特定技能制度の適切な運用を図るために、構成員同士の連携や制度・情報の周知、法令遵守の啓発を行う役割を担っています。
協議会への加入は、特定技能ビザ申請前に行っていないといけず、審査に1~2ヶ月ほどかかるので、早めに手続きしておく必要があります。
登録支援機関とは?
特定技能外国人を受け入れ企業側の条件となる支援体制について、企業が直接実施することもできますが、現実的に中堅・大企業以外が自社でサポート体制を整えるのは、ノウハウがないと難しいので、外部の機関の登録支援機関に委託するのが一般的となります。
登録支援機関は、特定技能外国人の安定した労働環境を提供するための支援する機関で、外国人が日本で安心して働けるよう、受け入れ企業に代わって生活面や仕事面でサポートを行います。
※登録支援機関になるためには、法務省管轄の出入国在留管理庁長官の登録を受けていることが必要です。
具体的なサポート内容
- 事前ガイダンス
- 空港までの送迎(入国・出国の際)
- 住居の確保、生活に必要な契約における支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続きなどへの同行支援
- 日本語学習の支援
- 相談や苦情への対応
- 日本人との交流促進に係る支援
- 転職支援
- 定期的な面談の実施
この中の「事前ガイダンス」と「生活オリエンテーション」は、それぞれ3時間と8時間以上の実施を求められており、手間がかかります。そしてサポートは、外国人が理解できる言語(主に母国語)で行う必要があるので、それ以外の言語でのサポートは認められていません。
なお、登録支援機関に支援の実施を委託する場合の費用について、外国人本人に負担させることはできませんので、会社負担となります。
特定技能外国人を雇用できるまでの流れ
特定技能外国人を雇用する流れは、外国人が海外在住なのか日本在住なのかで変わってきます。
まずは、海外在住の外国人を特定技能ビザで雇用する場合の流れをご説明させていただきます。
海外在住の外国人を雇用するまでの流れ
- 現地の送り出し機関と契約する(国によっては送り出し機関との契約は不要な国もあり)
- 外国人と面接し、採用するかを決める
- 採用したら、雇用契約書を締結する
- 事前ガイダンスを実施する
- 健康診断の実施
- 在留資格(特定技能)の申請を行う
- 許可後、在留資格認定証明書(COE)の交付を受ける
- 外国人が現地の日本領事館(大使館)で査証(VISA)を受け取る
- 来日
現地の送り出し機関を通さないといけないかは国によって変わってきます。具体的にはベトナム・ミャンマー・フィリピン・カンボジアについては、送り出し機関との契約が必須となっています。
さらにタイやインドネシア、モンゴル、バングラデシュ、パキスタン、ラオス、キルギスについては送り出し機関の利用は任意のようですが、独自のルールがありますので、事前に確認が必要になります。
日本在住の外国人を雇用するまでの流れ
- 現地の送り出し機関と契約する(国によっては送り出し機関との契約は不要な国もあり)
- 外国人と面接し、採用するかを決める
- 採用したら、雇用契約書を締結する
- 事前ガイダンスを実施する
- 健康診断の実施
- 在留資格(特定技能)の申請を行う
- 許可後、新しい在留カードを受け取る
日本在住の外国人の採用する場合にも、国によって外国人の母国の送り出し機関と契約しないといけない場合があります。
ただし例えばベトナムでは、日本国内において少なくとも2年間の課程を修了してその証書を取得する学校を修了し,試験合格後「特定技能」に変更する留学生を採用する場合は、送り出し機関との契約は免除されています。
転職する場合
すでに特定技能1号を取得している外国人を採用する場合でも、在留資格変更許可申請が必要となります。
特定技能1号が許可されると、パスポートに指定書が貼られ、その指定書に記載されている会社でしか働くことができません。そのため、すでに特定技能1号を持っている外国人でも転職する場合は、新しく特定技能1号を取得した後でないと働き始めることはできません。
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