経営管理ビザを更新するための条件は?必要書類と期間を延長するためのポイントを解説

日本で事業を継続していく外国人にとって、「経営管理ビザ」の更新は非常に重要な手続きです。
特に経営管理ビザは、他の在留資格(ビザ)と比べて審査が厳しいと言われており、更新時にも新規取得時と同じレベルの条件で審査されることになります。
また経営管理ビザは、初回の在留期間が1年間となることが多いため、早い段階から3年の在留期間を取得できるように準備する必要があります。
そこで本記事では、経営管理ビザの更新の条件や必要書類、そして将来を見据えて長い年数のビザが取得できるようになるポイントについて、わかりやすく解説していきます。
監修者

-
行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
経営管理ビザを更新するための条件は?
経営管理ビザを更新するためには、新規で経営管理ビザを取得した時の条件が維持されているかに加えて、経営状況、納税状況などが審査されることになります。
具体的な条件は大きく分けて3つになりますので、それぞれ細かい内容を確認していきましょう。
申請者の個人が義務を履行しているか?
経営管理ビザの更新では、会社状況に加えて申請者個人の法令遵守も重要です。
特に重要なのは、所得税・住民税・法人税などの納税義務を守っているかになります。さらに、各種届出の適正な実施も行われているかも確認されており、具体的には、個人及び会社の住所が変わった場合、会社の情報も変更されているかなどを確認します。
これらができていないと、更新申請の審査で不利になります。
会社としての義務を履行しているか?
会社として経営管理ビザの条件に加えて、会社のルール(会社法など)を守っているかも審査されます。会社のルールを知らなかったでは通じませんので、今のうちにしっかりと理解しておくようにしましょう。
独立した事業所の確保
経営管理ビザでは、事務所が確保されていることが必要になります。
事務所を移転することは問題ないですが、事務所を自宅マンションと一緒にしていたり、事務所の契約が短期契約になっていることは認められません。
そのため、事務所が必要ないビジネスモデルであっても、事務所で仕事をすることが経営管理ビザの条件となるので、事務所を解約するなどはしないように注意が必要です。
会社としての納税義務の履行
個人の納税義務だけでなく、会社としての納税義務の履行も必要になります。
具体的には、法人税・消費税・地方税などをしっかり申告して納付しているかを審査されます。
一般的に決算は税理士にお願いすることが多いと思うので、税理士に依頼すれば税金の計算をしてくれ、いつまでにいくら支払う必要があるのか教えてくれます。
そういった納税を守ることが大切になります。
社会保険などへの加入
従業員がいる場合は、社会保険や労働保険に加入しているかも審査しています。
社会保険などは税金と思っている方もいますが、正確に言うと税金とは異なりもので、法人の場合は、加入が必須です。
社会保険は、正社員だけでなくアルバイトでも、加入条件をクリアすれば加入必須なので、ご注意ください。
事業の継続性と安定性
事業が安定して行われているかは、決算書の売上額と利益額で判断します。
具体的には、売上額は会社規模によって求められる金額が変わってきますが、わかりやすいところで言うと、黒字か赤字かで事業の状態を判断されることが多いです。
売上と利益について
前提として、初めての経営管理ビザの更新の場合、決算書の数字は実態を伴っていないことが多いです。理由としては、決算月と経営管理ビザが取得できた月によって、実際に事業を行った期間が短くなることが多いからです。
そのため、初めての更新申請の場合は、年間売上が300万円程度であっても更新できる可能性は十分になります。
ただし、2年目の売上としては500万円以上は目指したいところです。そして利益(粗利益)に関しては、2期連続で赤字が続いてしまうと、今後の事業計画がとても重要になってきます。事業計画において、どのように黒字にするのかを具体的に根拠資料とともに説明することが必要となります。
債務超過について
債務超過とは、決算書の貸借契約書で資産の数字よりも負債の数字が大きいことを意味します。
債務超過になっていると、会社で持っている資産をすべて売っても、負債の方が大きいので、返済ができないという意味になるので、経営管理ビザの更新申請ではかなり厳しく審査されることになります。
債務超過をわかりやすく確認するのであれば、貸借対照表の純資産がマイナスになっているかで確認できます。
債務超過の場合には、会計士や中小企業診断士の外部の専門家に事業計画書を作成してもらい、事業の改善余地があることを証明しないといけなくなります。この事業計画書を作成してもらうのに30万円前後のお金もかかってくるので、債務超過にはならないように注意しましょう。
経営管理ビザを更新する際のポイントは?
経営管理ビザ更新時に注意したいポイントをまとめました。上記で説明した3つの条件に加えて、下記ポイントをおさえておきましょう。
経営業務を行っているか?
経営管理ビザでは、経営や管理以外の仕事はできません。
たとえば飲食店を経営している場合、自分で調理や接客をすることはできません。貿易業でも、在庫管理や商品の発送などの作業を自分で行うことは禁止されています。これら現場労働の業務は、必ずアルバイトや社員を雇ったり、外注する必要があります。
そのため、ビザの更新申請の際に人を雇っていないと、「実際には自分で作業しているのでは?」と疑われ、更新が不許可になることがあります。
事業を始めたばかりの頃は、なるべく人件費を抑えたいと思うのは当然ですが、経営管理ビザは500万円以上の出資と実現可能な事業計画を審査されて許可されているので、仮に人を雇う余裕がないとなると、事業計画を見直す必要があります。
そのため更新申請時において誰も雇用していない場合は、新しい事業計画とともに採用計画を立てるようにしてください。採用している場合は、誰がどの業務を行っているかを説明するようにしてください。
自宅と事務所の距離が離れすぎていないか?
経営管理ビザでは、「実際に事務所で仕事をしていること」が求められます。たとえ事務所が不要な業種であっても、事務所の契約は必要です。
注意したいのは、自宅と事務所の距離です。あまりに離れていると、本当に通勤しているのか疑われ、ビザ更新に影響することがあります。目安としては、通勤時間が1時間程度であれば問題ありませんが、2時間以上かかる場合は注意が必要です。
そのため引っ越しをする際は、事務所に通勤可能な範囲にするようにしてください。
必要な許認可を取得しているか?
例えば、民泊事業を始めるには「民泊の許可」が必要です。また、中古品を扱う場合は「古物商の許可」が必要になります。これらの許可を取得せずに事業を始めると違法となりますので、必ず許可を取ってから事業を始めてください。
さらに、許可を取得した後に事務所を移転した場合は、許可証の住所変更などの手続きも必要です。こうした必要な手続きを怠っていると、ビザの更新申請に悪影響を与える可能性がありますので、十分に注意しましょう。
経営管理ビザ更新のための必要書類は?
それでは経営管理ビザを更新する場合の必要書類についてご説明させていただきます。
更新申請の必要書類は、会社の状況によって内容が異なってきますので、該当する箇所をご確認お願いできればと思います。
共通で必要になる書類
- 在留期間更新許可申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)※直近6ヶ月以内に撮影したもの
- 直近年度の決算書類(損益計算書、貸借対照表)※個人事業主の場合は確定申告書
- 前年度の源泉徴収の法定調書合計表(税務署受付印もしくは受付番号があるもの)
- 直近年度の個人の住民税の課税証明書(市区役所発行のもの)
- 直近年度の個人の住民税の納税証明書(市区役所発行のもの)
- 許認可の書類(該当する場合のみ)
- 理由書(今後の事業の見通しや採用計画について)
- 従業員との雇用契約書のコピー(外注の場合は業務委託契約書など)
事務所移転した場合
- 登記事項証明書(新しい住所が登記されたもの)
- 新しい事務所の賃貸契約書のコピー
- 新事務所の写真(建物外観、室内)
- 新事務所の平面図(レンタルオフィス等の場合)
決算の数字が悪い場合
- 試算表(直近までの売上がわかるもの)
- 事業計画書(変更になった計画内容や、今後の計画、数値の見通しについて)
経営管理ビザで3年や5年ビザを取るためには?
有名な会社や大企業、かなり綿密な事業計画書が立てられている場合以外は、経営管理ビザの在留期間は1年となります。
では、3年や5年の在留期間が認められるためのポイントについて解説していきます。
安定した黒字経営できていること
まず第一に、安定した収益と黒字決算が続いていることが重要です。安定して黒字経営できているかの判断は、一般的には直近2年間の決算書で黒字になっているかで判断します。
決算書での判断になるので、決算時期によっては思っていたよりも売上や利益の数字が良くない場合も考えられます。そのため、決算時期を意識して事業を行うことが大切です。
そして今後3年以上、安定した売上と利益が上げられる状態であると判断された場合に、3年の経営管理ビザが許可されることになります。
そのため、債務超過や赤字の場合には、何年経っても3年ビザの取得は難しくなります。
また黒字経営に加えて、税金の支払いや従業員の社会保険加入など、経営者としての基本的な義務をしっかり果たしていることも重要となります。
そして安定した経営の中には、経営者として安定した役員報酬をもらっているかも審査されているので、役員報酬を極端に下げて黒字を見せかけるような方法はマイナス評価の原因になるため注意しましょう。
従業員の雇用と事業の信頼性
雇用保険適用事業所番号から従業員の雇用しているか確認されます。従業員がいる会社は、1人で経営している会社よりも、入管からの評価が高い傾向にあります。
ただし、1人会社でも売上がある(例:3000万円以上)、または大手企業や自治体との安定した取引実績があるなど、事業の信頼性を示せることになるので、3年のビザが許可される可能性があがります。
また、特許や商標の登録証明書などあると信頼性があがるので、メリットになります。
中長期的な事業計画の作成
3年や5年ビザを目指すなら、中長期の事業計画書を用意して将来の成長性をしっかりアピールすることが大切です。
具体的には、売上予測、採用計画、資金調達方法、設備投資などを記載することが重要です。ただし、希望的観測で記載しても意味がないので、現状を踏まえて実現可能な範囲で記載してください。
さいごに
経営管理ビザの更新申請の条件等についてご説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
経営管理ビザの更新申請は比較的厳しい内容となっていますが、安定した事業を継続できれば問題なく更新できます。
また更新申請のポイントをまとめると、下記になります。
- 安定した経営をして、黒字経営を継続できるようにする
- 申請者個人の納税や各種届出がしっかり行うこと
- 従業員の労働環境が整備されておおり、会社としての適切な納税も行われていること
更新申請では、決算書の情報が重要となりますので、早い段階から決算書でいい数字が残せるように意識して活動するようにしましょう。そうすれば、早い段階で3年以上の長いビザを取得することも可能となってきます。
記事公開日: