経営管理ビザの要件・必要書類・手続きの流れについて解説

外国人が「日本で会社経営したい」「会社の役員になりたい」場合には、経営管理ビザ(ビジネスビザ)を取得する必要があります。
経営管理ビザは、元々は投資経営ビザという名前で投資でビザが取得できていた時代もありましたが、法改正により平成27年(2015年)より施行され、経営管理ビザに変わりました。
経営管理ビザには学歴要件はありませんが、500万円以上の規模の会社でないといけないといった「出資要件」があります。審査期間も通常の就労ビザと比べて時間がかかり、東京の平均で3か月前後かかります。
そこで今回は、外国人が日本で会社設立して経営するために必要な経営管理ビザの要件と必要書類、手続きの流れについてご説明していきたいと思います。
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
経営管理ビザ(ビジネスビザ)とは?
経営管理ビザとは、外国人が日本でビジネスを行うために会社を作り「経営」したり、会社の役員となり会社の「管理」をしていくために取得する在留資格(ビザ)になります。
2015年4月以前の「投資経営ビザ」の時には、不動産投資などの投資でもビザ取得可能でしたが、現在は単純な投資だけでは経営管理ビザの取得ができなくなってしまいました。そのため経営管理ビザを取得するためには、代表取締役や役員として実際に経営または管理職として働く必要があります。
経営管理ビザの期間については、3ヶ月、4ヶ月、1年、3年、5年の5種類あり、ビザ期間は審査によって決まりますが、一般的には初回は1年ビザとなることがほとんどです。長い年数を取得するためには、更新申請を重ねていき、決算状況や事業の規模などに応じて3年や5年といった長いビザをもらえるようになっていきます。
そして経営管理ビザを取得するためには、学歴や日本語の条件はないので、風営法関係以外のビジネス内容であれば、どのようなビジネスでも取得可能となっています。ちなみに、一般的に経営管理ビザは法人設立を想定していますが、飲食店を開業する場合など個人として事業を行いたい場合は、個人事業主で経営管理ビザを申請することも可能です。
経営管理ビザの要件は?
それでは具体的に、経営管理ビザを取得するための条件を確認していきましょう。
経営管理ビザの取得要件は、「会社の規模」と「ビジネスが安定的・継続性に行えるか」が大切になってきます。
経営管理ビザの取得要件
- 500万円以上の出資または従業員2名以上であること
(資本金500万円以上にして証明することが一般的です) - 具体的なビジネス内容が決まっているか(事業計画書で示します)
- 事業を行うためのオフィスが日本に用意できているか
それぞれの要件について細かい注意があるので、下記にてご説明いたします。
500万円以上の出資または従業員2名以上
経営管理ビザでは、会社の規模感が一定以上あることが必要で、500万円以上の出資または従業員2名以上雇用するかの2パターンとなっています。
新設会社の場合には、出資方法として資本金を500万円以上にすることが多くなっています。資本金額を減らして、従業員2名以上雇用することも可能ですが、常勤職員(日本人、永住者、日本人の配偶者など)を雇用しないといけないので、新設会社でいきなり2名以上雇用するのは現実的ではないので、資本金500万円以上とすることが一般的です。
一方、すでに会社があり、従業員2名以上いる場合には、資本金が500万円以上であっても、会社規模があると判断してもらうことができます。
資本金500万円の準備方法の注意点
資本金500万円を準備する場合、「どのように用意したお金なのか?」についても審査されます。具体的には、用意されたお金が適法に用意されたお金なのか?、本当に事業に使用するお金なのか?ということが審査されることになります。
500万円や親などから借りても問題はないですが、経営管理ビザが取得できたらすぐに返済するといった、見せ金では許可されません。さらに、例えば留学生が経営管理ビザを取得したい場合、日本でのアルバイト(資格外活動)では、週28時間以内しか働くことができないですが、オーバーワークで貯めたお金から資本金を準備する場合などは、適法に準備したお金とは認められません。
そのため、資本金500万円をどのように準備したのかという出所についても、貯金通帳や送金記録、借入書などで証明することが必要です。
資本金500万円の調達方法
- 自己資金(貯金で貯めていた)
- 両親や友人から借り入れる
- 銀行から借りる
- 海外で経営している会社からの出資
どのように資金を集めたのか証明できないと経営管理ビザは許可されませんので、履歴が残らない「現金」でのやりとりは絶対に避けてください。
具体的なビジネス内容が決まっているか
経営管理ビザは、会社設立をすればビザがとれるというものではなく、実際にどんなビジネスを行うのか、事業計画書を作成する必要があります。
それでは具体的に、事業計画書にはどのような内容を記載する必要があるのか見ていきましょう。
事業計画書に記載する内容
- 創業の動機
- 市場規模や市場動向
- 販売商品やサービスの内容
- 販売価格と仕入れ金額
- 販売方法と集客方法
- 採用計画
- 直近1年間の収支計画(月別の売上・利益予測)
まずどんな商品・サービスを販売する会社なのかが決まっている必要があります。加えて、販売価格と仕入れ価格も決まっていないと、会社運営が継続できていけるのかの判断ができません。
販売商品や価格が決まっていないと、ペーパーカンパニーなのではないか?と疑われてしまいます。そのため、経営管理ビザを申請前に具体的な内容を決めておく必要があります。
次に採用計画ですが、経営管理ビザは「経営」または「管理」の仕事をするための就労ビザになります。そのため、例えば飲食店を開業する場合、自身が料理を作ったり接客することはできません。そのため、経営管理ビザの申請時においてはまだ採用していなくて大丈夫ですが、今後の採用計画を明確にしておくことが必要です。
収支計画は、1年間の収支計画を作成し、年間でどの程度売上と利益があるのかを示します。赤字企業の場合には、許可は出ませんので、黒字になる計画を立てることが必要があります。収支計画は適当に作るのではなく、単価〇〇円×100個=〇〇〇円といったように根拠数字を示すことがポイントです。
事業を行うためのオフィスが日本に用意できているか
経営管理ビザを取得するためには、日本国内に店舗またはオフィス(事務所)が用意されていることが必要です。ビザが許可された後にオフィスを借りたいという要望もあると思いますが、審査においてオフィスに問題がないか確認されるので、オフィスを契約した後の申請となります。
事業内容によっては、オフィスがなくてもリモートでできるビジネスも多くありますが、経営管理ビザ申請においては、ビジネスの実態を証明するためにオフィスで仕事をすることを求めています。
オフィスの要件
- オフィスの広さに制限はないが、ビジネスが行える広さが必要
- 使用用途は「オフィス」であること
- 契約社名は「法人名義」であること
- 自宅兼事務所は不可(戸建てで1階と2階で明確に分けられる場合は可)
- バーチャルオフィスなど実態がないオフィスは不可
オフィスの広さには制限がなく、事業が問題なく行えれば問題ないので、最近はレンタルオフィスの個室プランを契約する方が増えています。なお、バーチャルオフィスは実態がないものとなるので不可となります。
またオフィスは、事業用として契約している必要があり、「個室」であることが必要なので、3LDKのマンションで1部屋をオフィスとして使用するといったことも不可となります。自宅兼事務所にしたい場合で唯一認められる可能性があるのは、一軒家で1階と2階で明確にオフィスと住居を分けられる場合のみとなっています。
賃貸借契約書時にも注意が必要で、用途は「事務所」で契約者は「法人」である必要があります。
最後に、経営管理ビザの申請前にビジネスが開始できる状態になっている必要があるので、オフィスであればデスクやパソコンが準備されていること、店舗であれば内装が完了していることが求められています。
経営管理ビザの取得が難しい理由は?
経営管理ビザは、就労ビザの中でも取得するのが難しいとされています。
理由としては、事業計画書の作成の難しさと資本金500万円の出所の証明が不十分とされることが多いからになります。
事業計画書の作成については、頭の中ではイメージできていることであっても、事業計画書にうまく記載できていないと審査官に伝わりません。また、事業がうまくいく証拠書類をどれだけ示せるのかもポイントとなってくるため、自身で申請する場合には、誰が見てもわかるような事業計画書を作成することを心がけてください。
次に資本金500万円の出所証明ですが、海外から日本に送金制限がかかっている国も多いので、証明することが難しい場合もあります。
多くの人の場合、500万円の送金記録のみ用意されることが多いですが、そのお金をどのように貯めたのかという部分から証明しないといけません。また送金記録の証明も、説明をしないとどういう流れでいつ送金したのかがわからないので、煩雑な作業になります。ただし審査において、資本金の出所証明はかなり重要な部分となりますので、わかりやすい書類を準備することが求められます。
経営管理ビザの必要書類は?
経営管理ビザを申請する場合の必要書類を確認していきましょう。下記書類は最低限必要になる書類となりますので、お客様の状況に合わせて、必要と思われる書類もご準備していただけたらと思います。
経営管理ビザの必要書類
- 申請書
- 証明写真(縦4cm×横3cm)
- パスポート
- 在留カード(変更申請の場合のみ)
- 資本金の出所の証明書類
- 登記簿謄本(発行から3か月以内のもの)
- 定款のコピー
- 事業計画書
- 株主名簿
- 役員報酬を決定する株主総会議事録
- オフィスの契約書
- オフィスの写真
- 法人設立の届出書(税務署印があるもの)
- 給与支払事務所等の開設届出書のコピー(税務署印があるもの)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書のコピー(税務署印があるもの)
経営管理ビザの申請までの流れ
最後に新しく会社を設立して経営管理ビザを申請する場合の流れについてご説明させていただきます。
経営管理ビザ申請までの流れ
- 会社情報を決める
会社名や事業目的、出資金額を決めます。 - オフィスを契約する
登録する会社住所を決めるために、オフィスを契約します。 - 定款を作成する
すべての情報を定款に落とし込んでいきます。 - 作成した定款を認証する(株式会社の場合)
定款を管轄の公証役場で認証してもらいます。 - 資本金を振り込む
資本金の金額を振り込みます。 - 法務局で登記手続きを行う
登記書類などを準備して法務局で登記手続きを行います。ここで会社設立が完了します。 - 経営管理ビザの必要書類を準備する
会社設立が完了したら、続いて経営管理ビザの必要書類を集めていきます。 - 事業計画書を作成する
具体的な事業内容を事業計画書に落とし込んでいきます。 - 経営管理ビザの申請をする
すべての準備が整ったら、入管に申請を行います。
会社設立の段階でオフィスを契約しますので、家賃がかかってきます。そのため、会社設立から経営管理ビザの申請は、なるべく早めに進めることをおすすめします。
そして経営管理ビザの審査は、他の就労ビザに比べて時間がかかる傾向にあります。審査する入管の場所にもよりますが、東京入管の場合には3か月以上かかることもあります。地方入管の場合には1~2ヶ月ほどのところもあります。
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