外国人雇用の必要な入社手続きを解説
外国人を社員として雇用する場合、社会保険や労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きが必要となります。
基本的には日本人と同じ手続き内容になりますが、外国人の在留資格によっては多少異なります。
今回の記事では、加入条件や必要な手続きについてご説明していきます。
留学生やワーキングホリデーの外国人についても解説しています。
目次
外国人社員を雇用した場合に行う手続きとは?
「日本人」及び「外国人」のどちらを雇用したとしても、入社手続きは基本的には同じになります。
一般的に新しく社員を雇用した場合には、下記手続きを行う必要があります。
一般的に必要な入社手続き
- 社会保険の加入
- 労働保険の加入(労災保険・雇用保険)
- 税金の手続き(初めて雇用する時のみ)
この記事ではそれぞれ該当する外国人と、手続きの流れについてご説明していきます。
外国人社員の社会保険の加入について
原則として、法人には「日本人」「外国人」を問わず、社会保険の加入が義務付けられています。
個人事業主の場合は、「常勤社員が5人以上いる場合」には加入が必須です。
ですが、サービス業や農業、漁業を営む一部の事業者の場合には、5人以上の従業員がいたとしても加入は任意となっています。
加入対象となる外国人社員とは?
加入対象に外国人社員は、勤務時間と勤務日数などによって決まります。
正社員や契約社員の外国人社員の場合は原則加入になりますが、「留学生アルバイトは対象外」になります。
その他「家族滞在の外国人」や「就労制限のない外国人(日本人の配偶者や永住者など)」で、「パート・アルバイト」の場合は、週の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、正社員の3/4以上の場合には加入が必要になります。
パート・アルバイトでも社会保険に加入しないといけない要件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 賃金月額が88,000円以上であること
- 勤務期間が1年以上見込まれること
- 学生でないこと
社会保険の手続きは、最寄りの年金事務所または各都道府県にある事務センターにて行います。
年金の脱退一時金制度とは?
外国人社員の中には、日本でずっと働くわけではないので年金は支払いたくないと言う方もいます。
そんな外国人社員には「脱退一時金」という制度があり、母国等へ帰国後に手続きを行うことで、支払った一部の年金が返ってくる制度がある旨の説明をしてあげてください。
脱退一時金制度とは
日本の被保険者の資格を失って日本より出国した後から2年以内に請求すると支給される制度となっております。
少し複雑な制度ですが、将来的に手続きをして年金が戻ってくる可能性があります。
外国人社員の労働保険の加入について(労災保険・雇用保険)
労働保険は、雇用形態にかかわらず労働者が1人でもいる場合(日本人・外国人)、加入が義務付けられています。
※農業・水産業は常時5人未満の従業員の場合は任意になっています。
労働保険(労災保険・雇用保険)の加入義務者
- 労災保険・・・全従業員(事業主・役員・事業主の親族以外のもの)
- 雇用保険・・・1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込がある
場合
また労災保険と雇用保険手続きでは、「労働基準監督署」と「ハローワーク」の両方で手続きをします。
労災保険(労働基準監督署)の手続き
管轄の労働基準法監督署には下記書類を提出します。
労働基準監督署に提出するもの
- 保険関係成立届(雇用開始から10日以内)
- 概算保険料申告書(雇用開始から50日以内)
加入義務がある外国人とは
「就労ビザを持っている外国人」や「外国人留学生」と「ワーキングホリデー(特定活動)」「家族滞在者」の場合でも加入が必須です。
雇用保険(ハローワーク)の手続き
管轄のハローワークには下記書類を提出します。
ハローワークに提出するもの
- 雇用保険適用事業所設置届(設置の日から10日以内)
- 雇用保険被保険者資格取得届(雇用開始の翌月10日まで)
加入義務がある外国人とは
「外国人留学生」と「ワーキングホリデー(特定活動)」の場合は、加入義務はありません。
昼間は学生である留学生は雇用保険の加入対象外であり、ワーキングホリデーの外国人も就労目的ではなく休暇目的でも滞在なので、加入義務はありません。
外国人社員の入社手続きの違う点とは?
外国人社員であっても、労働関係法令(労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法・雇用保険法等)については日本人と同じように適用になります。
唯一違う点としては、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する点になります。
外国人社員の入社手続きの違う点
- ハローワークに「外国人雇用状況の届出」をする
外国人雇用状況の届出とは何か?
外国人雇用状況の届出とは、「外国人を雇入れ」および「離職」の際にハローワークにそのことを知らせる手続きになります。
ただこの手続きは「雇用保険の被保険者(加入する)になる場合」は、雇用保険の手続きである「雇用保険被保険者資格取得届を提出することで届出を兼ねる」ことができます。
簡潔に言うと、雇用保険に加入する外国人社員は、日本人と同じように「雇用保険被保険者資格取得届」の提出のみでOKと言うことです。
なお、特別永住者および在留資格「外交」「公用」ビザの外国人を雇用する場合には不要となっております。
ハローワークで行う雇用保険の手続きについて
雇用保険被保険者資格取得届に記入する必要のある情報になります。
雇用保険被保険者資格取得届の必要情報
- 労働者の氏名(正式名称)
- 在留資格
- 在留期間
- 生年月日
- 性別
- 国籍や地域
- 資格外活動が許可されているか
- 就労する事業所名・所在地など
外国人が雇用保険に加入しない場合は、「外国人雇用状況届出書」を作成してハローワークに提出します。
派遣社員の場合にも届出は必要か?
派遣社員の場合でも届出は必要になります。
ですが、「特定派遣」「一般派遣」なのかによって若干異なります。
特定派遣の場合
- 派遣元で採用された時点で届出を行います。
一般派遣の場合
- 派遣先が決まり雇用契約が生じた都度、雇入れの届出が必要になってきます。
「請負契約」においても派遣同様に、請負企業が届出を行うことになります。
税金の手続きをする
会社が外国人従業員の給与から所得税や住民税をあらかじめ差し引き、従業員に代わって税務署に納税(源泉徴収)します。
この手続きには、税務署に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出することが必要になります。
法人設立時に、法人設立届を税務署に提出した際に一緒に、この書類を提出している場合は、新たな手続きは不要です。
源泉徴収する必要がある外国人とは
日本の所得税法では、日本に1年以上住んでいる場合に「居住者」とみなします。
そのため、就労ビザを持つ外国人も雇用期間が「無期」であったり、有期雇用でも1年更新の場合には「居住者」とみなされ、源泉徴収が必要になります。
留学生アルバイトについても、1年以上日本に留学予定であれば「居住者」とされ、源泉徴収の対象となります。
「非居住者」と判断される場合は、原則的に20.42%(復興特別所得税含む)で源泉徴収をします。
外国人社員に用意してもらう書類について
入社する外国人社員にも提出してもらう書類があります。
新卒入社の人や扶養家族がいる人など、従業員の状況によって必要となる書類は若干異なります。
外国人社員に用意してもらう書類
- 住民票記載事項証明書
- 源泉徴収票(前職にて給与収入がある人のみ)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード
- 年金手帳
- 被扶養者(異動)届
- 雇用保険被保険者証
新卒入社、扶養家族がいるかどうかで外国人に用意してもらう書類は異なります。