配偶者ビザ申請の難易度は?審査基準とよくある不許可理由について解説

「配偶者ビザって、取得するのは難しいのでは…?」
そう不安に感じている方も多いのではないでしょうか。特に初めて申請する方にとっては、制度の仕組みや審査の流れがよくわからないと思うので、心配になるのも無理はありません。
実際、配偶者ビザは「結婚している」という事実だけでは許可されず、一定の審査基準を満たす必要があります。ただし、その難易度は一律ではなく、申請人の状況によって大きく異なります。
具体的には、収入や結婚の信ぴょう性が不安要素として挙げられることが多いですが、基準を下回っても許可されるケースもあれば、上回っていても不許可になる場合もあります。
つまり、単純に「難しい」「簡単」とは言い切れず、審査を通過するためには審査基準を理解することが重要です。
そこでこの記事では、日本の配偶者ビザの難易度について、具体的な審査基準や不許可になりやすい理由、そして申請を成功させるためのヒントをわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
監修者

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行政書士法人フォワード
塩野 豪 GO SHIONO行政書士 Immigration Lawyer
フィリピン・カナダに合計5カ月居住し、海外での生活の大変さを知る。
その後、2016年に行政書士として独立して、ビザ申請代行サービス「ビザプロ」を開始する。
その後、累計400社・45か国以上の方の在留資格(ビザ)サポートを行う。
その他にも、日本法人の設立などのサポートを行い、外資系の日本進出コンサルティングも行っている。
人材紹介会社・管理団体・専門学校等とも顧問契約を結び、入管業務に特化したコンサルティングサポートを展開し、セミナー講師も積極的に行っている。
配偶者ビザ取得の難易度は?
日本の配偶者ビザは、結婚したら必ず取得できるものではないですが、日本人の権利保護の観点から全体の許可率は他のビザと比べると高い水準にあると言われています。
しかし配偶者ビザの審査では、結婚の信ぴょう性や生活の安定性などが厳しく審査されます。特に、交際期間が短い場合や年齢差がある場合など偽装結婚が疑われるような状況、または収入が低かったり、安定した収入がない場合には、不許可になる可能性が十分にあります。
ここで注意すべきなのは、配偶者ビザ審査の説明責任は申請者側にあるという点です。
そのため「不足書類があれば審査官から連絡がくるだろう」と安易に考えて申請してしまうと、危険です。審査官には、提出された書類だけで判断する権限があり、追加書類を求めるかどうかは任意となっています。そのため、申請時に提出する書類に不備や説明不足がないように細心の注意を払うことが必要です。
また、一度提出した書類は入管の記録として半永久的に残ります。
内容に不備や誤解を招く表現があると、場合によっては虚偽申請と見なされ、今後の申請に悪影響を与える可能性もあります。もし虚偽と疑われた場合、その誤解を解くのには多大な労力がかかってしまいます。
取得できる配偶者ビザの年数は?
配偶者ビザは、3月・1年・3年・5年の4つの在留期間があります。そして、初めて配偶者ビザを取得する場合は1年ビザであることが多いです。
1年ビザが多い理由は、結婚の信ぴょう性や日本での生活の安定性が証明できていないからになります。例えば、新婚夫婦の場合には、安定して結婚生活が送れるのか不安定と判断されることが多く、海外で生活していた夫婦の場合には、日本での収入や納税について証明できないことが多いので、安定性がないと判断されてしまうからになります。
一方で、初回から3年の配偶者ビザを取得するケースもあり、具体的には、以下のような条件を満たしていることが3年ビザを取得するポイントとなります。
3年ビザを取得するポイント
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結婚生活の継続期間が長い
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安定した収入・生活基盤がある
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納税状況など、社会的信用に問題がない
なお、配偶者ビザの最長の在留期間は5年です。
5年ビザはいきなり取得することはできず、3年ビザを取得した後に取得できるようになるので、まずは3年ビザの取得を目指して申請していくことになります。
配偶者ビザの審査基準は?
配偶者ビザを取得するためには、いくつかの重要な審査項目をクリアしなければなりません。特に重視されるのは、「結婚の信ぴょう性」と「安定した生活基盤(収入と納税)」の2つです。
それでは具体的にこの2つの内容について細かく見ていきましょう。
結婚の信ぴょう性の証明方法とは?
配偶者ビザ申請においては、「日本と相手の国の両国で法律的に有効な婚姻が成立しているか」を確認しています。
その証明として結婚証明書の提出は必須となります。なお日本では戸籍制度なので、結婚証明書はなく、婚姻情報が反映された戸籍謄本が結婚の証明書となります。
その他、2人が写ったスナップ写真も必要で、同じ日に撮影したものを1枚とカウントして3~5枚ほど準備する必要があります。日本と海外の遠距離の場合には、スナップ写真に加えて、日常的なコミュニケーションを証明するために、LINEなどのコミュニケーションツールのスクリーンショットも重要になります。
結婚の信ぴょう性を証明する書類
- 結婚証明書
- 2人のスナップ写真
- LINE等のコミュニケーションツールの履歴
安定した生活基盤(収入・納税)とは?
次に重視されるのが、日本で安定した生活を送るための経済基盤があるかどうかです。
安定した生活基盤は、主に収入金額がどのくらいなのかが特に重要ですが、その他には日本での納税状況についても確認しています。
なお、収入の基準については法律で明確に定められていませんが、一般的な収入の目安として以下が挙げられます。
収入の目安
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単身世帯の場合:年収200万円以上
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家族がいる場合:年収300万円以上
収入は日本国内の収入だけでなく海外の収入でも認められますが、収入がある証明をする必要があります。また上記の収入の目安は、日本で住む場所や家族構成によって変わってくるので、記載した金額以上はないと配偶者ビザの取得が難しくなるという最低限の目安として考えていただければと思います。
なお、仮に収入が基準に満たない場合でも、十分な預貯金があれば配偶者ビザを取得できる可能性があります。
貯金額も明確な基準が決まっているわけではないですが、最低でも「1年間収入がなくても生活できる程度の貯金額」と合わせて「今後の生計の立て方についての説明」とセットで説明する必要があります。
収入の証明で必要なもの(例)
- 在職証明書
- 雇用契約書
- 内定通知書
- 直近3ヶ月の給与明細
そして安定した収入があることに加えて、納税状況についても審査されます。
日本人側が日本に住んでいる場合には、日本人の納税状況を確認しますが、提出が必須なのは住民税の納税証明書になります。
税金は、住民税以外にも所得税や相続税・贈与税など多くあり、さらに税金とはされていない社会保険(健康保険と年金)もありますが、配偶者ビザの審査では、住民税のみが審査対象とされています。
そのため、住民税以外の税金については、基本的に審査対象外となりますが、税金の未納で裁判になっていたり、催告があったりする場合には、審査対象になってくる場合があります。そして近年では、稀に社会保険の支払いについて確認されることもあるので、税金関係についてはしっかり支払いをしておくように気を付けましょう。
配偶者ビザが不許可になる理由は?
それではここからは、配偶者ビザが不許可になるケースをご紹介していきます。
繰り返しになりますが、配偶者ビザは結婚すれば取得できるものではないので、不許可になったケースから、不許可理由とその対応策について、実例を交えながら解説していきたいと思います。
普段のコミュニケーションは英語でとっていましたが、日本人側の英語力が完璧ではなかったのと、交際期間も6年と長かったため、配偶者ビザを申請するときには、毎日は連絡を取っていない状態でした。
そして、配偶者ビザの申請時にはLINEのスクリーンショットを提出しましたが、提出したLINEのスクリーンショットも断片的だったため、「しっかり意思疎通ができているか不明」と判断され、不許可になってしまいました。
なお、日本人側にも犯罪歴の事実は伝えられていなく、申請者(中国人)はあまり知られたくない事実だったようで、事実を隠してしまったことが原因が不許可となった事例です。
しかし、日本帰国後の仕事が決まっていなく、貯金額の証明もなく申請してしまい、日本での生活基盤が不明だったため不許可になってしまいました。
不許可になってしまった場合の対応策は?
配偶者ビザが不許可になったとしても、正しく対応すれば再申請で許可を得ることは可能です。なお、再申請のポイントとしては下記になります。
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不許可通知の確認
入管からの不許可通知が届いたら、不許可の理由を明確に把握しましょう。1回だけ入管に直接行き、不許可理由の説明を聞くことが可能です。 -
再申請のタイミング
不許可理由が改善できれば、期間を空けずにすぐ再申請が可能です。収入などの改善が必要な場合は、就職内定を得た時点など、不許可理由が解決した時点で再申請することになります。 -
専門家の活用
行政書士などに相談することで、証拠書類の整理や再申請の戦略を見直せるため、再申請の成功率が大きく上がります。
配偶者ビザの不許可はショックですが、原因をきちんと分析し、改善策を講じることで、再申請での許可も十分に可能となります。
そのため慌てて不許可をリカバリーできない状態で再申請したりせずに、必要な準備を丁寧に進めていきましょう。
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