海外在住の外国人でも「高度専門職ビザ」は取得できる?注意点とメリットについて解説
高度専門職ビザ(HSP)は、高度人材とも呼ばれ、日本で働くための就労ビザの1つです。
高度専門職ビザは、高学歴や高収入・実務経験など、高度な能力を持つ外国人が取得できる就労ビザで、通常の就労ビザよりも外国人にメリットが多くあります。
そして高度専門職ビザは、海外在住の外国人でも取得することが可能です。
そこで今回は、海外在住の外国人の方が高度専門職ビザを取得する際の注意点とメリットについてご説明していきたいと思います。
目次
高度専門職ビザ(HSP)とは?
高度専門職ビザ(Highly Skilled Professional)とは、法務省が提供しているポイント計算表で70ポイント以上獲得できれば、取得可能な就労ビザです。
ポイント計算に際しては、高度専門職ビザは「1号」と「2号」の2種類あり、最初は1号を取得することになります。
そして1号にも「1号イ」「1号ロ」「1号ハ」の3種類があり、行う仕事内容によって、イ・ロ・ハのどれに該当するかが変わってきます。
高度専門職ビザの種類
- 1号イ(i)(a)
日本で「研究」「研究の指導」「教育機関(高校や大学など)で働く」場合に申請します。 - 1号ロ(i)(b)
一般企業で「エンジニア」「営業」「事務」などで働く場合に申請します。
※多くの場合は、この1号ロに該当します。 - 1号ハ(i)(c)
日本で「会社経営」したり、「役員として管理業務」を行う場合に申請します。
申請する高度専門職ビザの種類が決まったら、ポイント計算表で何ポイント取得できるか確認します。
ポイント計算表(日本語版)
Point Calculation Table(English Version )
※エクセルのタブでイ・ロ・ハが分かれていますので、該当のものをご使用ください。
海外在住の外国人がポイント計算する際の注意点とは?
海外在住の外国人の場合で、高度専門職ビザ(HSP)のポイント計算をする際には、いくつかの注意点があります。
学歴の判断は簡単で、過去に卒業した大学が「S・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス」「THE・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス」「アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ」の3つのランキングの2つ以上において300位以上かどうかで判断します。
ランキング300位以内でプラス加点される学校はこちら
※2023年9月時点
そしてポイント計算で注意する点としては「職歴」と「年収」になります。
職歴と年収は勘違いしやすいポイントが多いので、それぞれ具体的に見ていきたいと思います。
「職歴」の注意点は?
職歴は、「日本で行う仕事内容と同じ仕事内容の実務経験」があるかを聞いています。
単純に社会人経験の年数を言っているわけではなく、日本で行う仕事内容と違う仕事内容の経験があったとしても、職歴のポイントは取得できませんので注意してください。
では、どのように日本で行う仕事内容と同じ仕事の経験だと証明するのかと言うと、職歴の証明は、勤務先(元勤務先も含む)から「在職証明書」を取得して証明します。
在職証明書には、雇用期間(〇年〇月〇日~〇年〇月〇日まで)と、行っていた仕事内容を具体的に記載してもらう必要があります。
在職期間内に複数の業務を行っていた場合には、いつからいつまで何の業務を行っていたのかを細かく記載してもらいます。
雇用期間については、1日でも不足していると認められないので、入社日の日にちまで記載してください。(例:2020年4月1日~2023年3月31日)
例えば、具体的な雇用期間を記載せず「3年勤務」などといった省略した記載方法だと認められない場合があります。
アルバイトやパートは実務経験としては認められない
実務経験として認められるのは、フルタイム(正社員)で働いていた期間のみなので、アルバイトやパートで働いていた期間は対象外となります。
なお、会社経営やフリーランス(個人事業主)で働いていた期間も実務経験として認められますが、証明することが必要ですので、会社経営であれば日本でいう会社の登記簿謄本などの公的書類が必要になります。
フリーランス(個人事業主)では、国によってはフリーランスとしての証明書を発行していますが、自らフリーランスで働いていましたということを証明するだけでは、認めらないケースも多いです。
そのため、フリーランスとしての証明書がない場合には、ポートフォリオ(実績)を証明しつつ、客観的にいつからいつまで活動していたのかわかる書類(例:請求書など)も合わせて提出するのが良いと思います。
「年収」の注意点は?
年収は、日本の会社と締結した雇用契約書の年収で判断します。
今まで働いていた海外の年収も参考にはしますが、日本に来た後にどのくらいの年収になるのかでポイント計算します。
前提として、高度専門職ビザは、日本での勤務先(経営の場合には会社設立後)が決まっていないと申請ができないので、雇用契約書(経営の場合は、役員報酬を決めた株主総会議事録など)を準備する必要があります。
そのため、年収は日本企業と締結した雇用契約書に記載されている金額で判断しますが、ボーナス(賞与)など、雇用契約書に記載されている金額以上の年収がある場合には、別途「年収証明書」を会社に作成してもらう必要が出てきます。
年収証明書は、確定している収入のみ記載するものになりますので、何時間するか決まっていない「残業代」は含むことができません。(確定している「固定残業代」は含められます)
ボーナス(賞与)についても、確定している金額で判断するので、会社の業績や個人成績によって変動するボーナスの場合は、確実に支払われる金額のみ年収証明書に記載してもらい、その金額でポイント計算します。
ちなみに、住宅手当や交通費などの労働対価とは関係ない費用については、年収に含めることはできません。
収入が高い場合の注意点は?
年収が1000万円以上など高い場合には注意が必要です。
海外在住時にも年収が高い場合には問題ないですが、仮に海外在住の際には年収300万円だったにも関わらず、日本では年収1000万円となると、なぜいきなり年収がアップしたのか疑問が残ります。
当然ですが、高度専門職ビザ(HSP)を取得するためだけに、年収を高く見せて申請することはできませんので、今までの経験が評価されて年収が大幅アップされたなど、具体的に説明が必要な場合があります。
年齢について
年齢についてもご説明しておきます。
年齢は、高度専門職ビザ申請時の年齢で判断するので、申請後に誕生日を迎えて、年齢があがってしまっても問題ありません。
ただし、高度専門職ビザを取得後に誕生日を迎えポイントが70ポイント以下になってしまった場合には、罰則などはないですが、任意で高度専門職ビザ以外にビザに変更するなどの対応をすることが望ましいです。
高度専門職ビザ(HSP)のメリットとは?
高度専門職ビザ(HSP)には、他の就労ビザにはないメリットが7つあります。
それぞれのメリットを見ていきましょう。
高度専門職ビザ(HSP)のメリット
- 複合的な在留活動が可能
- 5年ビザが取得できる
- 永住申請の居住要件が緩和される
- 配偶者がフルタイムで就労しやすくなる
- 親を日本に呼べる(要件あり)
- 家事使用人を呼べる(要件あり)
- 審査を優先的に処理してもらえる
複合的な在留活動が可能になる
日本の就労ビザは、許可された1つの就労活動のみ認められています。
持っている在留資格(ビザ)以外の活動もしたい場合は、入管で資格外活動許可を取得することが必要になります。
ただし、どんな活動でも認められるわけではない点に注意が必要です。
一方、高度専門職ビザでは、複数の就労ビザの活動を行うことが認められていますので、例えば会社経営をしながら、大学で研究を行うことなどができます。
5年ビザが取得できる
就労ビザの期間は「3月、1年、3年、5年」の4種類あり、会社規模や業務内容、学歴などによってビザの年数が判断されますが、中小企業で働く場合は、いきなり5年ビザをもらえることは少ないです。
5年ビザがもらえれば、5年間の日本での就労活動が認められるということなので、手間も省けて、気持ち的にも安心して働くことができます。
そして高度専門職ビザは、許可されれば必ず5年ビザがもらうことができるため、安定した就労活動を行うことができます。
永住申請の居住要件が緩和される
日本の永住権を申請するためには、原則10年以上日本に住んでいることが求められています。
そして高度専門職ビザの外国人には、70ポイント以上で3年後、80ポイント以上の場合で1年後に永住申請が可能となります。
ただし永住申請には、居住要件以外にも収入要件や出国日数、犯罪歴など様々な要件がありますので、そちらの要件もクリアする必要はあります。
なお、高度専門職ビザのポイントの優遇措置を利用した永住申請は、高度専門職ビザを持っている人のみが行使できる権利です。
そのため、高度専門職ビザを持っている人の配偶者が家族滞在ビザや特定活動ビザで一緒に日本にいたとしても、配偶者の人は一緒のタイミングで永住申請することはできません。
配偶者がフルタイムで就労しやすくなる
通常、日本で働く外国人の家族は「家族滞在ビザ」を取得して日本で一緒に生活します。
家族滞在ビザでは、資格外活動許可を取得することで、週28時間までのアルバイトをすることは可能となりますが、フルタイムでの就労はできません。
しかし、高度専門職ビザの配偶者は、学歴や職歴の要件なしで「技術・人文知識・国際業務」や「教育」ビザなどの範囲内の仕事に限りますが、フルタイムで働くことができます。
なお、配偶者ビザがフルタイムで働きたい場合には、行う仕事内容が決まっている必要があり、家族滞在ビザではなく、特定活動ビザに変更する必要があります。
親を日本に呼べる(要件あり)
日本では、親を長期的に日本に呼ぶビザはありませんが、高度専門職ビザを取得できれば、優遇措置として一定の要件はありますが、親を日本に長期で呼ぶことができます。
それでは、親を呼びための目的とその要件を確認していきましょう。
親を日本に呼ぶ「目的」について
- 7歳未満の子ども(養子を含む)を養育する場合
- 妊娠中の配偶者または高度専門職の外国人本人の介助等を行う場合
親を日本に呼ぶ「要件」について
- 高度専門職の外国人の世帯年収が800万円以上であること
(高度専門職の外国人本人とその配偶者の年収を合算したもの) - 親と同居すること
- 高度専門職の外国人またはその配偶者のどちらかの親のみ可能
(どちらの親も呼ぶことはできません)
なお、7歳未満の子どもを養育する目的で親を日本に呼び寄せた場合、子どもが7歳になった次のビザの更新はできません。
7歳になったらすぐに帰国しないといけないわけではないですが、7歳になった後はビザが更新できないので、母国等に帰国しないといけない点について注意しておきましょう。
家事使用人を呼べる(要件あり)
高度専門職ビザを取得できると、一定の条件はありますが、家事使用人も日本に呼ぶことができます。
家事使用人を日本に呼べるケースは下記の2パターンあります。
①外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合の要件
- 高度人材外国人の世帯年収が1000万円以上あること
- 家事使用人は1名のみであること
- 家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うこと
- 帯同する家事使用人が日本入国前に1年間以上引き続き雇用されていること
- 高度人材外国人が本邦から出国する場合、一緒に出国すること
②上記以外の場合
- 高度人材外国人の世帯年収が1000万円以上あること
- 家事使用人は1名のみであること
- 家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うこと
- 申請の時点において、13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者がいるなどの事業があること
審査を優先的に処理してもらえる
海外から日本に呼び寄せる申請(在留資格認定証明書交付申請)は、年々申請件数の増加により審査期間が長くなっています。
一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」では、令和5年4月では、50.2日が平均となっていますが、高度専門職1号ロの場合は、27.4日となっています。
もともと高度専門職ビザは、優遇措置として申請から10日前後で審査を完了させるというものでしたが、最近は1~2か月ほどかかることが多くなってきています。
しかしこれでも、通常の審査に比べると早めに処理してもらえているので、高度専門職ビザのメリットと言えます。
その他の注意事項は?
高度専門職ビザには様々なメリットがあることをご説明してきましたが、何点か注意点もあります。
高度専門職ビザの注意点
- 転職したらビザの変更申請が必要となる
- 年収300万円以下は対象外
- 1号ロの場合は、国際業務の仕事は対象外
高度専門職ビザでは、申請した際の日本企業がスポンサーとなって許可されている就労ビザです。
そのため転職したい場合には、転職前に新しい企業で再度、高度専門職ビザの申請をして、ないといけません。
そして実際に転職先の会社で働き始められるのは、高度専門職ビザの審査が許可された後になります。
そのため、転職日が決まっている場合は、転職先での勤務開始1ヶ月半~2ヶ月前には高度専門職ビザの変更申請を行うようにしてください。
また、ポイント計算表で70ポイント以上あっても年収が300万円以下の場合には、高度専門職ビザは認められません。
さらに、高度専門職1号ロに関しては、技術・人文知識・国際業務ビザの中でも国際業務(語学教師や翻訳通訳・海外取引業務など)のみの仕事をしている場合には、高度専門職ビザの対象外となりますのでご注意ください。
記事公開日: