家族滞在ビザから経営管理ビザに変更する方法と流れについて
家族滞在ビザの外国人が日本でビジネスをするためには、「経営管理ビザ」の取得が必要になります。
家族滞在ビザは資格外活動許可を取得すればアルバイトはできますが、週28時間以内の活動のみ許可されているので、家族滞在ビザのまま会社経営をすることはできません。
そこで今回は、家族滞在ビザの外国人が、経営管理ビザを取得する方法と手続きの流れについて解説していきます。
目次
経営管理ビザとは?
経営管理ビザとは、日本で会社を設立し、ビジネスをするために必要な就労ビザになります。
飲食店やフランチャイズ事業を行う場合は、個人事業主のまま経営管理ビザを取得できる場合もありますが、基本的には会社を設立することになります。
経営管理ビザは、以前は「投資・経営ビザ」という名前でしたが、2015年4月の入管法の改正により現在の「経営・管理ビザ」に変更され、投資でビザを取るということが実質難しくなりました。
そして経営管理ビザは、就労ビザの中でも取得するのが難しいビザであり、書類不備や手続きの流れを間違うと、日本でビジネスを開始できなくなってしまうので、注意が必要です。
家族滞在ビザから経営管理ビザに変更する手続きの流れについて
家族滞在ビザの外国人が経営管理ビザを取得するには、まず会社設立を行う必要があります。
経営管理ビザは、ビジネスを始められる状態になった後に申請が可能となるので、ビザを先に申請して、後から会社設立やビジネス内容を考えるといったことはできません。
家族滞在ビザから経営管理ビザに変更する流れ
- オフィスを契約する
- 会社を設立をする
- 許認可の取得する(必要な場合のみ)
- 経営管理ビザの申請をする
- 許可後、ビジネスを開始できる
オフィスを契約する
まずは会社を設立する手続きになりますが、そのためには会社のオフィスを決めることが必要です。
ビジネス内容によっては、オフィスは不要で自宅から仕事ができるかもしれませんが、現行の入管法では、経営管理ビザを取得するためには、日本国内にオフィスがあり、オフィスで仕事をすることが求められています。
オフィスとして認められているもの
- 個室のレンタルオフィス(フリースペースはNG)
- オフィス物件
- マンションの一室(オフィスとしての利用で自宅とは別のもの)
- 一軒家(1階がオフィスで2階が自宅など、明確に区切られる場合のみ)
オフィスは個室で、ビジネス専門のスペースが確保できていることが必要です。
そのため、マンションで自宅兼事務所としてオフィスを構えることはできず、必ずオフィス専用の物件が必要になります。
一軒家の場合のみ、1階と2階で明確にオフィスと自宅が分けられる場合は、オフィス要件を満たすとされていますが、判断が難しいので、専門家に相談されることをおすすめいたします。
オフィスの大きさについて
オフィスの大きさは小さくても大丈夫です。
しかし、実際にそのオフィスでビジネスをすることになるので、明らかにビジネスができない大きさの場合は、審査で引っかかるので注意してください。
オフィスの契約時の注意点
オフィスを契約する際、会社をまだ作っていないので、個人名義で契約を行います。
ですが、経営管理ビザでは、会社名義での契約が必要になるので、オフィスの契約の際には、「現在会社を設立しているので、会社ができたら法人名義に変更したい」と先に伝えておくことが重要になります。
このことを伝えずに契約してしまうと、不動産会社によっては費用が別でかかったりすることがあるので、注意してください。
またオフィスの契約は、「用途が事務所」「契約期間は1年間以上」「契約名義人は法人」であることが必要になります。
会社を設立する
オフィスが決まったら、実際に会社を設立していきます。
会社を設立するためには、まず「定款」を作りますが、定款は、会社の目的やオフィスの場所、決算時期など、会社のルールを記載したものになり、会社を経営していくにあたり、この定款のルールに従って経営することになります。
定款が設立できた後は、株式会社なのか合同会社なのかで手続きの流れが変わりますが、株式会社の場合は、公証役場で認証手続きを行い、法務局に会社を登記して会社の設立が完了します。
会社を設立するためには、会社情報がすでに決まっていたら、1週間~2週間ほどで設立することができます。
許認可の取得する(必要な場合のみ)
ビジネスの内容によっては、許認可が必要になります。
経営管理ビザでは、ビジネスがスタートできるようになってから申請できるので、許認可の申請が必要なビジネスは許認可の申請を先に行います。
しかし、許認可も経営管理ビザがないと申請できないものもあるので、そういった許認可の場合には、先にビザの申請を進めて問題ございません。
外国人がよく行うビジネスで必要となる許認可
- 飲食店業許可
- 古物商
- 有料職業紹介(人材紹介)
- 旅行業
- 免税店
- 建設業
許認可の要件はそれぞれ変わるので、必要な許認可についてお調べいただければと思います。
経営管理ビザの申請をする
ビジネスを開始する準備が整ったら、ようやく経営管理ビザの申請ができます。
経営管理ビザの細かな要件については、後述いたします。
経営管理ビザは、就労ビザの中でも審査に時間がかかるビザで、家族滞在ビザからの変更申請の場合は、管轄の入管にもよりますが、東京入管の場合は、2~3か月ほどかかります。
提出する書類の内容によっては4か月やそれ以上かかる場合もありますので、わかりやすく書類をまとめて、申請するようにしてください。
許可後、ビジネスを開始できる
経営管理ビザが許可され、経営管理ビザの在留カードを取得して後からビジネスを開始することができます。
ここでいうビジネスの開始とは、売上を上げる行為のことを指していますので、ビザ申請中に「取引先との契約」「打ち合わせ」といった活動は行って大丈夫です。
しかし、お金をもらうのはビザ取得後にして、すでにサービス(商品)提供をしてしまうのは、ビジネスの開始とみなされるので、お金が入金されるタイミングを指すのではなく、サービスまたは商品提供をしているかで、売上を上げる行為かどうかの判断をするようにしてください。
審査ポイントは?
家族滞在ビザから経営管理ビザに変更する際の要件とポイントについてご説明いたします。
経営管理ビザは、お金があれば取得できるという間違った噂がありますが、誰がどのように準備したのか?などかなり細かくチェックされます。
証明できない場合は、証明し直しになったり、時間とお金がかかるので、会社設立する際から慎重に手続きしていく必要があります。
経営管理ビザの要件
- 500万円以上の出資をしているか
- 事業計画の内容が適切か
- 独立したオフィスがあるか
500万円以上の出資をしているか
経営管理ビザを取得するには、500万円以上の規模がある会社である必要がありますが、一般的には資本金として500万円を出資することが多いです。
そしてこの500万円も「どのように誰が準備したのか?」がとても重要で、準備した方法が不透明だと不許可となってしまいます。
家族滞在ビザの方の場合だと、この500万円の準備方法で、注意が必要な点は下記になります。
500万円を準備する際の注意点
- オーバーワークをして貯めたお金ではないか?
- 配偶者(または友人など)から借りている場合は、契約書はあるか?
- 過去の貯金から捻出している場合は、その証明が可能か?
資本金として準備した500万円は、適法に準備したお金である必要があります。
そのため、家族滞在ビザの際にオーバーワークで働いて貯めたお金は使用できず、銀行口座の情報などすべて提出するので、オーバーワークしていた場合は、入管で判明します。
そして配偶者や友人などから借りた場合も、金銭消費貸借契約書が必要で、いつ誰から借りて、いつ返すのかなどを記載した契約書が必要です。
単に経営管理ビザが取得できたら返済するという契約なのであれば、500万円は見せ金のお金になるので、ビザは取得できません。
また、過去の貯金から捻出している場合は、過去にどのように貯金したのかの説明に加えて、その当時の銀行口座の履歴を提出して証明することが必要になります。
事業計画の内容が適切か
経営管理ビザでは、ビジネス内容が実現可能なのか?を審査します。
500万円を出資すればビザがとれるわけではなく、「商品は何か?「いくらで販売していくら利益が出るのか?」「どのように集客するのか?」「1年間の収支計画は?」など具体的な事業計画が求められています。
細かい内容はビザが取れたら決めたいという方もいらっしゃいますが、経営管理ビザを取得する前であっても、取引先との契約や打ち合わせなどの行為は可能なので、ある程度精度の高い事業計画が求められ、取引先との契約書があると審査には有利に働きます。
必要書類について
家族滞在ビザから経営管理ビザに変更する際の必要書類についてご案内させていただきます。
ここに記載してある必要書類は基本的なものになるので、ビジネス内容や状況に応じて追加で必要な書類も出てきますので、参考までにご覧ください。
家族滞在ビザから経営管理ビザに変更する際の必要書類
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート
- 理由書(起業のきっかけ、出資金の形成過程説明、オフィスについてなどの説明したもの)
- 出資金をどのように準備したのかを証明する書類
- 事業計画書(直近1年間の収支計画込み)
- 登記事項証明書(発行から3か月以内のもの)
- 定款のコピー
- 株主名簿
- 臨時株主総会議事録(役員報酬を決めるもの)
- 業務委託契約書など(取引先や仕入れ先との契約書がある場合)
- 会社の写真(外観、入口、ポスト、オフィス内など)
※オフィス内には、机、PC、プリンターなど事業が開始できる状態であることが必要 - オフィスの建物賃貸借契約書のコピー
- 給与支払事務所等の開設届出書のコピー(税務署の受付印があるもの)
- 法人設立届出書(税務署の受付印があるもの)
- 許認可のコピー(許認可が必要な業務の場合)