経営管理ビザとは?取得条件と手続きの流れについて解説
経営管理ビザを取得できると、外国人の方が日本で会社を経営・管理することができます。
ちなみに代表取締役として会社経営する場合と、既存会社の役員となり管理する場合では、要件が異なってきます。
そして経営管理ビザは、2015年4月に「投資・経営」という名前から「経営・管理」に変更され、以前よりも審査が厳しくなりました。
会社を新しく設立し代表取締役として経営管理ビザを申請する場合は、会社を設立した後に申請することになりますが、経営管理ビザが許可されないと、せっかく会社を設立しても日本で経営ができなくなってしまうリスクがあります。
そこで今回は、日本で会社経営をする場合と役員に就任するための経営管理ビザの取得条件と申請までの手続きの流れについてご説明していきます。
目次
経営管理ビザとは?
経営管理ビザとは、外国人の方が日本国内でビジネスを行ったり、日本の会社の役員(管理業務)になり報酬を受け取る場合に取得する在留資格(就労ビザ)になります。
2015年4月以前は、「投資・経営」ビザという名前で、投資でもビザの取得ができていましたが、名称変更をして「経営・管理」ビザになってからは、実質的に投資ではビザが取得できなくなり、経営または管理をする場合のみに認められるようになっています。
経営または管理と言うと少しわかりづらいので、役職でお伝えすると「代表取締役」「取締役」「支店長」「工場長」「部長」などの管理職として働く場合は、経営管理ビザが必要になります。
ただし、上記の役職がついていても、経営や管理の仕事ではなく、営業などまだ管理業務以外で働いている場合は、一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当する場合もあるので、役職があっても仕事内容が経営や管理業務ではない場合は、専門家に相談されることをお勧めします。
海外在住のまま経営する場合は、経営管理ビザは不要
日本で会社設立をしてビジネスをする場合でも、海外在住のまま、日本に責任者を置いて経営することもあると思います。
海外在住のまま会社経営する場合は、基本的には経営管理ビザは不要です。
なぜなら経営管理ビザは、日本国内で活動し報酬を受け取る場合に必要なので、日本国内で経営活動を行わない場合は、経営管理ビザの対象外となっています。
ただし経営管理ビザを持っていない場合で、年に数回程度、短期滞在で来日する場合には、経営管理ビザをもっていないので、商談・契約・会議・業務連絡等のみ行うことが可能となっています。
経営管理ビザの取得条件は?
経営管理ビザを取得するには「会社経営」を行うのか、「管理業務」を行うのかによって条件が変わります。
新しく会社を設立し、代表取締役として会社経営していく場合には、「学歴」「ビジネスの実務経験」は必要なく、ビジネスを安定して行うことができるのかという点において「事業規模」が審査されます。
ただし、60歳以上で経営管理ビザを申請する場合は、会社経営の経験なしで申請となると、「なぜこのタイミングで日本で会社を起業するのか?」「ビザ目的ではないのか?」と思われてしまう可能性があるため、会社経営の実務経験が必要となることが多いです。
一方、既存会社の役員に就任する場合など、管理業務に従事する場合は、「経営または管理の実務経験が3年以上」が必要となってきます。
それではまず、「経営の仕事」をする場合の条件について見ていきたいと思います。
具体的には、資本金の金額で十分な資金があるかを審査し、ペーパーカンパニーでないかを見るためにオフィスが確保されているかを確認されます。
経営管理ビザを取得する条件(会社経営の場合)
- 資本金500万円以上または常勤職員2名以上
- 日本国内にオフィスが契約されていること
- 安定した会社経営ができる売上・利益が確保できているか
- 経営または管理業務に従事すること
資本金500万円以上または常勤職員2名以上
会社の規模の条件として、「資本金500万円の出資」または「常勤職員2名以上」のどちらかが求められています。
新しく会社を設立する場合は、いきなり常勤職員を2名以上雇うというのは現実的ではないと思うので、ほとんどのケースは資本金500万円以上出資するパターンとなります。
そして経営管理ビザで、最も厳しく審査されると言ってもいいのが、「資本金500万円をどのように用意したのか」です。
資本金は事業用として使うお金として出資するので、形式的な資金準備、いわゆる見せ金として準備したお金では経営管理ビザの取得はできません。
資本金の準備の仕方(例)
- 今までの貯金で500万円を準備する
- 家族(両親など)から借りる
- 海外で経営している会社から出資する
- 友達から借りる
上記どの方法でも問題はないですが、「送金履歴」などでお金の流れを証明する必要があります。
そのため、「現金で貯金していた」「海外から現金を持ってきた」「友達が海外から現金を持ってきた」など、送金記録が証明できないものは、合法的に準備したかどうか判断ができないため、審査で不許可となる可能性が高いです。
また両親や友人から借りる場合も、借用書(収入印紙付き)や金銭消費貸借契約書などの借り入れが合法的に行われているかの証明資料が必要となります。
さらに両親や友達がどのようにそのお金を準備したかも重要なので、両親や友達の収入証明書や資産証明書、両親の場合には親族関係の証明書の準備も必要になります。
常勤職員2名以上を証明する際はどんな時か?
新設会社の場合には、資本金500万円を証明することが一般的とご説明しましたが、常勤職員2名以上を証明する場合は、どんな時なのでしょうか?
常勤職員2名以上を証明する場合は、既存会社の役員に入る場合です。
役員に入る外国人が新たに500万円を出資するのではなく、日本国内に居住している「常勤職員2名以上」の雇用しているとして会社の規模を証明することがほとんどです。
常勤職員とは、日本人または外国人であれば特別永住者・永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等の在留資格で週5日以上、週労働時間30時間以上の方を常勤職員としています。
パートやアルバイト、在籍出向や派遣・請負形態での勤務している人は、常勤職員としてはカウントしないので注意してください。
日本国内にオフィスが契約されていること
昨今、オフィスがなくてもリモートワークで仕事ができるようになりましたが、経営管理ビザでは、オフィスで仕事をすることを求めています。
そのため、バーチャルオフィスや自宅をオフィスとすることは認めておらず、法人名義で日本国内にオフィスを契約する必要があります。
オフィス契約時の注意点
- 契約は「法人名義」で行う
- 使用用途は「事務所」であること
- 契約期間は長期で1年以上あること
- 個室で独立したオフィススペースが確保されていること
オフィスの契約にも細かいルールがあり、独立したオフィススペースが確保されている必要があります。
具体的には、安定した会社経営ができるように、少なくても1年以上の契約で自動更新となる契約で、法人名義、用途は事務所となっていることが求められています。
契約期間ですが、仮に3ヶ月契約で自動更新の場合には、不動産会社の契約上、そうなってしまっているが長期で借りることが可能なことを入管に説明するようにしてください。
オフィスの広さについては、特段要件はないですが、そのオフィスで仕事をすることになるので、作業ができるスペースが確保できているか、事業内容に応じて、例えば在庫を置くスペースが必要な場合には、そういったスペースも確保できているか、従業員がいる場合には、従業員の作業スペースもあるかなども確認されます。
レンタルオフィスを借りる場合
新規で会社設立をして経営管理ビザを取得する場合には、レンタルオフィスをオフィスとすることも可能なので、近年はレンタルオフィスを契約する人が増えています。
レンタルオフィスでは、事業において必要な備品がすべてそろっているので、机や椅子などを買う必要がなく費用を抑えることができます。
ただし、レンタルオフィスの場合は「個室」プランでないと経営管理ビザでは認められず、フリーアドレスなど、フリースペースの契約もあると思いますが、経営管理ビザでは、独立した個室であることが必要です。
そのため、個室でもパーテーションなど簡単に移動できるものだと、独立した個室とは認めてもらえないので、簡単に移動ができない個室で、鍵がかかり、会社名の掲示ができる条件のレンタルオフィスを契約する必要があります。
自宅をオフィスとしたい場合
自宅はオフィスにできないとお伝えしましたが、一軒家で1階をオフィス、2階を居住スペースとするような場合で、オフィスと居住スペースが明確に分けられる場合は、自宅とオフィスを一緒にすることが可能です。
例えば、4LDKのマンションで部屋が余っているので、余っている部屋をオフィスとすることは認められていませんが、一軒家で明確にオフィススペースと居住スペースが分けられるのであれば、オフィスとして認めてもらうことができます。
一軒家をオフィス兼居住スペースにする際の注意点としては、1階をオフィスとすることが多いですが、オフィススペースを通らないと2階の居住スペースに行けない場合は、明確にスペースを分けられているとは言えないので、認められません。
入口からすぐに2階の居住スペースに行けたり、外階段があり外から直接2階の居住スペースに行ける構造の場合のみ、一軒家の自宅兼事務所もオフィスとして認められています。
店舗をオフィスとする場合
飲食店やマッサージ店などの「店舗ビジネス」の場合、店舗内にオフィスを設置したいという要望もあると思います。
店舗内にオフィスを設置するには、店舗スペースとオフィスを明確に分ける必要があります。
経営管理ビザは、「経営」と「管理」のみできる就労ビザなので、飲食店やマッサージ店の現場で働くことはできません。
そのため、店舗内にオフィスを設置するとなると、現場で働いているのではないか?と疑われてしまう可能性があるため、店舗内に独立したオフィススペースを作る必要があります。
独立したオフィススペースとは、壁などでしっかり固定された個室で、鍵がかかり、明確に店舗スペースとオフィスが分けられているかがポイントになりますので、パーテーションなどで簡単に移動できるような個室スペースでは、オフィススペースとしては認められません。
そして現実的に、店舗に顔を出すこともあると思いますが、ほとんどの時間はオフィススペースで作業をすることになるので、作業が問題なくできる広さも求められています。
店舗内に個室スペースを作れない場合は、レンタルオフィスの個室プランなど、店舗外の個室オフィスを借りる必要がでてきます。
安定した会社経営ができる売上・利益が確保できているか
経営管理ビザでは、ビジネスが少なくても1年以上は安定して経営できるか、黒字化できていけるかも審査しています。
安定した経営ができるかは、事業計画書の内容で判断しますが、事業計画書の内容も実現可能性が高いかも含めて審査します。
特に新設会社を設立して経営管理ビザを申請する場合、「このぐらいの売上になるといいな」と言う希望的観測で事業計画書を作成してしまうと、実現可能性が低いと判断されてしまうことがあります。
そのため、事業計画書は具体的に記載する必要があり「何の商品を販売するのか」「販売価格はいくらか」「仕入れ金額はいくらか」「集客方法はどうするのか」「人員計画について」「経費はどのくらいかかるのか」など具体的な数字を示す必要があります。
それと合わせて、競合分析や市場調査、マーケティング戦略なども記載したいところですが、新設会社の場合、なかなかそこまでできていないことも多いと思います。
そういった場合は、なぜその売上をあげることができるのかという客観的証拠書類を提出するために、具体的には取引先がすでに決まっている場合には、契約書の締結を先にしておくなど、売上があがる根拠の証拠書類を準備できるよう努めるようにしておきましょう。
経営または管理業務に従事すること
経営管理ビザでは「会社経営または管理業務のみ」行うことができます。
そのため特に店舗系のビジネスの場合、飲食店や小売、マッサージ店などでは現場で働くことはできないので、従業員を雇用することが必須です。
会社を新しく作った場合、最初はなるべく費用を抑えたいので、自分で接客や調理をしたいと思う方もいるかもしれませんが、経営管理ビザでは認められていません。
ビザの申請時においてはまだ従業員を雇用していなくても大丈夫ですが、ビザ取得後の採用計画を事業計画書で示す必要があり、採用予定がない事業計画になると経営管理ビザの申請でも引っかかってしまいます。
既存会社の役員に就任する場合の条件は?
既存会社の役員として外国人を海外から呼び寄せる場合、すでに働いている外国人従業員を役員に昇進される場合は、外国人の方に「経営または管理の実務経験が3年以上」あることが必要です。
この場合は、外国人による500万円の出資は不要です。
既存会社の役員になる場合
- 経営または管理の経験が3年以上あること
- 日本国内にオフィスがあること
- 日本人と同等以上の報酬であること
まず3年以上の経営または管理の実務経験についてですが、例えばチームリーダーとして働いていた経験を会社から在職証明書を取得して証明することになります。
実務経験は合算も可能なので、複数の会社で合計3年以上を証明する場合は、それぞれの会社から在職証明書を取得してください。
そして実務経験として認められるのは、経営または管理の経験のほかにも、大学院で経営または管理に係る科目(MBAなど)を専攻した期間も含めることができます。
ただし大学院のみなので、大学で履修していたとしても対象外となりますのでご注意ください。
オフィスについては、会社経営する場合と同様で、バーチャルオフィスでは認められず、事業を行うため専用のオフィスが必要となります。
2人以上の外国人が同じ会社で経営管理ビザを申請できるのか?
同じ会社で2人以上の経営管理ビザを取得するには、会社規模が大きい場合のみ可能です。
具体的な数字でお伝えすると、従業員が10名以上の規模の会社であれば、2人までであれば経営管理ビザが取得できるかと思います。
2人以上の経営管理ビザを申請する際のポイント
- 経営または管理の仕事のボリューム
- 経営管理ビザの外国人の仕事の棲み分け
- 従業員数
- 売上高
この中で重要なのか、仕事のボリュームと仕事の棲み分けです。
経営管理ビザは「経営または管理」のお仕事なので、従業員数が少ない中で「2人も経営や管理の業務をする必要があるか?」という疑念が出てきてしまいます。
そのため、少なくても従業員10名以上の規模でないと、仕事のボリュームが少ないと判断され、空いている時間に違う仕事をしていると思われてしまいます。
一般的には、1人で管理できる従業員は5~7名ほどが限度と言われているので、経営業務も含めると2人の経営管理ビザを取得するには、10名以上は従業員が妥当とされています。
あとは、経営管理ビザを取得する2人の仕事内容の違いも重要です。
英語でお伝えするのが一番わかりやすいのですが、CEO(最高経営責任者)とCTO(最高技術責任者)など、具体的に管理する業務が違うことを説明することも大切です。
日本人がすでに役員にいる場合も同様
同じ会社で2人の経営管理ビザを取得するには、会社の規模が大切とお伝えしましたが、すでに日本人が役員にいる会社でも考え方としては同じです。
従業員数や売上が小さい会社の場合、日本人の役員と経営管理ビザの外国人との仕事の棲み分けがどうなっているのか、仕事のボリュームは十分かの審査はありますので、零細企業で外国人を役員に加えるというのは、ハードルが出てきてしまいます。
手続きの流れについて
新しく会社を設立し、経営管理ビザを申請する流れについてご案内させていただきます。
まずは会社設立からスタートし、会社設立後に経営管理ビザを申請する流れとなります。
経営管理ビザを申請する流れ(新設会社の場合)
- 個人名義でオフィスの契約をする
- 会社の基本事項(会社名・目的・本店所在地など)を決める
- 会社の実印を作成する
- 定款作成・公証人による定款認証を行う
- 出資金を払い込む
- 会社設立登記の申請・開業届を提出する
- オフィス名義を法人名義に変更する
- 経営管理ビザを申請する
続いて、既存会社に役員として加入する場合の流れもご説明させていただきます。
すでにある会社に役員として加入するので、会社設立の作業はなく、経営管理ビザの申請のための準備のみとなります。
経営管理ビザを申請する流れ(既存会社の役員になる場合)
- 役員に就任
- 変更登記などを行う
- 経営管理ビザを申請する
必要書類について
それでは最後に、経営管理ビザを申請する際の必要書類についてもご説明していきます。
必要な書類は、状況に応じて任意で提出するべき書類も多く存在しますが、ここでは一般的に必要な書類についてご説明していきますので、必要に応じて任意で書類を集めるようにお願い致します。
必要書類(経営管理ビザ)
- 申請書
海外在住の場合はこちら(在留資格認定証明書交付申請書)
日本在住の場合はこちら(在留資格変更許可申請書) - 証明写真(発行から3ヶ月以内の、縦4cm×横3cmのもの)
- パスポート
- 在留カード(日本在住の場合のみ)
- 履歴書
- 実務経験を証明する資料(役員に就任する場合のみ)
- 資本金のどのように用意したかを証明できる書類(送金履歴や通帳のコピーなど)
- 理由書(資本金の出所の流れやオフィスについての説明をしたもの)
- 会社の登記事項証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 事業計画書(販売商品、取引先、販売方法、人員計画、収支計画など)
- 株主総会議事録(役員報酬を決定するもの)
- オフィスの契約書
- オフィス内の写真(外観・ポスト・入口・事務スペース・会議室・複合機があるスペースなど)
- オフィスの図面
- 法人設立届出関係の資料(税務署の受付印があるもの)
- 給与支払事務所の開設届(税務署の受付印があるもの)
- 許認可の書類(許認可が必要なビジネスの場合のみ)
- 取引先との契約書(すでにある場合のみ)
- 従業員の雇用契約書(すでに締結している場合のみ)
上記書類は、最低限必要になる書類です。
説明をしないと審査官に内容が伝わらない内容については任意で書類を提出するようにしてください。